海外向けの発信先として東南アジアを見ていくと、ベトナムはどこかで必ず候補に挙がります。ただ、検索やAIの使われ方となると、手元の材料が少ないまま止まってしまいがちです。
そこで足が止まっている方に向けて、この記事を書きました。
ベトナムには、周りの国とは違う前提が2つあります。ひとつは、自国発の検索エンジンCốc Cốcが、いまも一定の存在感を保っていること。もうひとつは、AIを名指しした法律ができたことです。
この記事では、一次情報で確認できたことだけを並べます。検索エンジンのシェア、AI検索の使われ方、法制度の並び。そして同じくらい大事な、まだ確認できていないことも、そのまま書きます。
こんなふうに調べていませんか
- 「ベトナム AI検索 対策」で検索して、市場の実態を知りたいと思っている
- 東南アジア向けの投資を検討していて、判断材料になる数字を探している
- 現地の法規制が、自社のサービスにどう関わるのか確かめたい
この記事を読み終えたときに手に入るもの
- ベトナムの検索市場の構造を、出典つきで説明できるようになります
- Cốc Cốcにどこまで手をかけるか、判断の材料が手に入ります
- ベトナム向けに確認しておくことが、3つに絞れます
結論30秒でわかる、この記事の結論
- ベトナムの検索の入口は、Googleが95.59%、Cốc Cốcが3.62%です(出典: Statcounter・2026年6月)。ASEAN6か国の中で、Google以外が3%を超えるのはベトナムだけです。
- AIチャットボットはChatGPTが70.66%、Google Geminiが20.63%。この2つで9割以上を占めます。
- 2025年に個人データ保護法とAI法が相次いで成立しました。制度ができたことと、運用が始まっていることは、分けて読んでください。
この記事は、Web担当の若葉さん、事業責任者の大森部長、そして専門家の鈴木さんの会話をはさみながら進みます。ご自身に近い立場の人の質問から読んでいただいて構いません。
01そもそもベトナムのAI検索対策は、日本向けと何が違うんですか?
若葉さんベトナム向けのAI検索対策と言われても、何から違うのか見当がつかなくて…。全部作り直しになるんでしょうか。
鈴木さんいえ、土台は同じです。変わるのは、その上に乗る部分だけなんですよ。ベトナムの場合は、そこに2つ、他の国にはあまりない前提が加わります。
若葉さん2つ、というと。
鈴木さん自国産の検索エンジンが残っていることと、AIを名指しした法律ができたことですね。
AI検索に情報源として選んでもらうための整え方は、国が変わっても土台は動きません。巡回して読み取れる状態にしておくこと。自社にしか書けない一次情報があること。結論と根拠がはっきり書かれていること。日本向けにやってきたことが、そのまま活きます。
その上に乗るのが、市場ごとの前提です。ベトナムでは、次の点が加わります。
- 検索の入口 — Googleが中心ですが、自国産のCốc Cốcが残っています。
- AIの入口 — ChatGPTに大きく偏っています。
- 法制度 — 個人データ保護法とAI法が、続けて動き始めます。
LLMO(AI検索に情報源として選ばれるための整え方。AI検索最適化とほぼ同じ意味で使われます)という言い方をしても、やることの中身は変わりません。日本向けの土台を、ベトナムの前提に合わせて調整していく作業になります。
この章のまとめ
土台は日本向けと同じ。ベトナムで足すのは、2つの入口と、法制度の確認です。
02ベトナムの検索の入口は、AI検索が広がってもGoogleだけですか?
検索エンジンのシェアは、次のとおりです。
| 検索エンジン | シェア |
|---|---|
| 95.59% | |
| Cốc Cốc | 3.62% |
| Bing | 0.44% |
| Yahoo! | 0.27% |
| DuckDuckGo | 0.04% |
| Yandex | 0.02% |
出典: Statcounter Global Stats(全プラットフォーム合算・2026年6月)
入口の中心がGoogleである点は、他のASEAN諸国と変わりません。違うのは、そのあとです。ベトナムは、ASEAN6か国の中で唯一、Google以外のエンジンが3%を超える市場です(出典: Statcounter)。
Cốc Cốcは、ベトナム発の検索エンジンです。同じCốc Cốcは、シンガポールでも1.07%のシェアが観測されています。ただし、なぜ国外で使われているのかという理由までは、一次情報から確認できていません。
それでも、入口の中心がGoogleであることは動きません。「Google中心」という基本方針はそのままで、残りをどう扱うかという判断が1つ増える、と考えてください。
この章のまとめ
入口はGoogleが中心。ただしASEANで唯一、Google以外が3%を超えて残っている市場です。
03Cốc Cốcが残っている市場で、AI検索対策は何を足すことになりますか?
