「中国にも展開するので、AI検索の対策をお願いします」。そう頼まれたとき、いつもどおりの手順書を開いても、最初の行から使えません。
中国では、Googleが実質的に機能しないからです。しかも公開されているシェアの数字も、そのまま読むと判断を誤ります。
この記事は、中国向けのサイトやコンテンツを検討することになった方に向けて書きました。市場の形、Baiduが進めているAIの統合、参入の前提条件、そして生成AI規制。この4つを、図解と会話で順番に整理します。
こんなふうに調べていませんか
- 中国向けに、Google前提のやり方がどこまで通じるのかを知りたい
- 「中国 AI検索 対策」で検索して、何から手をつけるかを探している
- 中国向けにサイトを出すときの前提条件と規制を、先に把握しておきたい
この記事を読み終えたときに手に入るもの
- 中国の検索市場をGoogle前提で読めない理由を、数字の偏りごと説明できるようになります
- BaiduがAIを検索へどこまで統合しているかが、図で分かります
- 中国向けのAI検索最適化で押さえる論点が、4つに絞れます
結論30秒でわかる、この記事の結論
- 中国は、Googleが実質的に機能しない、独自の検索エコシステムを持つ市場です。Statcounterでは2026年6月時点でBaiduが47.44%、Googleは2.28%です。
- ただし、Statcounterの中国データにはBing過大表示という既知の問題があります。実態はBaidu優位と見るのが妥当です。
- 中国向けは、コンテンツ設計より前に確認することがあります。ICP備案という参入要件と、生成AI規制の義務です。
この記事では、中国向けの展開を検討しているマーケティング部の2人と、専門家の会話をはさみながら進めます。
- 若葉さん(Web担当2年目)— 「そもそも、それって何ですか?」を聞く役
- 大森部長(マーケ部長)— 「どこから投資するのか」を判断する役
- 鈴木さん(AIO/SEOの専門家・本誌監修)— 答える役
01中国のAI検索対策は、なぜGoogle前提が通じないんですか?
若葉さん中国向けのAI検索対策と言われたんですが、Google向けにやってきたことを翻訳すれば済みますよね?
鈴木さんそれが、中国だけは前提から違うんです。Googleが実質的に機能しないので、入口そのものが別の会社になります。
中国は、Googleがほぼ機能しない、世界でも特異な市場です。Statcounterの数値でも、Googleは2.28%にとどまります。
代わりに長く市場を主導してきたのが百度(Baidu)です。近年は自社のAIモデル「ERNIE(文心一言)」を検索に統合する動きを強めています。
つまり中国では、「検索対策とはGoogle対策のことだ」という前提が最初から成り立ちません。日本で積み上げてきたGoogle向けの知見は、考え方としては使えても、設定や窓口はそのまま移植できないと考えてください。
この章のまとめ
中国はGoogleが実質機能しない市場です。Google前提の手順書をそのまま持ち込まず、入口と前提条件から組み直します。
02中国のAI検索シェアは、どんな数字になっていますか?
大森部長感覚ではなく数字で見せてほしい。どこに人と予算を置くかの判断材料になる。
鈴木さんはい。Statcounterの実測データです。2026年6月・全プラットフォーム合算の数値になります。
中国の検索エンジン市場の内訳は、次のようになっています。
| 検索エンジン | シェア |
|---|---|
| Baidu | 47.44% |
| Bing | 23.24% |
| Haosou | 14.02% |
| Yandex | 10.23% |
| Sogou | 2.62% |
| 2.28% |
表面上は、Baiduが単独で半分近くのシェアを持ち、BingとHaosou(360捜索)も高い数値を示します。ただし、この内訳の解釈には注意が必要です。理由は次の章で扱います。
Baidu以外の中国の検索エンジンについては、SogouとHaosou(360検索)を扱った別記事で個別に整理しています。
この章のまとめ
Statcounter基準では、Baiduが47.44%で最大です。ただし公開された数字を、そのまま社内資料へ載せるのは早すぎます。
03中国のAI検索シェアの数字は、どこまで信じられますか?
大森部長Bingが23.24%というのは、ずいぶん高いように見えるが。
鈴木さんそこが引っかかるところです。Bingは中国本土では、一般のユーザーが通常はアクセスできない検閲の対象なんです。
Statcounterの中国データには、「Bing過大表示」という既知のデータ品質問題が指摘されています。実際に2023年には、BingがBaiduを逆転するという明白な誤測定が記録され、後日訂正されています。
したがって、Bingの数値をそのまま市場実態として扱うのは適切ではありません。実態はBaidu優位と見るのが妥当です。
この章のまとめ
中国のシェアは、公開データの偏りを踏まえて読みます。Bingの数値は過大に出ることが知られており、実務ではBaidu優位を前提にします。
04BaiduのAI検索は、どこまでAIに寄っているんですか?
若葉さんBaiduもAI検索をやっているんですね。別のサービスとして出しているんですか?
