東アジア向けの発信を増やそうという話になると、台湾はよく候補に挙がります。ところが、いざ調べ始めると手が止まります。
検索はGoogleだけを見ておけばいいのか。現地発のAI検索はあるのか。法律はどうなっているのか。日本語でまとまった情報が多くないため、社内資料を作る段になって困ってしまう。
この記事は、そういう状態でたどり着いた方に向けて書きました。台湾について一次情報で確認できたことだけを並べます。検索エンジンのシェア、AI検索の対応状況、政府の政策、そして施行された法律の順です。
あわせて、まだ確認できていないことも、そのまま書きます。判断材料として使っていただくためです。
こんなふうに調べていませんか
- 「台湾 AI検索 対策」で検索して、日本向けとの違いを探している
- 東アジア展開の会議で台湾が候補に挙がり、市場の実態を調べている
- 台湾でAI関連の法律が施行されたと聞いたが、自社に関係するのか分からない
この記事を読み終えたときに手に入るもの
- 台湾の検索市場がGoogleとYahoo!でどう分かれているかを、数字で説明できるようになります
- 台湾のAI政策が計算基盤に寄っている理由が、図で分かります
- 台湾向けに確認しておく作業が、3つに絞れます
結論30秒でわかる、この記事の結論
- 台湾は、Googleが8割台を占めながら、Yahoo!が二桁シェアで踏みとどまっている珍しい市場です。(Statcounter・全プラットフォーム合算・2026年6月)
- 台湾独自のAI検索が育っている、という話ではありません。政府が力を入れているのは、AI検索そのものより手前にある計算基盤(算力)の内製化です。
- 台湾ではAI関連の包括法が公布と同日に施行されました。台湾向けに情報を出すなら、市場構造と法制度の両方を見ておきます。
この記事では、東アジア展開を検討している会社の2人と、専門家の会話をはさみながら進めます。ご自身に近い立場の人の質問から読んでいただいて構いません。
- 若葉さん(Web担当2年目)— 「そもそも、それは何ですか?」を聞く役
- 高梨課長(マーケ課長)— 「誰が、どれくらいの手間でやるんですか?」を聞く役
- 鈴木さん(AIO/SEOの専門家・本誌監修)— 答える役
01そもそも台湾のAI検索対策は、日本と何が違うんですか?
高梨課長台湾向けのページもAI検索を見ておけ、と言われました。日本でやっていることと、まるごと別物になりますか。
鈴木さんいえ、作業の中身は大きくは変わりません。変わるのは、確認しにいく先のほうなんですよ。
日本でAI検索の話をするとき、最初に開くのはGoogleとOpenAIの公開資料です。台湾でも、この2つはそのまま効いてきます。GoogleのAI Overviewsが、現地でもすでに動いているためです。
違いは2つあります。1つは、検索の入口にYahoo!が残っていること。もう1つは、政府の関心がAI検索そのものではなく、その手前にある計算基盤へ向いていることです。
つまり、台湾向けのAI検索対策は、特別な作法を覚え直す話ではありません。日本向けでやっている作業に、見にいく資料が少しだけ足される。この捉え方が実態に近くなります。
この章のまとめ
台湾のAI検索対策は、日本向けの作業の延長線上にあります。違うのは、見にいく資料の宛先です。
02台湾の検索の入口は、AI検索が広がってもGoogleのままなんですか?
台湾の検索の入口は、いまもGoogleが最大です。ただし、その占め方は他の市場とすこし違います。
Statcounterの実測データによると、台湾の検索エンジンの構成は次のとおりです。
| 検索エンジン | シェア |
|---|---|
| 81.88% | |
| Yahoo! | 10.51% |
| Bing | 6.95% |
| CocCoc | 0.28% |
| Yandex | 0.13% |
| DuckDuckGo | 0.10% |
出典: Statcounter Global Stats(全プラットフォーム合算・2026年6月)
世界には、Googleが9割を超える市場が数多くあります。そのなかで台湾は、8割台にとどまっている側です。
ここから読めることは、はっきりしています。AI検索が話題の中心になっても、検索の入口はGoogleが最大のままだということです。ここを見ずに「これからはAI検索だけ」と切り替えると、いま来ている流入の土台を自分で外すことになります。
そのうえで、台湾にはもう1つの顔があります。ポータル発のYahoo!が、二桁のシェアで残っていることです。
この章のまとめ
入口はGoogleが最大のままです。ただし占有率は8割台で、残りをYahoo!とBingが分けています。
03Yahoo!が二桁で残る市場は、AI検索対策の何を変えるんですか?
