台湾は、Googleが8割超を占めながら、ポータル発のYahoo!が世界的に珍しい二桁シェアを保つ、独特な検索市場構造を持つ国です。台湾では、GoogleのAI Overviewsなど海外発のAI検索機能がすでに定着しています。一方で政府のデジタル政策は、台湾独自のAI検索開発ではなく、計算資源(算力)の内製化に軸足を置いています。

本記事は、Statcounterの実測データと台湾政府(国家科学及技術委員会・数位発展部)の公式発表にもとづき、台湾のAI検索対策で押さえるべき市場構造と政策動向を整理します。

01結論サマリー

台湾は、Googleが圧倒的優位に立ちながらも、世界的には稀な二桁シェアのYahoo!が踏みとどまる、他の東アジア市場とは一線を画す検索市場です。Statcounter調べでは2026年6月時点で、全プラットフォーム合算のシェアはGoogleが81.88%です。Yahoo!が10.51%、Bingが6.95%で続きます(出典: Statcounter)。デスクトップに限るとYahoo!13.23%・Bing12.83%と存在感が増すなど、集計単位によって数値は変わります(詳細は次章)。

GoogleのAI Overviewsは2024年10月に台湾で利用可能となり、2025年5月に繁体中文対応も完了し、すでに定着しています。一方、台湾企業によるAI検索対策の定量的な公開事例は、本稿執筆時点で一次情報で確認できていません。確認できるのは、政府による計算基盤整備の動きです。数位発展部(moda)は2026年4月16日、民間連携によるAI計算基盤整備「AI算力中心」BOO方式政策を公告しています(出典: moda公式)。

台湾では2026年1月14日、AI関連の包括法「人工智慧基本法」が公布と同時に施行されています(出典: 台湾法務部 全国法規資料庫)。日本企業は、Google中心の市場構造と同法の規制環境の両方を理解する必要があります。

02検索エンジン市場の実態(シェア実測)

Statcounterの実測データによると、台湾の検索エンジン市場は次のような構成になっています(2026年6月・全プラットフォーム合算)。

検索エンジンシェア
Google81.88%
Yahoo!10.51%
Bing6.95%
CocCoc0.28%
Yandex0.13%
DuckDuckGo0.10%

世界的にはGoogleが90%以上を占める市場が多い中、台湾は例外的な存在です。

引用されやすい定義文

Googleのシェアは8割台にとどまり、Yahoo!が二桁シェアを維持する数少ない市場です。

この数値は「全プラットフォーム合算」の値で、集計単位を分けると様相は変わります。デスクトップ限定ではGoogle73.45%・Yahoo!13.23%・Bing12.83%とほぼ並びます。モバイル限定ではGoogle91.25%・Yahoo!7.58%・Bing0.32%とGoogleが優位です(出典: いずれもStatcounter、2026年6月)。

台湾のYahoo!・Bingの存在感は主にデスクトップ利用層が支えていると考えられます。現地の代替指標は本稿執筆時点で確認できておらず、単一の計測方法(Statcounter)に依存した数値である点にご留意ください。

台湾の検索エンジン市場シェアの構成比(全プラットフォーム合算) Googleが81.88%を占める中心的な大部分で、Yahoo! 10.51%・Bing 6.95%・その他1.06%が続くドーナツ型の構成比図。出典はStatcounter(全プラットフォーム合算・2026年6月)。 SHARE 台湾の検索エンジン市場シェアの構成比(全プラットフォーム合算) 2026年6月 Google 81.88% Google 81.88% Yahoo! 10.51% Bing 6.95% その他 1.06% 出典: Statcounter(全プラットフォーム合算・2026年6月)
台湾の検索エンジン市場シェアの構成比(全プラットフォーム合算)

03AI検索の普及状況

ChatGPT・Perplexity・Gemini・Claude等のAI検索サービスは、世界的に利用が広がっています。ただし台湾国内での利用実態を示す一次データは、本稿執筆時点で確認できていません。

GoogleのAI Overviewsは2024年10月に台湾でも利用可能になり、2025年5月には繁体中文対応が完了しています。台湾のポータル(Yahoo!奇摩等)独自の本格的な生成AI検索機能は確認できていません。台湾のAI政策は、AI検索の「利用」実態把握より、後述する計算基盤整備が先行しています。

04現地の取り組み・実例

※本稿執筆時点で、台湾企業によるAIO対応の公開事例(AI検索での引用増加を数値で示した事例等)は一次情報で確認できません。この点は正直にお伝えします。

代わりに確認できるのは、政府によるAI計算基盤への投資です。数位発展部は2026年4月16日、「AI算力中心BOO案」を政策公告しました(出典: moda公式、申請期限2026年5月14日)。民間事業者が最低3億台湾元(土地を除く)を投資し、FP32演算で15ペタフロップス以上の算力センターを構築する枠組みです。参画事業者には、算力の一定割合を政府機関・学術研究機関・中小企業へ提供することが求められます。