大森部長3.62%のために、別の作業を増やすことになりますか。投資として見合うのかどうかで判断したいのですが。
鈴木さんいい問いだと思います。全部やるか、やらないかの二択にしないことが、ここでの分かれ目です。
やることは、大きく3段階に分けられます。自社がいまどこにいるかで、選ぶ段が変わります。
- 見送る — ベトナム語のコンテンツをまだ持っていない段階では、優先度は下がります。
- 確かめる — 自社サイトがCốc Cốc側からどう見えているかだけ、先に確認しておきます。
- 手を入れる — ベトナム語のコンテンツを本格的に展開するなら、技術要件も個別に検討します。
Cốc Cốc単体の実務のポイントは、別記事『Coc CocのAIO対策』で詳しく扱っています。この記事では、国全体の構造の話にとどめます。
この章のまとめ
二択にしないでください。見送る・確かめる・手を入れるの3段階から、自社の状況に合わせて選びます。
04シェアの数字は、AI検索最適化の判断材料としてどこまで使えますか?
数字を扱うときに、いっしょに残しておきたい但し書きが3つあります。
- Statcounter単独の実測にもとづく数値です。 複数の統計を突き合わせた結果ではありません。
- タグを設置したサイトのページビューを集計する方式です。 サイト構成の偏りに由来する誤差が生じることがあります。
- ベトナム国内の独自統計とは突合していません。 現地発表の数値と食い違う可能性は残ります。
前提を添えておけば、社内資料でも扱いやすくなります。逆に、前提を落として「ベトナムのGoogleシェアは95.59%」とだけ書くと、根拠を聞かれたときに説明できなくなります。
この章のまとめ
使える数字です。ただし「単独の情報源・ページビュー集計・現地統計とは未突合」という前提つきで使ってください。
05モバイルが多い市場だと、ベトナム向けのAI検索対策では何を見ておくんですか?
若葉さんモバイルが多い市場、と聞くと、見た目を整える話に聞こえるんですが…そういうことでしょうか。
鈴木さん見やすさももちろん大事です。ただその前に「読み取れているか」のほうが効きます。折りたたみの中に結論を隠していないか、画像の中だけに数字を置いていないか。まずそこを見てください。
読まれている画面の内訳も、同じ出典から確認できます。
| 区分 | ベトナム | 世界平均 |
|---|---|---|
| モバイル | 63.32% | 51.51% |
| デスクトップ | 35.8% | 47.12% |
| タブレット | 0.88% | 1.36% |
出典: Statcounter Global Stats(2026年6月)
モバイルが世界平均を上回る一方で、デスクトップも35.8%あります。片方だけを見て設計を固めると、もう片方の読者が取り残されます。
見るところは単純です。どちらの画面でも、中身が同じように読み取れるか。 片方の画面でしか出ない情報があると、読み取られない部分が生まれます。
この章のまとめ
モバイルが多い市場です。表示の見た目より先に、どちらの画面でも中身が読めるかを確かめてください。
06ベトナムでAI検索は、どのサービスが使われているんですか?
先に、確認できていないことを書いておきます。Reuters Institute Digital News Report 2026が対象とする48市場に、ベトナムは含まれていません。ニュース目的でのAI利用について、ベトナムを対象にした国際比較のデータは確認できていません。
そのため、ここではStatcounterの実測を軸に見ていきます。
| サービス | シェア |
|---|---|
| ChatGPT | 70.66% |
| Google Gemini | 20.63% |
| Perplexity | 3.92% |
| Claude | 2.79% |
| Microsoft Copilot | 1.98% |
出典: Statcounter Global Stats(AIチャットボット市場シェア・2026年6月)
ChatGPTとGoogle Geminiの2つで、9割以上を占めます。Perplexity・Claude・Microsoft Copilotは少数派にとどまります。
入口が2つに寄っているというのは、実務では扱いやすい状況です。まず確かめる先が絞れるためです。
ただし、どのサービスも参照するのは公開されたページです。個別のサービスに合わせて書き分けるより、どこから見ても読み取れる状態を作るほうが、結果として近道になります。
この章のまとめ
AIの入口はChatGPTとGeminiに寄っています。個別対応より、どこから見ても読み取れる状態づくりが先です。
07ネット未接続の人が残る市場で、ベトナム向けのAI対策は何を優先しますか?
