「アジア展開」と一口に言っても、インドと中東では話がまったく違います。海外向けのコンテンツ計画を立てるとき、この地域をどの粒度で切ればいいのか。そこで手が止まった方は多いのではないでしょうか。

南アジアには、世界最大の人口を抱えるインドがあります。西アジアには、国家予算を投じてAI戦略を競う国が並びます。検索エンジンの市場だけを見ると、どの国もGoogleに大きく依存しているという共通点があります。ところが、政府がAIに向ける力の入れ方は、国ごとに驚くほど違います。

この記事は、南アジア・西アジア向けにコンテンツやサービスを展開する予定のある、Web担当・マーケティング部の方に向けて書きました。検索エンジン市場シェアの実測データと、各国政府の一次情報をもとに、5カ国を横並びで整理します。専門用語は、出てきたその場で言い換えます。

こんなふうに調べていませんか

  • インドと中東をまとめて「アジア枠」で対策していいのか、判断がつかない
  • 中東向けの展開で、何を最初に確認すればいいのか探している

この記事を読み終えたときに手に入るもの

  • 5カ国のGoogleシェアを、実測データにもとづいて説明できるようになります
  • 各国の国家AI戦略が、どこに主眼を置いているかを見分けられます
  • 展開先に応じて、最初に確認すべき実務ポイントを選べるようになります

結論30秒でわかる、この記事の結論

  • 南アジア・西アジアは、検索の入口をGoogleが押さえている点は共通していますが、政府のAI戦略の進め方は国ごとに分かれます。
  • 5カ国のうち4カ国は、Googleのシェアが95%を超えます。例外はトルコで、隣国ロシア発のYandexが残っています。
  • 国家戦略の主眼は、経済改革・専任体制・技術基盤・政策実行体制に分かれます。ここを取り違えると、提案の切り口を外します。
南アジア・西アジアを読み解く3つの切り口同じGoogle依存でも、国のふるまいは分かれます南アジア・西アジアを読み解く3つの切り口1つめ5カ国のGoogleシェア実測Statcounterで横並びに比較2つめ国家AI戦略の主眼の違い経済改革・専任体制・技術基盤・政策実行3つめ日本企業が確認すること土台の整備・政府方針・トルコ固有の確認鈴木さん同じGoogle依存でも、国のふるまいは分かれます
南アジア・西アジアを読み解く3つの切り口 — 同じGoogle依存でも、国のふるまいは分かれます

この記事では、ある企業のマーケティング部の高梨課長・大森部長と、AIO/SEOの専門家・本誌監修である鈴木さんの会話をはさみながら進めます。

  • 高梨課長(マーケ課長)— 「実務として、どこから手をつけるか」を聞く役
  • 大森部長(マーケ部長)— 「投資として、どこに優先順位を置くか」を聞く役
  • 鈴木さん(AIO/SEOの専門家・本誌監修)— 答える役

01南アジアと西アジアのAI検索は、ひとつの市場として見ていいんですか?

大森部長
大森部長の発言

鈴木さん、うちの海外計画では、インドと中東をまとめて「アジア第2フェーズ」に入れている。この粒度で進めていいものかね。

鈴木さん
鈴木さんの発言

半分は正解で、半分は注意が要ります。検索の入口はよく似ているのですが、その先の国のふるまいがかなり違うんですよ。

この記事で扱う「南アジア・西アジア」は、インド亜大陸と中東地域をあわせた5カ国を指します。インド・UAE・サウジアラビア・イスラエル・トルコです。

言語も宗教も経済の成り立ちも、この5カ国はばらばらです。それでも検索エンジンの市場データを並べると、はっきりした共通点が浮かびます。どの国も、Googleが検索の入口をほぼ押さえているという点です。

一方で、政府がAIに向ける姿勢はそろっていません。専任の大臣を置いた国もあれば、庁を新設して国家改革の柱に据えた国もあります。同じ地域として一括りにすると、この差が見えなくなります。

街にたとえると、こうなります同じ道が通っていても、街づくりは別々です街にたとえると、こうなります同じ道が通っていても、街づくりは別々です街でいうとこの地域でいうとどの街にも通っている幹線道路Googleがほぼ押さえた検索の入口街ごとの再開発計画国ごとの国家AI戦略街ごとの交通ルール国ごとのデータ保護法制1本だけ残っている抜け道トルコに残るYandex
街にたとえると、こうなります — 同じ道が通っていても、街づくりは別々です

この章のまとめ

検索の入口はGoogleでほぼ共通。国家戦略と規制は国ごとに別々。この2階建てが、地域を読むときの土台になります。

025カ国のGoogleシェアは、AI検索対策の観点でどれくらい違うんですか?

