中国の検索エンジン市場は、百度(Baidu)を中心に語られがちです。別記事『中国AI検索の参入設計|Baidu・ICP備案・生成AI規制』は市場全体を扱っています。別記事『Baidu公式ガイドで設計する中国語圏AIO|品質基準とERNIE対応』は百度単体を扱っています。いずれも百度を主軸に据えた記事です。
本稿は、百度以外の主要プレイヤーであるSogou(捜狗)とHaosou(好搜/360捜索)という2つの検索エンジン単体に絞り、公式情報と現地報道から確認できる範囲を整理します。
01結論サマリー
百度47.44%に対し、Sogouと好搜(360捜索)を合わせても16.64%です(出典: Statcounter、2026年6月)。これが中国検索市場における「百度以外」の実像です。
Sogouは2021年9月24日、Tencent(騰訊)による完全子会社化が完了した検索エンジンです(出典: China Daily)。現在も公式サービス「捜狗微信搜索」(weixin.sogou.com)を通じて、微信(WeChat)公式アカウント記事の検索を提供しています。好搜(360捜索)は三六零(旧・奇虎360)が運営し、自社大規模言語モデルと統合したアプリ「360 AI搜索」を2024年1月29日に公開しました(出典: 騰訊新聞)。
日本企業が百度以外の中国検索エンジンを検討する際は、それぞれが異なる企業グループの傘下にある点と、百度ほど体系立った公式アルゴリズム開示がない点の両方を押さえる必要があります。
02市場でのシェア実測
Sogou・Haosou(好搜/360捜索)の市場シェアは、別記事『中国AI検索の参入設計|Baidu・ICP備案・生成AI規制』で報告した数値と同一のものを、以下に再掲します。
| 検索エンジン | シェア |
|---|---|
| Baidu | 47.44% |
| Bing | 23.24% |
| Haosou | 14.02% |
| Yandex | 10.23% |
| Sogou | 2.62% |
| 2.28% |
出典: Statcounter Global Stats(全プラットフォーム合算・2026年6月)
Haosou(好搜)は2位のBingに次ぐ第3位で、Sogouは最下位グループです。両者を合算すると16.64%となり、Bingの23.24%には及びませんが、百度に次ぐ国内資本の検索エンジン連合として見た場合には無視できない規模です。
Statcounterの中国データにはBing過大表示という既知の測定上の注意点があり、詳細は別記事『中国AI検索の参入設計|Baidu・ICP備案・生成AI規制』で報告済みです。Sogou・Haosouの数値自体への同種の指摘は、本稿執筆時点で確認できていません。
03AI機能の現状
Sogou・Haosouは、それぞれ異なる方法で自社のAI機能を検索に統合しています。
Sogouの入力方法ソフト「捜狗输入法」PC版は2025年3月17日、Tencentの対話AI「腾讯元宝」と統合されました(出典: 騰訊新聞)。ステータスバーのボタンまたはAlt+スペースキーでAIアシスタントを起動でき、混元(Hunyuan)またはDeepSeekモデルを選択できます。「深度思考」(複雑な論理推論)・「聯網搜索」(インターネット検索)の機能も統合されています。
好搜(360捜索)は、三六零が2023年9月に「360智脳」、同年11月4日に「奇元大模型」の備案(政府認可)を取得したと報じられています(出典: 騰訊新聞)。同社はこれにより、大規模言語モデル2種の備案を取得した国内初の企業になったと報じられています。これらのモデルを検索に統合したアプリ「360 AI搜索」が、2024年1月29日にAndroid向けへ正式公開されました(出典: 騰訊新聞)。
Sogou・360捜索いずれも、単体企業として引用増加を数値で示した公開事例は、本稿執筆時点で一次情報から確認できていません。確認できるのは、両社がAI機能を自社製品へ統合してきた経緯そのものです。
04検索アルゴリズムと最適化の実務ポイント
