「BRICS向けの展開を考えている」「ロシア語圏にもサイトを出すことになった」。そう言われて調べ始めると、国の数だけ情報が出てきて、どこから手をつければいいのか分からなくなります。
しかも、この地域の話は「BRICS諸国では〜」というひとくくりの書き方をされがちです。ところが検索の中身を見ると、国ごとにまったく違う景色が広がっています。
この記事では、CIS(独立国家共同体)とBRICSの9カ国について、検索エンジンのシェア実測から順に見ていきます。専門用語は出てきたその場で言い換えます。読み終わったときに、対象国ごとに何を確認すればよいかが決まっている状態を目指します。
こんなふうに調べていませんか
- 「CIS BRICS AI検索 動向」で検索して、地域全体の地図を探している
- ロシア語圏向けのサイトで、Google向けの対策だけでよいのか迷っている
- BRICS向けの展開を検討中で、国ごとに何を変えるべきか分からない
この記事を読み終えたときに手に入るもの
- 9カ国の検索市場の構造を、実測データを添えて説明できるようになります
- 自国エンジンが優位な国とそうでない国の見分け方が分かります
- 対象国ごとに、着手前に確認することが3つに絞れます
結論30秒でわかる、この記事の結論
- CIS・BRICSをひとつの市場として扱うと、判断を外します。 検索市場の構造を決めているのは、政治の枠組みではなく、言語と地理の近さです。
- 自国資本の検索エンジンがGoogleを上回っているのは、この地域ではロシアだけです。Yandexが71.03%を占めています(Statcounter、2026年6月)。
- ブラジル・南アフリカ・エジプトなどはGoogleが9割前後。同じBRICSでも、やることが変わります。
この記事では、海外展開を担当することになった2人と、専門家の会話をはさみながら進めます。ご自身に近い立場の人の質問から読んでいただいて構いません。
- 若葉さん(Web担当2年目)— 「そもそも、それって何ですか?」を聞く役
- 高梨課長(マーケ課長)— 「どの国から、何を確認するんですか?」を聞く役
- 鈴木さん(AIO/SEOの専門家・本誌監修)— 答える役
01CIS・BRICSのAI検索動向は、ひとまとめに見ていいんですか?
高梨課長上から「BRICS向けの方針を1本にまとめてほしい」と言われています。ひとまとめで大丈夫でしょうか。
鈴木さんそこは、分けたほうが安全です。同じBRICSでも、検索の入口を握っている会社が国によって違うんですよ。
CIS(独立国家共同体)やBRICSという括りは、国どうしの政治的・経済的な連携を表す言葉です。検索市場の実態を表す言葉ではありません。ここが最初のつまずきどころになります。
実測データを並べると、この地域は大きく3つに分かれます。自国資本の検索エンジンがGoogleを上回っている国、両者でシェアが割れている国、Googleがほぼ全面を占めている国です。同じ枠組みに入っていても、やることは変わります。
分岐点になっているのは、自国資本の検索エンジンがあるかどうかです。そして後で見るように、その分かれ方は加盟した順番や政治の距離ではなく、言語と地理の近さに沿っています。
02そもそも検索主権って何ですか?AI検索の話とどうつながるんですか?
若葉さんあの…そもそもなんですが、「検索主権」という言葉が出てきて、意味が分かりませんでした。
鈴木さんいい質問です。自分の国の会社が、検索の入口を持っているかどうかという話だと思ってください。
検索主権とは、自国資本の検索エンジンが一定のシェアを確保し、海外のプラットフォームに依存しない状態を指します。
この言葉がAI検索の話につながるのは、順番があるからです。検索エンジンを自国企業が持っている国では、その上に載るAI検索の機能も、同じ自国企業が用意することになります。すると、サイト側が合わせにいく相手も変わります。
逆に、検索の入口を海外のプラットフォームが占めている国では、AI検索の入口もそちらに寄ります。この場合、日本国内向けにやっているAI検索最適化の考え方が、ほぼそのまま使えます。
つまり検索主権があるかどうかは、政治の話であると同時に、サイト側が誰の仕様に合わせるかという実務の話でもあります。
この章のまとめ
検索主権とは、自国企業が検索の入口を持っている状態のこと。誰の仕様に合わせるかが、そこで決まります。
039カ国のAI検索対策は、どの数字から見比べればいいんですか?