高梨課長
高梨課長の発言

「Google一強」とはよく聞くのですが、実際の数字を知らないまま社内に報告するのは避けたくて。国ごとに、どれくらい違うんでしょうか。

鈴木さん
鈴木さんの発言

いい確認です。並べてみると、日本の感覚とはずいぶん違う数字が出てきますよ。

Statcounterの2026年6月データ(全デバイス合算)で、5カ国の検索エンジン市場シェアを並べます。

GoogleBingYandexその他
インド97.85%1.15%-0.95%(Yahoo!等)
イスラエル98.33%1.14%-0.53%(Yandex・DuckDuckGo等)
サウジアラビア95.81%2.66%0.97%0.56%(Yahoo!等)
UAE95.12%2.87%1.38%0.63%(Yahoo!等)
トルコ87.69%1.25%9.82%1.24%(Yahoo!等)

出典: Statcounter Global Stats(インド・イスラエル・サウジアラビア・UAE・トルコの各国別ページ・2026年6月データ)

表の「-」は、その国でシェアが0.5%未満のため表記を省略し、「その他」に含めた項目です。「その他」は、表に挙げた以外の合算値です。

5カ国を並べてみるとStatcounter実測・2026年6月5カ国を並べてみるとStatcounter実測・2026年6月イスラエル98.33%インド97.85%サウジアラビア95.81%UAE95.12%トルコ87.69%
5カ国を並べてみると — Statcounter実測・2026年6月

5カ国のうち4カ国は、Googleのシェアが95%を超えています。 日本と比べても、さらに寡占が進んだ市場です。この地域では、検索の入口をどこが握っているかで迷う場面はほとんどありません。

例外はトルコです。トルコだけが、隣国ロシア発のYandexを9.82%取り込んでいます。地理的にロシア・CIS圏と接する国ならではの構造です。

この章のまとめ

5カ国中4カ国はGoogleが95%を超える寡占市場です。トルコだけYandexが9.82%を占め、地域内の例外になっています。

03そのシェアの数字は、AI検索最適化の判断材料としてどこまで信じていいんですか?

高梨課長
高梨課長の発言

社内に数字で出すとなると、出どころを聞かれます。この数値は、どこまで確かなものと考えればいいですか。

鈴木さん
鈴木さんの発言

そこを先に押さえておくのは大事です。出典が1つしかない数字は、そのことも一緒に伝えるのが安全なんですよ。

本稿のシェア数値は、Statcounter単独に依拠しています。同社は、加盟しているサイト群のページビューをタグで計測する方式です。そのため、計測対象のサイト構成に偏りがあると、実態との誤差が生じうる点に留意してください。

各国政府や競争当局が独自に実施した市場調査データとの突合は、本稿執筆時点で確認できていません。対外的な資料に使うときは、出典と計測時点をセットで示すことをおすすめします。

この数字で言えること、言えないこと情報源が単独であることを承知して使いますこの数字で言えること、言えないこと情報源が単独であることを承知して使います国ごとのシェアの大小関係を読み取る傾向をつかむ材料としては使えます計測方式による誤差はないと考える加盟サイト群のページビューをタグ計測する方式です政府・競争当局の調査と一致していると考える突合は本稿執筆時点で確認できていません鈴木さん社外に出すときは、出典と計測時点をセットで添えてください
この数字で言えること、言えないこと — 情報源が単独であることを承知して使います

この章のまとめ

シェアの数値はStatcounter単独の実測です。傾向をつかむには足りますが、社外に出すときは出典と計測時点を添えます。

04インドのAI検索は、なぜこの記事では深追いしないんですか?