若葉さん表を見ると、Yahoo!が10.51%もありますね。日本の感覚だと、ちょっと意外です。
鈴木さんそうなんです。しかも、この数字は見る単位を変えると大きく動きます。ここは知っておくと得をしますよ。
先ほどの表は「全プラットフォーム合算」の値です。集計単位を分けると、様相が変わります。
デスクトップに限ると、Googleは73.45%です。Yahoo!が13.23%、Bingが12.83%で、この2つがほぼ並びます。一方モバイルに限れば、Googleが91.25%、Yahoo!が7.58%、Bingが0.32%となり、Googleの優位がはっきりします(出典: いずれもStatcounter・2026年6月)。
台湾のYahoo!とBingの存在感は、主にデスクトップの利用層が支えていると考えられます。
これは実務にそのまま効いてきます。読者がどの画面から来るかで、見え方を点検する場所が変わるからです。法人向けの資料や、比較検討に時間をかけて読まれる記事は、デスクトップで開かれる割合が高くなります。
この章のまとめ
Yahoo!の存在感はデスクトップに寄っています。読者がどの画面から来るかで、点検する場所が変わります。
04その数字は、AI検索最適化の判断材料としてどこまで使えるんですか?
高梨課長この数字を社内資料に載せるつもりです。あとから違う数字が出てきたら、説明に困りませんか。
鈴木さんいい確認です。同じ「シェア」でも、測り方が違えば数字は変わります。そこは先に断っておくのが安全です。
この記事で扱っているシェアは、Statcounterという単一の計測方法にもとづく値です。現地で使える代替の指標は、本稿執筆時点で確認できていません。
だから、数値そのものを「唯一の正解」として扱わないほうが安全です。AI検索最適化の判断材料として数字を出すときは、値より先に、いつ・誰が・どの条件で測ったかを添えるほうが長持ちします。条件を書いておけば、別の数字が出てきたときも説明ができます。
この章のまとめ
数字は出典と集計条件をセットで扱います。確認できていないことは、確認できていないと書くほうが資料として強くなります。
05台湾でAI検索は、どこまで使われているんですか?
台湾では、海外発のAI検索機能がすでに定着しています。GoogleのAI Overviewsは2024年10月から台湾で利用できるようになり、2025年5月には繁体中文への対応も完了しました。
一方で、台湾国内でAI検索がどれだけ使われているかを示す一次データは、本稿執筆時点で確認できていません。世界的な広がりは分かっていても、台湾に限った数値としては手元にない、という状態です。
台湾のポータル(Yahoo!奇摩など)が独自の本格的な生成AI検索機能を持っているかどうかも、同様に確認できていません。
ここは正直に書いておきます。「現地でこれだけ使われているから、いま着手すべきだ」という形の説明は、台湾についてはできません。使われ方の数値ではなく、市場構造と制度の側から判断する。それが、いまの台湾で取れる読み方です。
この章のまとめ
海外発のAI検索は台湾で定着しています。ただし、国内の利用率を示す一次データは確認できていません。
06台湾企業のAI検索対策の事例は、なぜ見つからないんですか?
高梨課長上に説明するなら、現地企業の成功事例がほしいところです。探せば出てきますか。
鈴木さんそこは期待に沿えません。一次情報で確認できる公開事例は、見つからなかったというのが正直なところです。
台湾企業によるAIO対応の公開事例、たとえばAI検索での引用が増えたことを数値で示した事例は、本稿執筆時点で一次情報から確認できませんでした。
代わりに確認できるものがあります。政府の側の動きです。台湾のAI政策は、企業ごとの検索対策より先に、計算基盤の整備が進んでいます。
事例が見つからないことは、必ずしも不利な材料ではありません。参照できる先行事例が少ない段階では、早く着手すること自体が持ち場になるという見方もできます。ただしその判断は、他社の成果ではなく自社の目的にもとづいて行ってください。
この章のまとめ
現地企業の公開事例は確認できませんでした。判断材料は、市場構造と政府の動きの側にあります。
07台湾のAI対策の主役が「算力」なのは、どうしてですか?