Sogou・360捜索は、いずれも公式のウェブマスター向けプラットフォームを運営しているとされています。Sogouは「捜狗資源平台」(zhanzhang.sogou.com)を、360は「360站長平台」(zhanzhang.so.com)を運営しています。いずれも本稿執筆時点でサイトの存在自体は確認済みです。
ただし、アルゴリズム名つきの体系立てた公開ガイド文書は、本稿執筆時点で確認できていません。別記事『Baidu公式ガイドで設計する中国語圏AIO|品質基準とERNIE対応』で報告した百度搜索資源平台(ziyuan.baidu.com)のような情報開示とは対照的です。
百度が「細雨算法」「優良コンテンツ指南」のように具体名でガイドラインを公開しているのに対し、Sogou・360捜索の同種の公式情報は限定的です。この非対称性自体が、両エンジンを検討する際の実務上の出発点になります。
現時点で確認できる実務対応は、各公式プラットフォームへのサイト登録です。百度向けの品質基準(細雨算法・優良コンテンツ指南等)がSogou・360捜索にも通用するかどうかは、本稿執筆時点で検証できていません。
05規制・政策の文脈
Sogou・360捜索も、中国国内で提供される検索・生成AIサービスである以上、他の中国検索エンジンと同じ規制環境の対象です。ICP備案・生成式人工智能服务管理暂行办法の詳細は、別記事『中国AI検索の参入設計|Baidu・ICP備案・生成AI規制』を参照してください。
Sogou・360捜索固有の規制上の相違点(大規模言語モデルの備案審査における個別の扱い等)は、本稿執筆時点で確認できていません。
06日本企業への示唆
Sogou・360捜索を検討する際、日本企業が押さえるべき実務ポイントは次の3点です。
- 百度中心の対策を基本としつつ、Sogou経由の微信公式アカウント検索(weixin.sogou.com)も点検してください。 自社の中国語コンテンツを微信公式アカウントで配信している場合、この検索窓口での見え方を個別に確認する価値があります。
- 360捜索向けの体系立った公式最適化ガイドは、本稿執筆時点で確認できません。 百度向け対策(別記事『Baidu公式ガイドで設計する中国語圏AIO|品質基準とERNIE対応』)を基本形としつつ、まずは自社サイトのrobots.txtで360Spider・Sogou web spiderのUser-Agentを拒否していないかを確認してください。この2つが取得できない状態では、両エンジン経由の露出はそもそも発生しません。
- Sogou・360捜索のどちらも中国国内向けサービスのため、ICP備案の要否確認が全ての対策の前提になります。 別記事『中国AI検索の参入設計|Baidu・ICP備案・生成AI規制』の規制・政策節を先に確認してください。
東アジア3市場の比較整理は、別記事『東アジアAI検索比較|韓国・中国・台湾で異なる市場設計』もあわせてご覧ください。AIOという概念自体の基礎整理は、別記事『AIOとは何か?SEOとの違い・共通点から始め方まで徹底解説』を参照してください。主要AI検索エンジンの全体比較は、別記事『AI検索エンジンの種類と使い分けまとめ|主要7サービス比較表』にまとめています。
07FAQ
Q. Sogou・360捜索は、百度向け対策とは別に個別対応が必要ですか?
両エンジンとも百度とは異なる企業グループの傘下にあり、公式ガイドラインの整備状況も異なります。完全に独立した対策までは本稿執筆時点で確認できていませんが、百度向け対策を基本形としつつ個別に挙動を検証することをおすすめします。
Q. SogouはTencentの完全子会社ですか?
はい。2021年9月24日、TencentによるSogouの完全子会社化が完了し、Sogouはニューヨーク証券取引所から上場廃止しました(出典: China Daily)。
Q. 360捜索(好搜)は独自の大規模言語モデルを持っていますか?
三六零は「360智脳」「奇元大模型」という2つの大規模言語モデルの備案を取得したと報じられています(出典: 騰訊新聞)。これらを検索に統合したアプリ「360 AI搜索」が2024年1月に公開されています。
08この分野を体系的に学ぶ
この記事は検索エンジン深掘り記事です。海外AIO動向を基礎から体系的に学びたい方は、AI検索最適化講座「基礎編: 主要AI検索エンジン各論(II-C)」をご覧ください。