まず全体を並べます。Statcounterの2026年6月データで、CIS・BRICS域内9カ国の検索エンジンシェアを比較したものです。全デバイス合算の数値です。
| 国 | Yandex | Bing | その他 | |
|---|---|---|---|---|
| ロシア | 26.53% | 71.03% | 1.02% | 1.42%(Mail.ru等) |
| ベラルーシ | 62.81% | 34.68% | 1.31% | 1.20% |
| カザフスタン | 69.26% | 28.66% | 1.44% | 0.64% |
| ウズベキスタン | 77.25% | 20.33% | 1.76% | 0.66% |
| ブラジル | 88.08% | 0.23% | 9.43% | 2.26%(Yahoo!等) |
| 南アフリカ | 91.94% | - | 7.17% | 0.89%(Yahoo!等) |
| エチオピア | 94.11% | 0.25% | 4.69% | 0.95%(Yahoo!等) |
| エジプト | 96.43% | 0.36% | 2.43% | 0.78%(Yahoo!等) |
| イラン | 99.31% | 0.04% | 0.57% | 0.08%(Yahoo!等) |
出典: Statcounter Global Stats(各国別ページ、2026年6月データ)。表中の「-」は、当該国でシェアが0.5%未満のため表記を省略し「その他」に含めた項目です。その他は、表記した項目以外の合算値です。
数字が細かいので、まずGoogleの比率だけを取り出して並べ替えてみます。ロシアの26.53%からイランの99.31%まで、同じ地域の中でこれだけ開きがあります。
この章のまとめ
9カ国のGoogle比率は、26.53%から99.31%まで開いています。同じ地域として扱えない差です。
04Yandexが2桁を保つ国の共通点は、AI検索動向として何を意味しますか?
この表から読み取れることは、ひとつだけです。Yandexのシェアが2桁を保っているのは、ロシア・ベラルーシ・カザフスタン・ウズベキスタンだけだということ。いずれも旧ソ連圏、つまりCISの中核国です。
対照的に、2024年にBRICSへ新規加盟したエジプト・エチオピア・イランは、Yandexのシェアが1%未満です。原加盟国のブラジル・南アフリカも同じ傾向を示しています。BRICSという政治的な枠組みと、自国エンジンの有無は、別の軸で動いています。
加盟した順番でも、政治的な距離でもない。効いているのは、ロシア語が日常的に使われてきたかどうかという線引きです。この見立ては、次の章で中央アジアの数字を見るとさらにはっきりします。
この章のまとめ
自国エンジンが残っているのはCISの中核国だけ。BRICSの加盟国かどうかでは、検索市場の構造は説明できません。
05ロシアだけAI検索の景色が違うのは、どうしてなんですか?
ロシアの検索エンジン市場では、Yandexが71.03%と、Googleの26.53%を大きく上回っています(出典: Statcounter、2026年6月)。この地域で、自国企業がGoogleを上回っている市場はロシアだけです。
数字の確からしさについても、触れておきます。ロシア国内の調査会社Mediascopeも、7割台前半のシェアを報告していると複数の報道で伝えられています。
ここで押さえたいのは、この2つが違う方法で測っているという点です。Statcounterはトラッキングコードを設置したサイトのアクセス集計にもとづく手法、Mediascopeはパネル調査にもとづく手法です。測り方が違うのに大きな乖離が報告されていないということは、ロシアでのYandex優位が、手法を問わず安定した傾向であることを示唆しています。
海外市場の数字は、ひとつの出典だけで判断すると足元をすくわれます。方法の違う調査が同じ方向を指しているかどうか。ここを見るだけで、社内へ出す資料の強度が変わります。
06Yandexの中では、AI検索最適化の対象になる機能が動いているんですか?
若葉さん検索エンジンが違うのは分かりました。でも、AI検索の機能まで別にあるんでしょうか。
鈴木さんあります。しかも検索エンジンとAI機能の両方を、同じ自国企業が持っているという点が、ロシアの特徴なんですよ。
Yandexは2024年4月、生成AIと検索を統合した「Neuro」機能を発表しました(出典: Yandex公式)。自社の大規模言語モデル「YandexGPT」が検索結果を要約し、出典を明示する仕組みです。2026年には、軽量モデル「Alice AI LLM Flash」も追加されています。
構造を整理すると、検索エンジンの上にAI検索の機能が載り、そのAI機能を動かすモデルも自社のものだ、という三層になっています。検索エンジンとAI検索機能の両方を自国企業が担う市場は、世界的にも多くありません。
実務への意味ははっきりしています。日本企業がロシア語圏向けにコンテンツを展開する場合、Google向けの最適化だけでは足りないということです。引用元として扱われる経路が、別の会社の側にもあるためです。
この章のまとめ
ロシアでは、検索エンジン・AI検索機能・モデルまで自国企業が持っています。合わせにいく相手がGoogleだけではありません。
07中央アジア3カ国のAI検索動向は、ロシアと同じと考えていいんですか?