鈴木さんいえ、そこが特徴的で、検索そのものの中に入れています。数字にもその方針が出ています。
百度は、自社のLLMである「ERNIE」を検索体験に統合する方針を明確にしています。2026年第1四半期、AI関連の中核事業の売上高は前年同期比49%増の136億元に達しました(出典: 百度公式決算発表、2026年5月18日)。
これは一般事業売上の52%を初めて超えた水準です。
この数字が示しているのは、百度がAI機能を新サービスとして切り出すのではなく、既存の検索体験そのものへ統合する戦略を取っていることです。ERNIEは検索だけでなく、アルゴリズム推薦や広告といった既存事業にも組み込まれています。
この章のまとめ
BaiduはERNIEを検索体験へ統合しています。AI関連中核事業の売上は、一般事業売上の52%を初めて超えました。
05中国のAI検索対策を始める前に、ICP備案とは何ですか?
大森部長コンテンツの話に入る前に確認したい。中国向けにサイトを出すこと自体に、手続きは要るのかね。
鈴木さんはい、そこが中国のいちばん最初の関門です。ICP備案という登録があります。
そもそも中国国内でウェブサイトを運営するには、ICP備案(网站备案)という工業和信息化部への登録が必要です(出典: 工業和信息化部)。
原則として、中国国内法人(現地子会社等)が備案の主体として求められます。境内に拠点のない外国企業が単独で登録することはできません(出典: 阿里雲ヘルプセンター)。
中国向けのAIOは、この参入要件の確認から始まります。コンテンツをどう書くかより前に、そもそも出せるのかどうかを確かめる順番になります。
この章のまとめ
中国向けは、参入要件の確認が出発点です。ICP備案の主体は原則として中国国内法人で、外国企業が単独で登録することはできません。
06中国の生成AI規制は、AI検索最適化にどう効くんですか?
若葉さん中国には生成AIの規制があると聞きました。記事づくりにも関係しますか?
鈴木さん関係します。とくに生成したコンテンツの示し方は、確認しておきたい場所です。
中国は2023年7月10日、国家インターネット情報弁公室など7部門の連名で「生成式人工智能服务管理暂行办法」を公布しました(出典: 中国国家インターネット情報弁公室公式サイト)。同法は同年8月15日に施行されています。
この規制は、生成AIを使ってコンテンツを配信する事業者全般に影響します。中国向けの配信を考えるなら、市場構造と同じ重さで確認しておく領域です。
この章のまとめ
中国では、生成AIサービスに関する規制が2023年8月15日から施行されています。市場構造と規制は、セットで確認します。
07生成AI規制の中で、中国のAI検索対策として確認するのはどこですか?
同法は、生成AIサービス提供者に対して次のような義務を定めています。
- 世論誘導性・社会動員力を持つサービスは安全評価とアルゴリズム届出を行う(第17条)
- 画像・動画等の生成コンテンツにラベル表示を行う(第12条)
- 国家転覆の扇動や虚偽有害情報の生成を防止する(第4条)
- 利用者との間でサービス協議を締結し権利義務を明確化する(第9条)
- 違法コンテンツを検知した場合は生成停止・伝送停止・削除等の措置を取る(第14条)
このうち、コンテンツを作って配信する立場でまず見るのはラベル表示です。中国向けにAI生成コンテンツを展開する場合、ラベル表示義務は特に確認すべき条項になります。
この章のまとめ
生成AI規制の中で、配信する側がまず確認するのはラベル表示です。自社が対象になるかどうかから確かめます。
08Baidu向けのLLMO対策は、Google向けと何が違うんですか?
大森部長前提は分かった。それで、実際に手を動かす部分は何が変わるのかね。
鈴木さん考え方は変わりません。変わるのは相手と、届いているかの確かめ方です。
Googleが機能しない以上、Baidu向けの構造化データとコンテンツ設計が起点になります。LLMO対策という言葉で語られる作業の中身は、AI検索に情報源として選ばれるための整えです。やること自体はGoogle向けと大きく変わりません。
変わるのは確かめ方です。中国国内からのアクセス環境は他国と異なるため、主要なクローラーが自社サイトに到達しているかを個別に確認する必要があります。クローラーの仕様や許可設定の書き方は、AIクローラーを扱った別記事で整理しています。
Baidu独自の品質基準やERNIEへの対応をさらに深掘りした内容は、Baidu公式ガイドを読み解いた別記事で解説しています。AIOという概念そのものの整理から入りたい方は、入門記事を先に読むほうが近道です。
この章のまとめ
Baidu向けのLLMO対策で変わるのは、相手と確かめ方です。Baidu向けの設計を起点に置き、クローラーの到達性を個別に確認します。
09中国向けのAI対策は、どこから手をつければいいですか?
