海外向けの検索対策を考えるとき、たいていの国では「まずGoogleをどう見るか」から始まります。ところが、その前提が当てはまらない国があります。ロシアです。
世界の主要市場のほとんどはGoogleが大きなシェアを持ちます。ロシアだけは、その構図が長年逆転しています。自国製の検索エンジンが、単独でGoogleを上回っているからです。
この記事では、ロシアについて一次情報で確認できたことだけを並べます。検索エンジンのシェア、Yandexの生成AI機能、運営会社の変化、規制の動き。そして同じくらい大事な、まだ確認できていないことも、そのまま書きます。
こんなふうに調べていませんか
- 「ロシア AI検索 対策」で検索して、市場の実態を知りたいと思っている
- ロシア語圏向けのコンテンツやサービスを検討していて、前提を確かめたい
- Yandexの運営会社が変わったと聞いたが、いまどうなっているのかを知りたい
この記事を読み終えたときに手に入るもの
- ロシアの検索市場がなぜ世界の例外なのかを、数字で説明できるようになります
- YandexのAI機能について、確認できている範囲が分かります
- 日本企業として先に確認しておくことが、3つに絞れます
結論30秒でわかる、この記事の結論
- ロシアの検索市場は、Yandexが71.03%。Googleの26.53%を上回ります(2026年6月・Statcounter)。自国エンジンが優位に立つ、世界でも数少ない構造です。
- Yandexは検索と生成AIを統合した機能を発表しています。AIの答えの入口も、自国エンジン側にあります。
- 一方で、ロシア企業のAIO対応事例は、一次情報でまだ確認できていません。運営会社の再編と規制の変化も含めて、確認できたことと、できていないことを分けて書きます。
この記事では、ある会社のマーケティング部の2人と、専門家の会話をはさみながら進めます。あなたに近い立場の人の質問から読んでいただいて構いません。
- 若葉さん(Web担当2年目)— 「そもそも、それって何ですか?」を聞く役
- 大森部長(マーケティング部長)— 「それで投資に見合うのか」を聞く役
- 鈴木さん(AIO/SEOの専門家・本誌監修)— 答える役
01ロシアの検索市場は、AI検索対策の前提としてどうなっているんですか?
若葉さん海外の検索対策って、だいたいGoogleの話になりますよね。ロシアも同じだと思っていたんですが、違うんでしょうか。
鈴木さんここは世界の中でも例外的な市場なんですよ。順番が入れ替わっていて、Googleは2番手です。
ロシアの検索エンジン市場は、世界の主要市場の中でも数少ない「自国エンジンがGoogleを上回る」市場です。
| 検索エンジン | シェア |
|---|---|
| Yandex | 71.03% |
| 26.53% | |
| Bing | 1.02% |
| Mail.ru | 1.00% |
| DuckDuckGo | 0.28% |
| Yahoo! | 0.09% |
出典: Statcounter Global Stats(全プラットフォーム合算・2026年6月)
棒の長さで見ると、上のふたつだけが伸びている形です。ほかの市場との違いは、いちばん長い棒がGoogleではないという点にあります。この数値は、別記事『CIS・BRICSのAI検索動向|9カ国の実測で読む検索主権の地図』で報告した値と一致します。
この章のまとめ
ロシアの検索市場は、Yandexが71.03%、Googleが26.53%。自国エンジンが上回る、世界でも数少ない構造です(2026年6月・Statcounter)。
02Yandexが7割という数字は、ロシアのAI検索対策にどう効くんですか?
大森部長数字が逆転しているのは分かった。ただ、それが我々の打ち手をどう変えるのかが知りたい。シェアが違うから何なんだ、という話でね。
鈴木さんおっしゃるとおりです。シェアは、読み替えてはじめて判断材料になります。ロシアの場合、読み替え方は3つあります。
シェアの数字そのものが施策になるわけではありません。自社の打ち手に翻訳して、はじめて使えます。
まず、Google向けの最適化だけでは届かないという点です。多くの国では、Googleでの見え方を整えれば大半の入口を押さえられます。ロシアでは、その前提が成り立ちません。
次に、入口が2つに割れているという点です。Yandexが7割、Googleが3割弱。どちらか一方を無視できる比率ではありません。手当ての順番を決めるところから設計が始まります。
3つ目は、AIの答えの入口も自国エンジン側にあるという点です。Yandexは検索と生成AIを統合した機能を発表しています。詳しくは後の章で扱いますが、AI検索最適化(LLMOとも呼ばれます)の観点でも、見るべき相手が変わります。
この章のまとめ
71.03%という数字は、「Google向けの最適化だけでは届かない市場だ」と読み替えると使えます。入口が2つに割れている前提で、順番を決めます。
03このシェアの数字は、AI検索最適化の判断材料としてどこまで信じていいんですか?