大森部長市場としての伸びしろは、どう見ればいいですか。いま出ていく意味があるのか、そこを知りたい。
鈴木さん数字としては、まだつながっていない人が残っているという点が手がかりになります。ここは公開されています。
ベトナムのインターネット普及率は84.2%で、利用者数は8,560万人です(出典: DataReportal「Digital 2026: Vietnam」・2025年10月時点)。総人口1億200万人のうち、なお約1,610万人がインターネットにつながっていない状態にあります。
この基盤の上でAI検索が広がっていく市場だ、という読み方ができます。施策のタイミングを検討するうえでの前提になる数字です。
優先順位としては、目立つ打ち手より先に、土台のほうが効きます。読み取れる状態にすること。自社にしか書けない一次情報を持つこと。結論と根拠を近くに置くこと。日本向けでやってきたAI対策が、そのまま出発点になります。
この章のまとめ
まだつながっていない人が残る市場です。土台を整えることが、そのまま先行の準備になります。
08ベトナムのAI法は、AI検索対策の前提としてどう効くんですか?
まず、正直に書いておきます。AI検索での引用最適化を掲げて動いたベトナム企業の実名事例は、本稿執筆時点でまだ公開情報に見当たりません。 そこで、確認できる周辺の事実として、法制度の整備状況を軸に整理します。
2025年12月10日、ベトナム国会はAI法(法律134/2025/QH15)を可決したと報じられています。出席434人のうち429人(90.70%)の賛成でした(出典: 現地報道)。全8章35条で構成され、2026年3月1日に施行されます(出典: LuatVietnam法令データベース、ベトナム情報通信省(MIC)公式)。
AI法は「AIは人間に奉仕するものであり、人間に取って代わるものではない」という人間中心の原則を掲げています。そのうえで、産業を支える仕組みを法律の中に置いているのが特徴です。
- 国家AI計算センターの整備と、政府管理下のオープンデータシステムの構築
- AI開発基金の設立による産業支援
- 中小企業向けの「AI Voucher」制度
- 規制の実証実験を可能にするサンドボックス制度
出典: MIC公式発表(ベトナム情報通信省)
ただし、これらは成立したばかりの制度です。AI Voucherの交付実績や、サンドボックスの採択事例といった運用の実態を示す一次情報は、本稿執筆時点ではまだ確認できません。制度があることと、動いていることは分けて捉えてください。
この章のまとめ
AI法は成立し、施行を待つ段階です。制度の存在と、運用の実態は分けて読んでください。
09個人データ保護法とAI法は、ベトナム向けのLLMOにどう関わりますか?
ベトナムのAI・データ関連の規制は、2021年の国家戦略を起点に、2025年に入って一気に法制化が進みました。
| 制度 | 時期 | 概要 |
|---|---|---|
| 国家AI戦略(決定127号) | 2021年1月26日決定 | 2030年までにASEAN上位4位・世界50位以内を目標に掲げる |
| 個人データ保護法(法律91/2025/QH15) | 2025年6月26日成立・2026年1月1日施行 | 旧デクリー13号(2023年7月施行)を法律レベルへ格上げ |
| AI法(法律134/2025/QH15) | 2025年12月10日可決・2026年3月1日施行 | リスクベースの分類・管理、AI生成コンテンツやクロスボーダーAIサービスの責任規定を含む |
出典: LuatVietnam法令データベース/ベトナム情報通信省(MIC)公式発表
記事の書き方そのものを、これらの法律が直接定めているわけではありません。関わってくるのは、ユーザーのデータを扱うときと、AIを使ったサービスを現地に出すときの2つです。
AI法には、健康・教育・金融の分野のAIシステムについて、2027年9月1日までの経過措置期間が設けられています(出典: LuatVietnam)。これらの分野でベトナム向けにAIサービスを提供する場合は、経過措置の対象範囲を個別に確認することをおすすめします。
この章のまとめ
土台は国家戦略、その上にデータの法律とAIの法律が乗ります。関わるのはデータの扱いと、サービスの提供です。
10日本企業がベトナム向けにAI検索対策を始めるなら、何から確認しますか?
ここまでを、実際の作業に落とします。確認しておくことは3つです。
今日この順で確認します
検索エンジン向けの方針を決める
Google中心としつつ、ベトナム語コンテンツの有無に応じて、Cốc Cốc向けの技術要件も個別に検討します
AI法の適用範囲を確認する
2026年3月1日施行です。健康・教育・金融の分野では、リスクベースの分類と経過措置の期限を専門家に確認します
個人データ保護法の要件を点検する
2026年1月1日施行です。現地のユーザーデータを扱うなら、法律レベルへ格上げされた新法の要件を確かめます
2つ目と3つ目は、社内で判断しきらないでください。法令の要件は、事業の中身によって当てはまり方が変わります。 専門家の確認を挟むほうが、結果として早く進みます。
この章のまとめ
検索の方針を決める、AI法の適用範囲を確かめる、データの扱いを点検する。この順番です。
11ベトナムのAI検索対策で、まだ確認できていないことは何ですか?