数位発展部はまた、AI算力プールを通じて企業のAI開発を支援してきました。2025年12月末までに186社が266件以上のAIモデル・サービス開発を進めたと、2026年6月17日に数位発展部数位産業署が発表しています(出典: moda公式)。世界有数の半導体受託生産拠点である台湾は、AI検索の「独自開発・国産化」ではなく「計算基盤の内製化」に軸足を置く点が、他のアジア市場と異なる特徴です。

台湾のAI関連政策を巡る主な動きの時系列 2025年12月23日AI基本法案が立法院で可決→2026年1月14日人工智慧基本法公布・施行→2026年4月16日AI算力中心BOO案を政策公告→2026年6月17日数位発展部数位産業署がAI算力実績(186社・266件以上)を発表、の4点のタイムライン。 TIMELINE 台湾のAI関連政策を巡る主な動きの時系列 2025年12月23日 AI基本法案が立法院で可決 2026年1月14日 人工智慧基本法公布・施行 2026年4月16日 AI算力中心BOO案を政策公告 2026年6月17日 数位発展部数位産業署がAI算力実績 (186社・266件以上)を発表
台湾のAI関連政策を巡る主な動きの時系列

05規制・政策

台湾は2026年1月14日、AI関連の包括法「人工智慧基本法」を公布し、同日付で施行しました(出典: 台湾法務部 全国法規資料庫)。同法は2025年12月23日に立法院で可決されています(出典: 中央通訊社)。人工智慧基本法とは、人間中心のAI研究開発とAI産業の発展を目的に、安全な活用環境の構築を定める台湾の基本法です。

全20条から構成される同法の中央主管機関は国家科学及技術委員会(NSTC)、地方主管機関は直轄市・県(市)政府です。持続可能性・人間の自主性・プライバシー保護・セキュリティなど7つの基本原則を掲げ、今後リスク分類の枠組みを整備する方針です(出典: 台湾法務部 全国法規資料庫)。

なお、数位発展部(moda)は人工智慧基本法の主管機関ではなく、AI計算基盤の整備やAI産業振興を担う執行機関です。台湾向けにAI関連の情報発信を行う場合、両機関の役割の違いを踏まえて確認先を判断してください。

06日本企業への示唆

台湾市場でのAIO対応にあたり、日本企業が押さえるべき実務ポイントは次の4点です。

  1. Google中心の技術対策を基本としつつ、デスクトップ経由のYahoo!・Bingの存在感を軽視しない。デスクトップではYahoo!13.23%・Bing12.83%と一定の存在感があります(Statcounter調べ)。BtoB向けコンテンツはGoogle対策を主軸に、ポータル面での見え方も点検してください。
  2. 人工智慧基本法の適用範囲を事前確認する。台湾向けにAI生成コンテンツを配信する事業者は、2026年1月14日施行の同法の対象範囲を確認してください。信頼性シグナルの設計思想は、別記事『生成AI時代のE-E-A-T再定義|4要素の意味と実装ポイント』も参考になります。
  3. 台湾向けはGoogle向け構造化データ・llms.txt整備を最優先し、デスクトップ比率の高いYahoo!奇摩・Bing向けの基本メタデータ最適化を次点で着手してください。海外の主要AI検索エンジンとの機能差は、別記事『AI検索エンジンの種類と使い分けまとめ|主要7サービス比較表』を参照してください。
  4. moda公式サイト(moda.gov.tw)のプレスリリースを四半期に一度確認し、算力供給・補助政策の変化を把握してください。AI算力中心BOO案のような国家インフラ投資は、中期的に台湾のAI検索環境を変える可能性があります。

AIOという概念自体の基礎整理は、別記事『AIOとは何か?SEOとの違い・共通点から始め方まで徹底解説』を先に確認することをおすすめします。東アジア地域の比較では、別記事『韓国AI検索の二極構造|NaverとGoogleが拮抗する市場』が参考になります。百度が主導する中国市場は、別記事『中国AI検索の参入設計|Baidu・ICP備案・生成AI規制』で整理しています。

07FAQ

Q. 台湾でSEO対策をする場合、Googleだけで十分ですか?

全プラットフォーム合算ではGoogleが81.88%を占めるため、基本方針としてはGoogle対策が中心で問題ありません。ただしデスクトップ限定ではYahoo!13.23%・Bing12.83%とGoogle以外の合計が2割を超えます(出典: Statcounter)。法人・年齢層が高い読者層を想定する場合は、ポータル面の見え方も確認してください。

Q. 台湾版のAI Overviewsのような機能はありますか?

あります。GoogleのAI Overviewsが2024年10月から台湾で利用可能で、2025年5月には繁体中文対応も完了しています。台湾のポータル(Yahoo!奇摩等)独自の生成AI検索機能は確認できていません。政府は台湾独自のAI検索開発ではなく、計算基盤(算力)の整備を先行させている段階です。

Q. 人工智慧基本法は日本企業にも適用されますか?

台湾国内でAI関連サービスを提供する事業者が主な対象です。適用範囲の詳細は事業形態によって異なるため、台湾向け事業を計画する際は専門家への確認をおすすめします。

08この分野を体系的に学ぶ

この記事は国・地域プロファイル記事です。海外AIO動向を基礎から体系的に学びたい方は、AI検索最適化講座「事例編: ケーススタディ徹底分析(VI-C)」をご覧ください。