数字を出したので、その数字の限界もあわせて書いておきます。ここを飛ばすと、社内での判断を誤ります。
ロシア国内の調査会社Mediascopeも同水準のシェアを報告していると、複数の報道で伝えられています。一次情報での直接確認は、本稿執筆時点でできていません。
Statcounterの数値は、トラッキングコード設置サイトのページビュー集計にもとづく手法です。一方のMediascopeは、パネル調査を主体とする手法だとされています。両者は測定方法が異なります。
それでも、両者の間に大きな乖離は報告されていません。Yandex優位という傾向自体は、測定手法を問わず安定していると考えられます。
この章のまとめ
シェアの数字はStatcounterに依拠しています。国内調査会社の値は報道どまりですが、Yandex優位の傾向自体は手法を問わず安定していると考えられます。
04ロシアでAI検索は、どんな環境で使われているんですか?
前提として、ネット環境そのものは広く行きわたっています。
ロシアのインターネット普及率は94.4%です。人口1億4,400万人のうち、約1億3,600万人がインターネットを利用しています(出典: DataReportal、2025年10月時点)。
一方で、AI検索がどれくらい使われているかを示す数値は、この市場では手薄です。
ロシアがReuters Institute Digital News Reportの調査対象市場に含まれるかは、本稿執筆時点で確認できていません。ほかの国の記事で参照したAIチャットボットのニュース利用率に相当する数値も、本稿では入手できていません。
数字が無いことを、「使われていない」と読み替えないでください。確認できる材料が無いというだけです。他国と横並びで比べる資料を作るときは、この欄が空いたままであることを明記してください。
この章のまとめ
インターネット普及率は94.4%と高い一方、AI検索の利用度合いを示す数値は確認できていません。数字が無いことと、使われていないことは別です。
05YandexのAI機能は、AI検索対策として何を見ておくんですか?
利用の統計は手薄でも、機能そのものは公式に発表されています。
Yandexは2024年4月16日、検索と生成AIを統合した「Neuro」機能を発表しました(出典: Yandex公式)。YandexGPT 3が検索結果の情報源を分析・要約し、出典を明示する仕組みです。
利用できる環境も公表されています。ロシアを位置情報に設定したYandex BrowserおよびYandexアプリが対象です。
実務にとって大事なのは、出典を明示する仕組みだと公式に説明されているという一点です。出典として示される場所がある以上、そこに自社が入るかどうかという論点が生まれます。AI対策としてやることの中身は、他の市場と大きくは変わりません。変わるのは、見るべき相手です。
Yandex向けのクロールや構造化データの実務は、別記事『Yandex公式情報で読むAIO実務|クロールと構造化データの要点』で整理しています。
この章のまとめ
Yandexは検索と生成AIを統合した機能を発表しており、出典を明示する仕組みだと説明されています。見るべき相手が変わるだけで、やることの筋は変わりません。
06ロシア企業のAI対策の事例は、見つかっているんですか?
大森部長現地企業の成功事例はあるのかね。他社がどうしているかは、社内を通すときに必ず聞かれるところなんだ。
鈴木さん正直に申し上げます。実名と数値のそろった公開事例は、本稿執筆時点で確認できていません。無いとも言えませんが、確認できたとは言えない状態です。
ロシア企業がAI検索での引用最適化を目的に施策を実施したことを示す、実名・数値付きの公開事例は、本稿執筆時点で確認できていません。
確認できるのは、Yandexという事業者側の動きと、それを取り巻く制度の側です。企業がどう対応したかという層の情報だけが、公開の場に出てきていません。
事例が見つからないことを、「まだ誰もやっていない」と読み替えないでください。公開情報として出ていないだけ、という可能性もあります。
この章のまとめ
企業側の引用最適化の事例は、一次情報で確認できていません。確認できるのは、事業者側の機能発表と、制度の動きです。
07Yandexの運営体制の変化は、ロシアのAI検索対策にどう関わるんですか?