若葉さんやることが多くて、順番が分からなくなってきました。
鈴木さん4つに絞れます。上から順に確認していけば、途中で前提が崩れないはずです。
中国市場でのAIO対応にあたり、日本企業が押さえるべき実務ポイントは次の4つです。
中国向けは、この順でやります
ICP備案の要否を確認する
境内サーバーでの運営や配信を計画するなら、現地法人の要否を含めて早期に確認します
Baidu独自のアルゴリズムを前提に対策する
Googleが機能しない以上、Baidu向けの構造化データとコンテンツ設計が起点です
海外AIクローラーの到達性を事前に確認する
主要なクローラーが自社サイトに到達しているかを個別に確かめます
生成AI規制のラベル表示義務を確認する
AI生成コンテンツを配信するなら、対象範囲を事前に確認します
AI検索エンジンごとの性格の違いを整理したい場合は、主要サービスを比較した別記事が参考になります。
この章のまとめ
中国向けのAI対策は、この4つで始められます。参入要件から入り、設計・到達確認・規制確認の順に進めます。
10中国のAI検索対策で、いま確認できていないことは何ですか?
大森部長最後に聞きたい。中国で「やったらこうなった」という他社の事例はあるのかね。
鈴木さんそこは正直にお伝えします。一次情報で確認できる公開事例は、見つかっていません。
本稿の執筆時点で、中国企業によるAIO対応の公開事例(AI検索での引用増加を数値で示した事例等)は、一次情報で確認できません。
海外のAIサービスの利用実態も同様です。ChatGPTやGeminiなど海外の主要AIサービスは、政府のインターネット管理により中国本土から通常アクセスできません(遮断対象)。これらのサービスが中国国内でどれくらい使われているかについて、信頼できる一次データは確認できていません。
代わりに確認できるのは、百度自身のAI統合の進捗と、規制当局が求める義務の内容です。
この章のまとめ
中国は、市場と規制の一次情報は確認できますが、他社の成果事例はまだ確認できません。判断は、自社での定点観測で補います。
11よくある質問
中国でSEO対策をする場合、Baiduだけを意識すれば十分ですか?
Baiduが中国検索市場の中心です。Statcounterの中国数値には測定上の偏りがあるため、実務ではBaidu(文心一言・AI検索統合)を第一優先とし、他エンジンは補助的な位置づけで検討してください。Baidu以外のエンジンを完全に無視するという意味ではなく、優先順位の話として整理します。
中国版のAI Overviewsのような機能はありますか?
百度は自社LLMの「ERNIE」を検索体験に統合しており、2026年第1四半期にはAI関連中核事業の売上が一般事業売上の52%を超えたと発表しています(出典: 百度公式)。AI機能を別サービスとして切り出すのではなく、検索そのものに組み込む形が取られています。
Statcounterの中国データは、そのまま社内資料に使えますか?
そのまま載せるのはおすすめしません。Bing過大表示という既知のデータ品質問題が指摘されており、2023年にはBingがBaiduを逆転する誤測定も記録されています。数値を引用する場合は、この偏りの説明を必ず添えてください。
生成AI規制は日本企業にも適用されますか?
中国国内で生成AIサービスを提供する事業者が対象です。適用範囲は事業形態によって異なるため、中国向けの事業を計画する際は専門家への確認をおすすめします。AI生成コンテンツを配信する場合は、ラベル表示義務の対象範囲を先に確認してください。
ICP備案は、日本法人だけで登録できますか?
原則としてできません。備案の主体には中国国内法人(現地子会社等)が求められ、境内に拠点のない外国企業が単独で登録することはできないとされています(出典: 阿里雲ヘルプセンター)。中国向けの計画では、ここを早い段階で確認してください。
12まとめ|中国向けに押さえる4つの論点
中国は、Googleが実質的に機能しない独自の検索エコシステムを持つ市場です。Statcounterの数値ではBaiduが47.44%ですが、この公開データにはBing過大表示という既知の偏りがあります。実務では、Baidu優位を前提に設計します。
AI検索の側では、百度がERNIEを検索体験そのものへ統合しています。そして中国向けには、コンテンツ設計より前に確認することがあります。ICP備案という参入要件と、生成AI規制の義務です。
もう一度、中国向けの4つ
ICP備案の要否を確認する
そもそも出せるのかどうかを、いちばん先に確かめます
Baidu独自のアルゴリズムを前提に対策する
入口はBaiduなので、設計の起点もBaiduに置きます
海外AIクローラーの到達性を事前に確認する
届いていなければ、書いた内容は選ばれません
生成AI規制のラベル表示義務を確認する
対象範囲を、配信の前に確かめます
AI検索では、こう聞かれています
中国でSEO対策をするとき、Baiduだけを意識すれば十分ですか?
「中国のAI検索対策は、なぜGoogle前提が通じないんですか?」の章と、よくある質問で答えています
中国版のAI Overviewsのような機能はありますか?
「BaiduのAI検索は、どこまでAIに寄っているんですか?」の章で、ERNIEの統合を図解にしています
中国の生成AI規制は、日本企業にも適用されますか?
「生成AI規制の中で、中国のAI検索対策として確認するのはどこですか?」の章で、義務の中身を整理しています
次に読むなら、この記事です