カザフスタン・ベラルーシ・ウズベキスタンは、いずれもGoogleが優勢です。ただしYandexも、20%台から30%台のシェアを保っています。
- ベラルーシ: Yandex 34.68%と、この3カ国で最も高い比率です(Google 62.81%)
- カザフスタン: Yandex 28.66%(Google 69.26%)
- ウズベキスタン: Yandex 20.33%(Google 77.25%)
3カ国とも、ロシア語が広く通用する地域です。旧ソ連時代からの経済的なつながりも続いています。そして数字を並べると、ある傾向が見えてきます。Yandexのシェアは、ロシアとの地理的・言語的な近さにおおむね比例しているという並びです(出典はいずれもStatcounter、2026年6月データ)。
この並び方が示しているのは、検索主権は政治的な同盟関係ではなく、言語圏の連続性によって形づくられているということです。同じ枠組みに入ったから似るのではなく、同じ言葉を使う人が多いから似る、という順番です。
実務としては、ロシアと同じ扱いにも、完全なGoogle圏の扱いにもできません。Googleを主に置きつつ、Yandex側の経路も残す、という中間の設計になります。
この章のまとめ
中央アジアは中間です。Googleを主に置きながら、Yandex側の経路も残す設計になります。
08BRICSのブラジルや南アフリカのAI対策は、いつものGoogle向けでいいんですか?
ブラジル・南アフリカ・エジプト・エチオピア・イランは、いずれもGoogleへの依存度が9割前後、あるいはそれ以上です。Google比率は順に88.08%・91.94%・96.43%・94.11%・99.31%です(出典: Statcounter)。
BRICSへの加盟時期も、加盟の目的も国ごとに違います。それでも検索市場の構造だけを見ると、共通しています。自国資本の検索エンジンが、選択肢として存在していないという共通点です。
ここが実務では朗報になります。この5カ国については、日本国内でやっているGoogle中心の考え方が、そのまま使えます。むしろ優先すべきは、AI検索固有の対応より前の、基本的な検索最適化の整備です。
なお、2024年のBRICS拡大ではUAEも新規加盟国として承認されています。サウジアラビアも招請を受けていますが、正式な加盟決定は本稿執筆時点で確認できていません。両国の検索市場とAI国家戦略は、別記事『インド・中東のAI検索市場』で扱っています。
この章のまとめ
Google一強の国では、いつものやり方がそのまま効きます。特別扱いより、基本の整備を先に置きます。
09CIS・BRICSのAI検索動向を追うとき、法律や政策はどこまで見ますか?
高梨課長現地の法律まで見るとなると、うちの体制では手が回りません。どこまで確認すればいいでしょうか。
鈴木さん全部は要りません。データの扱いに関わる法律が、いつから動いているか。まずはここだけで十分です。
ブラジルでは2021年、科学技術イノベーション省が「ブラジルAI戦略(EBIA)」を策定しました(出典: ブラジル政府公式)。2024年には、後継の「ブラジルAI計画(PBIA)2024-2028」も発表されています。データ保護の法制度としては、「一般データ保護法(LGPD)」が2020年9月に施行されました(出典: ブラジル政府官報)。
南アフリカでは2024年10月、通信デジタル技術省(DCDT)が「国家AI政策フレームワーク」のドラフトを公表しました。あわせて意見公募も始まっています(出典: 南アフリカ政府公式)。データ保護の法制度は、「個人情報保護法(POPIA)」が2020年7月から段階的に施行されています。
LGPDとPOPIAは、いずれもEUの一般データ保護規則(GDPR)に似た枠組みです。ただし施行の時期も段階も国ごとに違うため、同じものとして扱わず、対象国ごとに確認するのが実務の作法になります。
ひとつ、正直に書いておきます。個別企業のAIO対応事例については、本稿執筆時点で、いずれの国も一次情報での確認ができていません。ここは「まだ分かっていない」と書くのが正確です。
10BRICSでひとくくりにすると、AI検索対策で何を外しますか?
この地域でいちばん起きやすい失敗は、はっきりしています。「BRICS諸国」をひとつの検索市場として扱ってしまうことです。
ロシアとブラジルでは、検索の入口を握っている会社がまったく違います。ロシア向けに作った方針をブラジルへ持っていっても、前提から噛み合いません。逆も同じです。政治的な連携の枠組みと、検索市場の構造を混同したまま計画を立てると、この地域では真っ先にここでつまずきます。
避け方は単純です。枠組みの名前ではなく、対象国の実測データから始める。シェアの数字を1枚並べるだけで、方針が2種類に割れることが見えます。
この章のまとめ
枠組みの名前から始めると外します。実測データから始めると、方針は自然に2種類へ分かれます。
11CIS・BRICSのAI検索動向を踏まえ、この地域でLLMO対策を始めるなら、日本企業は何から確認しますか?