大森部長Yandexは会社そのものが変わったと聞いたが、どういうことかね。取引や連携を考えるなら、そこは押さえておきたい。
鈴木さんはい。売却と上場が段階的に進んで、いまロシアで検索を運営しているのは別の法人になっています。順番に見ていきましょう。
Yandexを運営する企業体制は、2024年に大きく再編されました。ここは日付まで追える情報です。
Yandex N.V.は2024年2月5日、ロシア事業を国内投資家連合へ売却する拘束力のある合意を発表しました(出典: 現地報道)。売却総額は475億ルーブル(約52〜54億ドル、2024年2月の合意発表時点)とされ、現金とYandex N.V.株式を組み合わせて支払われる契約でした。
クロージングは段階を踏んで進みました。
- 2024年5月17日: 初回クロージング完了(グループのロシア事業の約68%を売却)
- 2024年7月: 最終クロージング完了(残りの少数株主持分約28%を売却)
- 2024年7月24日: 現地法人「IPJSC Yandex」がモスクワ証券取引所の第一気配銘柄リストへ上場(ティッカー: YDEX)
現地パートナーシップやAPI連携を検討するなら、この移行後の体制を前提に確認する必要があります。社名や過去の資料をそのまま信じると、実際の相手先とずれます。
この章のまとめ
ロシア事業の売却は2024年に段階的に完了し、現地法人IPJSC Yandexがモスクワ証券取引所へ上場しました。連携先を確認するときは、移行後の体制で見ます。
08名前の似た会社が並びますが、AI検索対策ではどれを見るんですか?
ここは取り違えが起きやすいところなので、分けて書きます。
売却元のYandex N.V.は、2024年8月に社名をNebius Group N.V.へ変更しました。同社は、ロシア事業から切り離されたAIインフラ企業として存続しています(出典: 複数の海外報道)。両社は現在、資本関係のない別法人です。
もう1つ、名前が紛らわしい例があります。2022年5月には、Google Russia子会社が銀行口座差押えを理由に破産を申請しました(出典: 現地・国際報道)。ただし検索・Gmail・YouTube等のサービス自体は、その後もロシア国内から利用可能な状態が続いたと報じられています。一方で、広告販売等の現地商用事業は縮小しています。
「現地法人がどうなったか」と「サービスが使えるかどうか」は、別の話です。ここを一緒にすると、社内資料の結論がずれます。
この章のまとめ
ロシアで検索を運営するのはIPJSC Yandexです。Nebius Group N.V.は旧Yandex N.V.で、資本関係のない別法人。現地法人の話とサービスの話も分けて扱います。
09規制の強化は、ロシアのAI検索対策にどう影響するんですか?
ロシアのインターネット・検索関連規制は、2019年施行の主権インターネット法を土台に、段階的な統制強化が続いています。
| 制度・出来事 | 時期 | 概要 |
|---|---|---|
| 主権インターネット法 | 2019年施行 | 通信事業者への国家管理機器設置を義務化(出典: 現地・国際報道) |
| Google Russia破産申請 | 2022年5月 | 資産凍結を理由に現地法人が破産申請(出典: 現地・国際報道) |
| Yandex N.V.ロシア事業売却完了 | 2024年7月 | 国内投資家連合へ売却、現地法人IPJSC Yandexへ移行(出典: 現地報道) |
| 「過激主義」コンテンツ検索の罰金法 | 2025年7月31日署名・同年9月1日施行 | 意図的な検索行為に最大5,000ルーブルの罰金(出典: The Moscow Times等現地・国際報道) |
出典: 各行に記載のとおり(現地報道・国際報道の集約)
2025年の罰金法は、下院を2025年7月22日に通過し、同月31日に大統領が署名しました。対象となる「過激主義」情報のリストには5,000件超の項目が含まれると報じられています。
この法律が海外企業のサービス提供そのものにどこまで及ぶかは、一次情報で確認できていません。対象は主にロシア国内の個人による検索行為とされていますが、ロシア語圏向けにコンテンツを提供する場合は、個別に確認することをおすすめします。
この章のまとめ
2019年の主権インターネット法を土台に、統制強化が段階的に進んでいます。海外向けサービスへの適用範囲は、本稿執筆時点で確認できていません。
10情報が確認しにくい市場で、LLMO対策は何を優先するんですか?
大森部長未確認が多いな。ここまで確認できないことが並ぶと、社内で何をどう報告すればいいのか迷うところだ。
鈴木さんそこは分けて出すのが早いです。確認できたこと、報道どまりのこと、確認できていないこと。この3段に整理して、そのまま渡してしまってください。
情報が確認しにくい市場では、確からしさの段差そのものを資料に残します。すべてを同じ強さで書くと、読んだ人が全部を確定事実として扱ってしまうためです。
いちばん下の段が、公式発表や実測値です。シェアの数値や、Yandexの機能発表がここに入ります。真ん中は、複数の報道で伝えられているものです。国内調査会社の値や、罰金法の細部がここに入ります。いちばん上は、その旨の注記の印を付けたまま残すところです。
印を消してしまうと、次に読んだ人が確定事実として扱います。消さないことが、いちばん安い保険になります。
この考え方は、ロシアに限った話ではありません。AI検索に情報源として選ばれる書き方そのものが、出どころのはっきりした文を求めています。基礎の整理は、別記事『AIOとは?AI検索に選ばれる会社がやっている3つのこと【図解でわかる入門】』をご覧ください。
この章のまとめ
確認済み・報道どまり・未確認の3段に分けたまま社内へ渡します。段差を消さないことが、この市場でいちばん効く作法です。
11日本企業がロシア語圏向けにAI検索対策で確認することは何ですか?