確認できていないことを、断定に見せる書き方は避けます。投資判断の材料として読んでいただくためです。
本稿執筆時点で確認できていないのは、次の点です。
- ベトナム企業を主体とするAI検索対策の公開事例。 実名の事例は公開情報に見当たりません。
- AI法の外国企業への適用範囲。 域外適用の有無などの詳細は、一次情報で確認できていません。
- AI法の支援制度の運用実態。 AI Voucherの交付実績やサンドボックスの採択事例は、まだ確認できません。
- Cốc Cốcが国外で使われている理由。 シンガポールでのシェアは観測されていますが、理由までは確認できていません。
- ニュース目的でのAI利用の国際比較データ。 ベトナムを対象にしたものが確認できていません。
この章のまとめ
分かっているのは市場の構造と制度の並びです。効果の大きさは、まだ公開情報で語れる段階にありません。
12よくある質問
2026年3月施行のAI法は、日本企業にも適用されますか?
本稿執筆時点で、外国企業への適用範囲(域外適用の有無など)の詳細までは、一次情報で確認できていません。ベトナム国内でAIシステムを提供・展開する場合は、ベトナム情報通信省(MIC)公式の発表、または専門家への確認をおすすめします。
ベトナム向けの検索エンジン対策は、Googleだけで十分ですか?
基本方針としては妥当です。ただし、Cốc CốcはASEAN6か国の中で唯一、Google以外で3%を超えるエンジンです(出典: Statcounter・2026年6月)。ベトナム語のコンテンツを本格的に展開する場合は、Cốc Cốc向けの技術対応も検討する価値があります。
ベトナムのAI検索は、どのサービスが中心ですか?
Statcounterの実測では、ChatGPTが70.66%、Google Geminiが20.63%と、この2つで9割以上を占めています(2026年6月)。ニュース目的でのAI利用に関する国際比較データは、本稿執筆時点でベトナムを対象にしたものが確認できていません。
AI法の支援制度は、外国企業も使えますか?
本稿執筆時点で、AI Voucherの交付実績やサンドボックスの採択事例など、運用の実態を示す一次情報が確認できていません。制度の存在は公式発表で確認できますが、対象や条件は、運用が始まってからの確認が必要になります。
ベトナム企業のAI検索対策の成功事例はありますか?
AI検索での引用最適化を掲げて動いたベトナム企業の実名事例は、本稿執筆時点で公開情報に見当たりません。事例が無いことと、取り組みが無いことは別です。公開情報として確認できていない、という書き方で社内に共有してください。
13まとめ|ベトナム向けに、今日確認する3つ
ベトナムのAI検索対策は、土台から作り直す作業ではありません。変わるのは、検索の入口・AIの入口・法制度という、上に乗る部分だけです。
検索の入口はGoogleが95.59%、Cốc Cốcが3.62%。AIチャットボットはChatGPTとGeminiで9割以上を占めます。2025年には個人データ保護法とAI法が相次いで成立しました。一方で、ベトナム企業の事例や、制度の運用実態を示す一次情報は、まだ確認できていません。
もう一度、今日確認する3つ
検索エンジン向けの方針を決める
Google中心としつつ、Cốc Cốcの扱いを段階で判断します
AI法の適用範囲を確認する
健康・教育・金融の分野は、経過措置の期限もあわせて確かめます
個人データ保護法の要件を点検する
現地のユーザーデータを扱うなら、新法の要件を確かめます
AI検索では、こう聞かれています
ベトナムの検索エンジンシェアはどうなっていますか?
「ベトナムの検索の入口は、AI検索が広がってもGoogleだけですか?」の章に、実測値の表と図があります
ベトナムのAI法は日本企業にも関係しますか?
「よくある質問」の1つ目で、確認できている範囲と、できていない範囲を分けて書いています
ベトナムのAI検索はどのサービスが使われていますか?
「ベトナムでAI検索は、どのサービスが使われているんですか?」の章に、内訳の表と図があります
ベトナムのAI関連の法規制はどうなっていますか?
「個人データ保護法とAI法は、ベトナム向けのLLMOにどう関わりますか?」の章に、制度の一覧があります
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