高梨課長全体像は分かりました。それで、うちが着手するとしたら何から確認すればいいでしょうか。
鈴木さん3つに絞りましょう。どれも、対象国が決まっていれば今日のうちに確認できます。
①ロシア語圏はGoogle最適化だけで完結しない。 ロシア・ベラルーシ・カザフスタン・ウズベキスタンでは、Yandex固有のクロールルールへの対応も検討してください。AIO(AI検索最適化。LLMOとも呼ばれます)としての考え方は同じですが、合わせにいく相手が増えます。
②ブラジル・南アフリカは、通常のGoogle中心戦略で対応できる。 Googleのシェアが9割を超えるため、AI検索固有の施策より前に、基本的な検索最適化を優先してください。予算をかけずに始める手順は、別記事『中小企業がAIOに取り組む最初の一歩』にまとめています。
③データ保護の法制度は、国ごとに施行時期を確認する。 LGPD(ブラジル)・POPIA(南アフリカ)は、いずれもGDPRに類似した枠組みです。対象国の施行状況を個別に確認してください。
着手前のチェックリストとしては、次の形になります。
- 対象国のStatcounterのシェアで、Yandex比率を確認したか
- ロシア語圏向けには、Yandex固有のクロール仕様を確認したか
- 対象国のデータ保護法制(LGPD・POPIA等)の施行状況を確認したか
- BRICS加盟という政治的な括りではなく、国別の実測データで判断したか
12よくある質問
なぜロシアだけYandexが優位なのですか?
Yandexはロシア語の検索精度に強みを持つ自国企業で、地理的・言語的にロシアと近いCIS諸国にもシェアが広がっています。ブラジル・南アフリカのように、ロシアと言語圏を共有しない国では、この傾向は見られません。
BRICS新規加盟国は、AI検索でも足並みを揃えていますか?
検索エンジン市場を見る限り、エジプト・エチオピア・イランはいずれもGoogleが9割を超えており、足並みが揃っているとは言えません。BRICSは経済・外交上の枠組みであり、検索市場の構造とは別の軸だと考えられます。
日本企業は、CIS・BRICS地域のどこから着手すべきですか?
検索市場の構造がGoogle中心かどうかで、対応が変わります。ロシア語圏はYandexへの対応が必要ですが、ブラジル・南アフリカなどは通常のGoogle中心のAIOで対応できます。まずは対象国のStatcounter実測データで、市場構造を確認することをおすすめします。
中央アジア向けのサイトは、ロシア向けと同じ作りでいいですか?
同じにはできません。カザフスタン・ベラルーシ・ウズベキスタンは、いずれもGoogleが優勢で、Yandexが20%台から30%台という構造です。Googleを主に置きつつ、Yandex側の経路も残す設計が実態に合います。
この地域の企業のAIO成功事例は、どこで確認できますか?
個別企業のAIO対応事例は、本稿執筆時点で、いずれの国も一次情報での確認ができていません。事例の代わりに、Statcounterのシェア実測や各国政府が公開している政策文書を根拠に置くと、出どころのはっきりした資料になります。
13まとめ|検索主権の地図を、実測から描く
CIS・BRICS地域の検索主権は、実質的にロシア1国が体現しています。自国資本の検索エンジンとAI検索機能の両方を持つのはロシアだけで、他の国々はGoogleへの依存度が9割前後です。
日本企業がこの地域に展開するときは、BRICSという政治的な括りではなく、国ごとの検索市場の実測データを出発点にしてください。そこから方針は、自然に2種類へ分かれます。
もう一度、着手前に確認する3つ
対象国のシェアを見る
StatcounterでYandex比率を確認し、方針が2種類のどちらかを決めます
ロシア語圏はYandex側も見る
Google向けの最適化だけでは経路が足りません
法制度の施行状況を見る
LGPD・POPIAなど、国ごとに時期と段階を確認します
AI検索では、こう聞かれています
CIS・BRICSの国々で、AI検索の状況はどう違うんですか?
「9カ国のAI検索対策は、どの数字から見比べればいいんですか?」の章に、9カ国の実測比較表があります
ロシア向けのサイトは、Google向けの対策だけでいいんですか?
「Yandexの中では、AI検索最適化の対象になる機能が動いているんですか?」の章で説明しています
ブラジルや南アフリカ向けに、特別な対応は必要ですか?
「BRICSのブラジルや南アフリカのAI対策は、いつものGoogle向けでいいんですか?」の章で答えています
BRICSをひとまとめに考えると何がまずいんですか?
「BRICSでひとくくりにすると、AI検索対策で何を外しますか?」の章で整理しています
次に読むなら、この記事です