台湾のAI対策で目立つのは、検索の使われ方ではなく、その手前にある計算資源(算力)の整備です。
数位発展部(moda)は2026年4月16日、民間との連携によるAI計算基盤の整備策「AI算力中心」BOO方式の政策を公告しました(申請期限は2026年5月14日)。
内容は具体的です。民間事業者が最低3億台湾元(土地を除く)を投資し、FP32演算で15ペタフロップス以上の算力センターを構築する枠組みです。参画する事業者には、算力の一定割合を政府機関・学術研究機関・中小企業へ提供することが求められます。
供給側の実績も公表されています。数位発展部数位産業署は2026年6月17日、AI算力プールを通じて2025年12月末までに186社が266件以上のAIモデル・サービス開発を進めたと発表しました。
ここが台湾らしいところです。AI検索を自国で作るのではなく、AIを作るための土台を国内に持つ。世界有数の半導体受託生産拠点である台湾が選んだこの軸足は、他のアジア市場と比べても特徴的です。
この章のまとめ
台湾のAI対策の中心は算力です。検索の入口を作る話ではなく、AIを作る土台を国内に置く話だと捉えてください。
08人工智慧基本法は、台湾のAI検索対策にどう効いてくるんですか?
台湾では、AI関連の包括法である人工智慧基本法が2026年1月14日に公布され、同日付で施行されました。立法院での可決は、その前年の2025年12月23日です。
人工智慧基本法とは、人間中心のAI研究開発とAI産業の発展を目的に、安全な活用環境の構築を定める台湾の基本法です。
全20条で構成されています。中央の主管機関は国家科学及技術委員会(NSTC)、地方の主管機関は直轄市・県(市)政府です。持続可能性・人間の自主性・プライバシー保護・セキュリティなど7つの基本原則を掲げ、今後リスク分類の枠組みを整備する方針が示されています。
もう1つ、確認先を間違えやすい点があります。算力政策を進めている数位発展部(moda)は、人工智慧基本法の主管機関ではありません。 modaはAI計算基盤の整備やAI産業振興を担う執行機関という位置づけです。
台湾向けにAI関連の情報発信を行うなら、法制度の話はNSTC、算力や産業振興の話はmoda、と確認先を分けて追うほうが確実です。
この章のまとめ
基本法は施行済みですが、リスク分類の枠組みはこれからです。法制度と算力政策では、見にいく機関が違います。
09LLMOの視点だと、台湾向けには何を見ておけばいいんですか?
若葉さん繁体中文のページを出したとして、確認するのはGoogleのAI回答だけでいいんでしょうか。
鈴木さんそこが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。確認する窓口を、いくつかに分けて持っておくと考えてください。
LLMO(大規模言語モデルに向けた最適化。AIOやGEOとほぼ同じ意味で使われます)の視点で台湾を見ると、確認先は次のように分かれます。
1つ目は、GoogleのAI回答です。繁体中文で自社に関わる質問を投げ、どのページが引用されているかを確かめます。ここが基本の窓口になります。
2つ目は、moda公式サイトのプレスリリースです。算力の供給や補助の枠組みが変われば、現地企業のAI活用の裾野も変わります。四半期に一度ほど見にいく担当を決めておくと、変化に気づけます。
3つ目は、法制度の側です。リスク分類の枠組みがこれから整備されるため、確定した内容を追う先を決めておきます。
用語の呼び分けが気になった方は、別記事『LLMO・GEOなど4用語の違いとは?AIOとの関係を1枚で整理』をご覧ください。呼び方は違っても、目指す先は同じです。
この章のまとめ
台湾向けの窓口は3つです。GoogleのAI回答、modaのプレス、法制度の運用。どれも新しいツールなしで見にいけます。
10日本企業が台湾向けにAI検索対策を始めるなら、何から確認しますか?