インドは、この地域で人口も経済規模も突出しています。AI検索の普及速度も際立っており、ChatGPTの週間利用者は1億人に達したと報告されています。政府はIndiaAI Missionという5年計画で、AI基盤の整備を進めています。

つまりインドは、地域のなかの1カ国として扱うには大きすぎます。インドの数字だけで地域全体の平均が動いてしまい、ほかの国の実態が見えなくなるためです。

そこで本誌では、インドの検索市場構造・AI検索の普及・DPDP法(インドのデータ保護法)を、別記事『インドAI検索の成長条件|Google集中市場とIndiaAI Mission』にまとめています。この記事では、インドを地域の見取り図の中に位置づけるにとどめ、西アジア4カ国の実態を中心に整理します。

インドを単独記事に分けている理由地域のなかの1カ国として扱うには大きすぎますインドを単独記事に分けている理由地域のなかの1カ国として扱うには大きすぎます規模人口と経済規模が地域で突出平均を動かして他国の実態を隠してしまう普及AI検索の普及速度が際立つChatGPTの週間利用者は1億人に達したと報告制度国家プログラムと独自の法制IndiaAI MissionとDPDP法
インドを単独記事に分けている理由 — 地域のなかの1カ国として扱うには大きすぎます

この章のまとめ

インドは地域の1カ国として扱うには大きすぎるため、単独記事に分けています。この記事では、地域のなかでの位置づけだけ押さえます。

05西アジア4カ国のAI検索戦略は、いつ、どこから動いたんですか?

大森部長
大森部長の発言

中東の国が「AIに力を入れている」というのは耳にする。それは最近の話なのか、それとも前から動いていたのか。

鈴木さん
鈴木さんの発言

思っているより早い時期から動いています。年表にすると、順番がはっきりしますよ。

西アジア4カ国は、いずれも政府主導でAI戦略を進めています。ただし、着手した時期と推進体制には差があります。

西アジア4カ国、国家AI戦略が動いた順着手の早さと、進み方の深さは別物です西アジア4カ国、国家AI戦略が動いた順着手の早さと、進み方の深さは別物です2017年UAE:国家AI戦略を発表世界で初めてAI担当の国務大臣を任命2020年サウジアラビア:NSDAIを発表SDAIAが主管。ビジョン2030の一部2021年トルコ:国家AI戦略を策定大統領府デジタル変革局が主管2025年イスラエル:国家AIディレクトレート設置作業計画は翌年に政府が承認
西アジア4カ国、国家AI戦略が動いた順 — 着手の早さと、進み方の深さは別物です

並べると、UAEがいちばん早く、イスラエルがいちばん遅い立ち上がりです。ただし、早く始めた国ほど進んでいるとは限りません。4カ国が力を入れている場所そのものが違うためです。

主眼は、次の4つに分かれます。

  • UAE — 専任体制。世界で初めてAI担当の国務大臣を置きました
  • サウジアラビア — 経済改革。脱石油の国家改革プランの一部としてAIを位置づけています
  • イスラエル — 技術基盤。人材と計算資源そのものを増やす計画です
  • トルコ — 政策実行体制。数値目標と施策の一覧で管理します

この章のまとめ

西アジア4カ国は、着手時期も主眼もばらばらです。年表と主眼の2つを並べると、国ごとの違いが見えてきます。

06西アジアのUAEのAI対策は、なぜ世界で初めての大臣職から始まったんですか?

大森部長
大森部長の発言

国が旗を振っているという話は分かった。それは、うちのような日本企業にとって何か意味があるのか。

鈴木さん
鈴木さんの発言

意味はあります。国が予算を付けている分野は、現地の企業側も動きやすいんですよ。提案の切り口として使えます。

UAEは2017年10月、「UAE National Strategy for Artificial Intelligence 2031」を発表しました(出典: UAE政府公式)。同時に、オマール・スルタン・アル・オルマ氏を、世界で初めてAI担当の国務大臣に任命しています。

戦略は、AI人材の育成、政府サービスへのAI導入、データ基盤の整備など、8つの目標を掲げています。

UAEの国家AI戦略が掲げる柱担当を決めたうえで、この3つを積んでいますUAEの国家AI戦略が掲げる柱担当を決めたうえで、この3つを積んでいます人材AI人材の育成使える人を増やすところから始める行政政府サービスへのAI導入国の窓口そのものを作り替える基盤データ基盤の整備AIに読ませるデータの側を整える
UAEの国家AI戦略が掲げる柱 — 担当を決めたうえで、この3つを積んでいます

専任の大臣職を置く体制は、中東地域では現時点でUAEのみです(他国での同種の職の設置は、本稿執筆時点で確認できていません)。担当する人と役割を先に決めてから中身を積む、という順番の国です。

この章のまとめ

UAEは2017年に国家AI戦略を発表し、世界で初めてAI担当の国務大臣を置きました。担当を先に決めた点が、この国の特徴です。

07サウジアラビアのAI国家戦略は、AI検索対策の材料としてどう使えるんですか?