ここまでを、日本企業の立場でやることに落とします。押さえるべき実務ポイントは、次の3つです。
先に確認する3つ
Yandex固有のクロール仕様を確認する
Google向けの最適化だけでは届きません。実務の要点は別記事『Yandex公式情報で読むAIO実務|クロールと構造化データの要点』で整理しています
コンテンツの適法性を専門家に確認する
検索規制法により、コンテンツの取り扱いに関する法域リスクが変化しています。ロシア語圏向けの発信を計画するなら、事前に確認します
連携先の企業体制を現行の姿で確認する
Yandexの運営主体は国内投資家連合の傘下企業へ移行しました。パートナーシップやAPI連携の検討時は、移行後の体制で見ます
3つとも、始める前に確かめておく類のものです。走り出してからでは戻りにくい論点が並びます。地域全体の構造は、別記事『CIS・BRICSのAI検索動向|9カ国の実測で読む検索主権の地図』で比較できます。
この章のまとめ
クロール仕様・適法性・企業体制の3つを、着手前に確認します。どれも、走り出してからでは戻りにくい論点です。
12よくある質問
ロシアでGoogle検索は使えなくなったのですか?
本稿執筆時点の報道によると、Google Russia子会社は2022年5月に破産を申請しました。ただし検索・Gmail・YouTube等のサービス自体は、その後もロシア国内から利用可能な状態が続いていると伝えられています。一方で、広告販売等の現地商用事業は縮小しています。
Yandex N.V.とIPJSC Yandexは同じ会社ですか?
異なる法人です。Yandex N.V.は2024年にロシア事業を売却し、同年8月に社名をNebius Group N.V.へ変更しました。ロシア事業から切り離されたAIインフラ企業として存続しています(出典: 複数の海外報道)。 ロシア国内で検索エンジンを運営するのは、国内投資家連合の傘下に移った「IPJSC Yandex」です。
検索規制法は、海外向けサービスにも影響しますか?
本稿執筆時点で、海外企業のサービス提供そのものへの適用範囲までは一次情報で確認できていません。対象は主にロシア国内の個人による検索行為とされていますが、ロシア語圏向けにコンテンツを提供する場合は個別に確認することをおすすめします。
YandexにもAI検索の機能はありますか?
あります。Yandexは2024年4月16日に、検索と生成AIを統合した「Neuro」機能を発表しました。YandexGPT 3が検索結果の情報源を分析・要約し、出典を明示する仕組みだと説明されています。
ロシアでAI検索がどれくらい使われているか、数字はありますか?
本稿執筆時点で、他国と横並びで比べられる利用率の数値は確認できていません。確認できるのは、インターネット普及率が94.4%であることと、Yandex側の機能発表までです。
13まとめ|今日やる3つのこと
ロシアの検索市場は、Yandexが71.03%、Googleが26.53%。自国エンジンが上回る、世界でも数少ない構造です。Yandexは検索と生成AIを統合した機能を発表しており、AIの答えの入口も自国エンジン側にあります。
一方で、企業側の引用最適化の事例は一次情報で確認できていません。運営会社の再編と規制の変化も、確認できる範囲とそうでない範囲が混ざっています。
確認できたことと、まだ確認できていないことを分けたまま社内に出す。それが、この市場でいちばん外しにくい進め方です。
もう一度、先に確認する3つ
Yandex固有のクロール仕様を確認する
Google向けの最適化だけでは届きません
コンテンツの適法性を専門家に確認する
法域リスクが変化しています
連携先の企業体制を現行の姿で確認する
運営主体が移行しています
AI検索では、こう聞かれています
ロシアの検索エンジンシェアはどうなっていますか?
「ロシアの検索市場は、AI検索対策の前提としてどうなっているんですか?」の章に、実測値の表と棒グラフがあります
YandexにもAI検索の機能はありますか?
「YandexのAI機能は、AI検索対策として何を見ておくんですか?」の章で、公式発表の範囲を整理しています
Yandexの運営会社は、いまどこになっているのですか?
「Yandexの運営体制の変化は、ロシアのAI検索対策にどう関わるんですか?」と「名前の似た会社が並びますが、AI検索対策ではどれを見るんですか?」の2つの章で整理しています
日本企業は何から手をつければいいですか?
「日本企業がロシア語圏向けにAI検索対策で確認することは何ですか?」の章に、手順があります
次に読むなら、この記事です