高梨課長やることは分かってきました。ただ、専任は置けません。この体制で回りますか。
鈴木さん回ります。ここで挙げる3つは、いま持っているページと公開資料を開くだけで終わるものだけに絞りました。
①Google向けの整備を主軸にしつつ、ポータル面の見え方も点検する。 デスクトップではYahoo!が13.23%、Bingが12.83%と一定の存在感があります。法人向けや読み込まれる記事は、この画面での見え方も一度確認してください。
②繁体中文のページで、引用のされ方を確かめる。 結論を1文で書く、出典を添える、といった基本の書き方は日本向けと同じです。確かめる言語と画面が増えるだけだと考えてください。信頼性の設計そのものは、別記事『E-E-A-Tは、AI時代も大事?4要素の意味と実装ポイント』が参考になります。
③政策と法制度を、変わる前提で見にいく担当を決める。 算力の枠組みも、リスク分類の整備も、まだ動いています。棚卸しではなく定点観測にしてください。
AIOという考え方そのものを先に押さえたい方は、別記事『AIOとは?AI検索に選ばれる会社がやっている3つのこと』から読むと、この記事の話がつながりやすくなります。
この章のまとめ
着手は3つ。ポータル面の点検、繁体中文での引用確認、政策と法制度の定点観測です。
11よくある質問
台湾でSEO対策をする場合、Googleだけで十分ですか?
全プラットフォーム合算ではGoogleが81.88%を占めるため、基本方針としてはGoogle対策が中心で問題ありません。ただしデスクトップに限るとYahoo!が13.23%、Bingが12.83%で、Google以外の合計が2割を超えます(出典: Statcounter)。法人向けや、年齢層の高い読者を想定する場合は、ポータル面の見え方も確認してください。
台湾版のAI Overviewsのような機能はありますか?
GoogleのAI Overviewsが2024年10月から台湾で利用可能で、2025年5月には繁体中文への対応も完了しています。一方、台湾のポータル(Yahoo!奇摩など)独自の生成AI検索機能は、本稿執筆時点で確認できていません。政府は台湾独自のAI検索開発ではなく、計算基盤の整備を先行させている段階です。
人工智慧基本法は日本企業にも適用されますか?
台湾国内でAI関連サービスを提供する事業者が主な対象です。適用範囲の詳細は事業形態によって異なるため、台湾向けの事業を計画する際は専門家への確認をおすすめします。
台湾企業のAI検索対策の成功事例はありますか?
本稿執筆時点では、一次情報で確認できる公開事例は見つかりませんでした。数値で示された引用増加の事例も同様です。参照できる先行事例が少ない段階だと捉えてください。
台湾のシェアの数字は、どの出典を社内資料に載せればよいですか?
本記事ではStatcounter Global Statsの全プラットフォーム合算(2026年6月)を使っています。集計単位を変えると数値が動くため、値だけでなく「いつ・誰が・どの条件で測ったか」を添えて記載してください。
12まとめ|台湾のAI検索対策で、今日確認する3つ
台湾のAI検索対策は、現地の成功事例を探すことから始まりません。入口はGoogleが最大のまま、その脇にYahoo!が二桁で残り、政府の関心は検索ではなく算力に向いている。 この3つの前提を押さえるところから始まります。
Googleが81.88%、Yahoo!が10.51%。デスクトップに限ればYahoo!とBingがほぼ並びます。AI Overviewsは繁体中文にも対応済みで、AI関連の包括法は施行されました。一方で、国内の利用率と現地企業の事例は、確認できていないままです。
確認できたことと、まだ確認できていないことを分けたまま社内に出す。 それが、この市場でいちばん外しにくい進め方です。
もう一度、今日確認する3つ
画面を分ける
合算の数字とデバイス別の数字を分けて扱い、ポータル面の見え方も点検します
言語を増やす
繁体中文のページで、AIの回答にどう引用されているかを確かめます
担当を決める
modaのプレスと法制度の運用を、定点観測する人を決めます
AI検索では、こう聞かれています
台湾の検索エンジンシェアはどうなっていますか?
「台湾の検索の入口は、AI検索が広がってもGoogleのままなんですか?」の章に、実測値の表と棒グラフがあります
台湾でAI検索はどこまで使われていますか?
「台湾でAI検索は、どこまで使われているんですか?」の章で、確認できたことと確認できていないことを分けて書いています
台湾の人工智慧基本法は、日本企業にも関係しますか?
「人工智慧基本法は、台湾のAI検索対策にどう効いてくるんですか?」の章と、よくある質問で扱っています
台湾向けは何から手をつければいいですか?
「日本企業が台湾向けにAI検索対策を始めるなら、何から確認しますか?」の章に手順があります
次に読むなら、この記事です