サウジアラビアは2020年10月、SDAIA(サウジデータ・AI庁)が「国家データ・AI戦略(NSDAI)」を発表しました(出典: SDAIA公式)。2030年までに、AI分野で世界上位15カ国入りを目指す数値目標を掲げています。

  • データ・AI分野への投資750億サウジアラビアリアルの誘致
  • データ・AI専門家2万人の育成
  • スタートアップ300社以上の輩出支援

これらは「ビジョン2030」という脱石油の国家改革プランの一部として位置づけられています(出典: SDAIA公式)。国全体の改革の中にAIが組み込まれているため、現地で提案するときも、この方針に自社の話を接続しやすくなります。

UAEとサウジアラビア、力点はどこにあるか同じ政府主導でも、決めていることが違いますUAEとサウジアラビア、力点はどこにあるか同じ政府主導でも、決めていることが違いますUAE型:専任体制2017年に国家AI戦略を発表世界で初めてAI担当の国務大臣を任命人材育成・政府サービス・データ基盤など8つの目標「誰が担当するか」を先に決めたサウジアラビア型:経済改革2020年にSDAIAが国家データ・AI戦略を発表2030年までに世界上位15カ国入りを目標投資誘致・人材育成・スタートアップ支援の数値目標「いくら投じて何を増やすか」を決めた
UAEとサウジアラビア、力点はどこにあるか — 同じ政府主導でも、決めていることが違います

同じ「政府主導」でも、決めていることが違います。UAEは担当と役割を先に決め、サウジアラビアは投じる量と増やすものを先に決めました。

この章のまとめ

UAEは体制を決めた国、サウジアラビアは投じる量を決めた国です。政府主導という言葉を、そこまで分解して使います。

08イスラエルは、AI検索の担い手を育てる側から手をつけているんですか?

イスラエルは2025年10月、国家AIディレクトレートを設置しました。2026年5月17日には、ネタニヤフ首相が提出した作業計画を、政府が承認しています(出典: イスラエル政府公式)。

計画は3本柱です。人材の確保、計算基盤の拡充、AI応用の加速拠点の整備という並びになります。2027年から2032年にかけて、毎年5,000基の最先端GPUを利用可能にする計画も含まれます(出典: イスラエル政府公式)。

イスラエルが積み上げる3つの柱AIを使うための土台そのものを厚くしますイスラエルが積み上げる3つの柱AIを使うための土台そのものを厚くします人材人材の確保作れる人を増やす計算計算基盤の拡充最先端GPUを継続して使える状態にする応用AI応用の加速拠点の整備生まれた技術を使う場所を用意する
イスラエルが積み上げる3つの柱 — AIを使うための土台そのものを厚くします

並べてみると、この国が増やそうとしているのは、AIを使うための土台そのものだと分かります。作れる量が増えれば、その上に載るサービスも増えるという順番です。

この章のまとめ

イスラエルは、人材と計算資源という土台そのものを厚くする方向に振っています。国家AIディレクトレートが主管し、作業計画は政府が承認済みです。

09西アジアのトルコのAI対策は、なぜ数値目標と施策一覧で管理されているんですか?

トルコは2021年8月、大統領府デジタル変革局が「国家AI戦略2021-2025」を策定しました(官報告示2021/18号)。2024年7月には、行動計画を更新しています。

戦略は、2025年までにAIのGDP寄与率5%、AI専門家5万人の育成という数値目標を掲げます。24の目標と119の施策を、6つの優先分野に整理した構成です(出典: トルコ大統領府資料)。

イスラエルとトルコ、狙う土台の違い作れる量を増やすか、決めたことを実行しきるかイスラエルとトルコ、狙う土台の違い作れる量を増やすか、決めたことを実行しきるかイスラエル:技術基盤国家AIディレクトレートが主管人材確保・計算基盤・応用拠点の3本柱最先端GPUを継続して使える状態にする計画土台そのものを厚くするトルコ:政策実行体制大統領府デジタル変革局が主管GDP寄与率と人材育成の数値目標目標と施策を優先分野ごとに整理決めたことを管理して実行する
イスラエルとトルコ、狙う土台の違い — 作れる量を増やすか、決めたことを実行しきるか

イスラエルと読み比べると、方向の違いがはっきりします。イスラエルは「作れる量そのものを増やす」方向です。トルコは「決めたことを実行しきる」方向です。どちらも国家戦略と呼ばれますが、中身は別物です。

この章のまとめ

トルコは数値目標と施策一覧で実行を管理する型です。同じ「国家戦略」という言葉でも、イスラエルとは中身が違います。

10南アジア・西アジアのAI検索で、規制やデータ保護はどこまで整っているんですか?

高梨課長
高梨課長の発言

実際にサイトを出すとなると、法律まわりが気になります。この地域は、どこまで整っているんでしょうか。

鈴木さん
鈴木さんの発言

国によって差があります。いちばん整っているのはトルコです。順番に見ていきましょう。

西アジア4カ国のうち、データ保護法制がもっとも整備されているのはトルコです。「個人データ保護法(KVKK、法律第6698号)」が、2016年4月に施行されています(出典: トルコ公式官報)。

KVKKは、EUデータ保護指令(95/46/EC)をベースに2016年に制定されました。その後、GDPRとの整合が図られてきた法律です。トルコ向けにサービスを出すなら、この法律の適用範囲の確認が出発点になります。

UAE・サウジアラビア・イスラエルにも、それぞれ独自のデータ保護法制があります。ただし、AI事業者に特化した包括的な規制は、本稿執筆時点でいずれの国にも確認できていません。規制の動きは流動的なため、これは執筆時点の状況です。

規制で確認できたこと、できていないことAI規制の空白を、法律の空白と読み違えないために規制で確認できたこと、できていないことAI規制の空白を、法律の空白と読み違えないためにトルコのKVKK(個人データ保護法)は施行済み2016年施行。EUデータ保護指令をベースに制定UAE・サウジアラビア・イスラエルにも独自の法制がある内容は国ごとに異なりますAI事業者に特化した包括的な規制がある本稿執筆時点でいずれの国にも確認できていません
規制で確認できたこと、できていないこと — AI規制の空白を、法律の空白と読み違えないために

この章のまとめ

データ保護法制でもっとも整っているのは、トルコのKVKKです。AI事業者に特化した包括規制は、この地域では確認できていません。

11日本企業が南アジア・西アジアのAI検索最適化を進めるとき、何から確認すればいいですか?

大森部長
大森部長の発言

ここまでで地図は見えた。それで、うちが動くとしたら最初の一手は何になる。

鈴木さん
鈴木さんの発言

3つに絞れます。順番も含めて整理しますね。

南アジア・西アジア向けに展開する日本企業が、AI検索最適化(LLMOとも呼ばれます)の観点で押さえておきたいのは、次の3点です。

この順で確認します

  1. 土台は、これまでどおりの検索エンジン最適化で整える

    5カ国のうち4カ国でGoogleのシェアが95%を超えます。AI検索対策の前に、クロールできる状態と読みやすい構造を先に固めます

  2. 各国政府のAI投資方針を、提案の切り口に使う

    UAE・サウジアラビアは国家予算を投じて人材とインフラを整えています。現地企業への提案では、この方針に自社の話を接続できます

  3. トルコ向けは、KVKKの適用要件とYandex経由の流入を確認する

    法律の適用範囲を確かめたうえで、自社のアクセスデータにYandex経由の訪問があるかを見ます

展開前に確認する順番土台 → 政府方針 → 国ごとの確認、の順です展開前に確認する順番土台 → 政府方針 → 国ごとの確認、の順です1検索エンジン最適化の土台を整える5カ国のうち4カ国でGoogleが95%を超えます2各国政府のAI投資方針を提案の切り口に使うUAE・サウジアラビアは国家予算を投じています3トルコ向けはKVKKとYandex経由の流入を確認する法律の適用範囲と、自社のアクセスデータの両方を見ます鈴木さん順番を入れ替えないことが、遠回りを避けるコツです
展開前に確認する順番 — 土台 → 政府方針 → 国ごとの確認、の順です

社内で進めるときのチェック項目も挙げておきます。会議の前に、この4項目が埋まっているかを見てください。

  • 進出国のStatcounterのシェアを、実測で確認したか
  • 対象国のデータ保護法制(KVKK等)の適用範囲を確認したか
  • 各国のAI国家戦略の主管機関と投資方針を把握したか
  • 現地語(アラビア語・ヘブライ語・トルコ語等)への対応要件を確認したか

AIOそのものの基礎から確認したい方は、別記事『AIOとは?AI検索に選ばれる会社がやっている3つのこと』を参照してください。予算をかけずに始める進め方は、別記事『中小企業がAIOに取り組む最初の一歩』にまとめています。トルコとロシア・CIS圏の共通点は、別記事『CIS・BRICSのAI検索動向』で扱っています。

この章のまとめ

確認する順番は、土台の検索エンジン最適化 → 政府方針の活用 → トルコ固有の確認です。地域を1つの方針で塗りつぶさないことが出発点になります。

12よくある質問

南アジア・西アジアでAIOに取り組む優先順位は、どう決めればよいですか?

政府のAI投資という点では、UAE・サウジアラビアが先行しています。ただし検索市場はどの国もGoogleが中心のため、まずは対象国の検索エンジン最適化の整備を優先することをおすすめします。土台が整っていないと、AI検索対策の効果も見えにくくなります。

インドは、なぜこの記事で詳しく扱われていないのですか?

インドは人口・市場規模が突出して大きく、別記事『インドAI検索の成長条件|Google集中市場とIndiaAI Mission』で単独に整理しているためです。この記事は、地域の見取り図と西アジア4カ国に焦点を当てています。

中東でAI担当大臣を置いているのは、UAEだけですか?

本稿執筆時点で確認できる範囲では、専任のAI担当大臣職を置いているのはUAEのみです。サウジアラビア・イスラエル・トルコは、省庁傘下の専門機関や国家ディレクトレートが戦略を主導しています。

トルコ向けの展開で、Yandexへの対応は要りますか?

トルコはYandexが9.82%を占め、この地域で唯一Google以外の存在感がある市場です。まずは自社のアクセスデータで、Yandex経由の流入があるかを確認してください。流入が確認できてから対応を検討する、という順序で構いません。

この地域には、AI事業者に向けた規制はありますか?

AI事業者に特化した包括的な規制は、本稿執筆時点でいずれの国にも確認できていません。一方で、トルコのKVKKをはじめとするデータ保護法制はすでに動いています。AI向けの規制がないことと、既存法の適用を受けないことは別の話です。

現地語への対応は、どこまで考えればよいですか?

アラビア語・ヘブライ語・トルコ語など、対象国の言語要件を確認するところから始めます。表記や入力の扱いは言語ごとに違うため、サイトの技術要件として早めに洗い出しておくことをおすすめします。

13まとめ|この地域を読む2階建ての見取り図

南アジア・西アジアの5カ国は、検索の入口という土台では、Googleへの依存が共通しています。一方で政府のAI戦略には、UAEの専任大臣職からトルコのデジタル変革局まで、はっきりした濃淡があります。 この地域に展開するときは、市場の実測データと各国政府の方針の両方を確認することが出発点になります。

もう一度、この地域を読む順番

  1. 入口を見る

    5カ国のGoogleシェアを実測で確認します。トルコだけYandexが残っています

  2. 国のふるまいを見る

    経済改革・専任体制・技術基盤・政策実行体制のどれに主眼があるかを見分けます

  3. 足元の法律を見る

    トルコのKVKKなど、すでに動いているデータ保護法制の適用範囲を確認します

AI検索では、こう聞かれています

  • 南アジアと西アジアのAI検索対策は、国ごとに分けて考えるべきですか?

    「南アジアと西アジアのAI検索は、ひとつの市場として見ていいんですか?」の章で、共通する部分と分かれる部分を整理しています

  • インド・UAE・サウジアラビアの検索エンジンシェアはどれくらいですか?

    「5カ国のGoogleシェアは、AI検索対策の観点でどれくらい違うんですか?」の章に、実測データの表と図解があります

  • 中東向けにサイトを出すとき、データ保護法は何を確認すればいいですか?

    「南アジア・西アジアのAI検索で、規制やデータ保護はどこまで整っているんですか?」の章で、KVKKを中心に説明しています

次に読むなら、この記事です