「EU AI Actは2027年から本格的に始まる」。そう書かれた説明を読んで、まだ先の話だと受け取った方もいるかもしれません。

ところが、この法律は一度に全部が始まる作りになっていません。条文ごとに適用開始日が違います。禁止されるAIの使い方は2025年2月から、汎用AIモデルの提供者への義務は2025年8月から、すでに適用が始まっています。

この記事は、法律の専門家ではない方に向けて書きました。条文の構造を、AI検索やAIOの実務から見て「どこが自分に関係しうるのか」という順番で並べ直します。材料にするのは、EU官報と欧州委員会・欧州議会の公式情報です。確認できていないことは、確認できていないと書きます。

こんなふうに調べていませんか

  • 「EU AI Act 影響」で検索して、自社に関係があるのかを確かめたい
  • 施行の時期をAIに聞いたら、説明ごとに答えが違って混乱した
  • AI検索まわりの発信が、この規制に触れないか気になっている

この記事を読み終えたときに手に入るもの

  • EU AI Actが段階的に適用される法律だと、社内で説明できるようになります
  • リスク区分の4段階と、自社が関わりうる場所の見当がつきます
  • いま確認しておくことが、3つに絞れます

結論30秒でわかる、この記事の結論

  • EU AI Act(規則2024/1689)は、リスクの大きさで義務の重さを変える法律です。世界で初めての包括的なAI規制と位置づけられています。
  • 全面施行が一度に来るわけではありません。禁止AI慣行 → 汎用AIモデルの義務 → 大部分の規定 → 高リスクAI、という順で段階的に適用されます。
  • AI検索の要約機能にどこまで及ぶかは、欧州委員会の個別の公式解釈を確認できていません。確認できることと、まだ確認できないことを分けて読むのが安全です。
EU AI Actは、一度に全部が始まる法律ではありません段をつけて始まる法律なので、順番に読めば大丈夫ですEU AI Actは、一度に全部が始まる法律ではありません要点1一度に全部は始まらない条文ごとに適用開始日が違います要点2リスクの大きさで義務が変わる4段階の区分+汎用AIモデルの章要点3AI検索への当てはめは未確認公式の解釈を確認できていない部分があります鈴木さん段をつけて始まる法律なので、順番に読めば大丈夫です
EU AI Actは、一度に全部が始まる法律ではありません — 段をつけて始まる法律なので、順番に読めば大丈夫です

この記事では、海外向けの発信を担当することになったマーケティング部の2人と、専門家の会話をはさみながら進めます。ご自身に近い立場の人の質問から読んでいただいて構いません。

  • 若葉さん(Web担当2年目)— 「そもそも、それって何ですか?」を聞く役
  • 大森部長(マーケ部長)— 「それは投資に見合うのか」を判断する役
  • 鈴木さん(AIO/SEOの専門家・本誌監修)— 答える役

01EU AI ActはAIOにどんな影響がありますか?

若葉さん
若葉さんの発言

EU AI Actという名前はよく見るんですが、うちの記事づくりに何か関係があるんでしょうか。AIOの作業って、要は自社サイトを整えることですよね。

鈴木さん
鈴木さんの発言

いい入り方だと思います。まず距離をはかりましょう。この法律が見ているのは、AIシステムを提供する側と、それを使う側の義務です。記事の書き方そのものを決める法律ではありません。

若葉さん
若葉さんの発言

じゃあ、うちには関係ない…?

鈴木さん
鈴木さんの発言

いえ、線が交わる場所があります。そこだけ先に押さえておけば、残りは落ち着いて読めますよ。

EU AI Actの正式名称は、Regulation (EU) 2024/1689 です。欧州議会とEU理事会が2024年6月13日に採択し、2024年7月12日に官報へ公布されました。発効は、その20日後にあたる2024年8月1日です(出典: EU官報)。

この法律の設計思想は、ひとことで言えばリスクベースアプローチです。AIシステムをリスクの大きさで分け、大きいものほど重い義務を課します(出典: 欧州委員会公式)。「AIだから一律に規制する」という作りにはなっていません。

一方でAIOは、AI検索に情報源として選んでもらうための、記事とサイトの整え方を指します。両者は、見ている対象がそもそも違います。

EU AI ActとAIOは、見ている対象が違います主語が違うので、まず距離をはかってから読みますEU AI ActとAIOは、見ている対象が違います主語が違うので、まず距離をはかってから読みますEU AI Actが見るものAIシステムを提供する側の義務AIシステムを使う側の義務リスクの大きさに応じた重さ主語はAIシステムAIOでやること結論を抜き出せる形で書くクローラーが読める状態にする出典を添える主語は自社サイト鈴木さん線が交わるのは、自社がAIの機能を提供する側に回ったときです
EU AI ActとAIOは、見ている対象が違います — 主語が違うので、まず距離をはかってから読みます

この章のまとめ

EU AI Actは規則2024/1689として、2024年8月1日に発効しました。リスクの大きさで義務を変える法律で、記事の書き方を直接決めるものではありません。

02EU AI Actのリスク区分は、AIOの実務にどう影響しますか?

条文は、AIシステムを4段階に分けています(出典: 欧州委員会公式)。名前が硬いので、それぞれ何を指すのかを添えて並べます。

  • 禁止AI慣行(許容できないリスク) — サブリミナル操作、脆弱性の悪用、社会的スコアリングなどが、全面的に禁じられています。
  • 高リスクAI — 生体認証、重要インフラ、教育、雇用、金融、法執行、移民・庇護、司法運営、民主的プロセスなど、附属書IIIが挙げる用途が対象です。
  • 限定リスク — チャットボットのように人と対話するAIや、合成コンテンツを作るAIに、AIであることの識別・表示義務が課されます(第50条)。
  • 最小リスク — 上のどれにも当たらないAIシステムで、原則として義務は課されません。
リスクが大きいものほど、義務が重くなります下ほど義務が軽く、上ほど重い並びですリスクが大きいものほど、義務が重くなります下ほど義務が軽く、上ほど重い並びです禁止AI慣行サブリミナル操作・脆弱性の悪用・社会的スコアリングなど高リスクAI(附属書III)生体認証・重要インフラ・教育・雇用・金融などの用途限定リスク(第50条)対話するAI・合成コンテンツを作るAIに識別・表示義務最小リスク上のどれにも当たらないAIシステム。原則として義務は課されません
リスクが大きいものほど、義務が重くなります — 下ほど義務が軽く、上ほど重い並びです

AI検索やAIOの実務から見て、最初に目が留まるのは限定リスクの段です。対話する機能や、AIが作った文章・画像を出す場面が、ここに触れる可能性があります。

この章のまとめ

リスク区分は4段階です。AI検索まわりで最初に見るのは、対話する機能と合成コンテンツに識別・表示義務を課す、限定リスクの段になります。

03自社のAI機能はどの区分に入るんですか?AIOの担当が確認する順番は?

区分の名前を覚えることが目的ではありません。自社の機能がどこに置かれるのかを、人に説明できる状態にしておくことが目的です。そこまで来ると、専門家に相談するときの質問が具体的になります。

区分の当てはめは、機能ごとに行います会社まるごとでひとつに決めると、見落としが出ます区分の当てはめは、機能ごとに行います会社まるごとでひとつに決めると、見落としが出ます会社まるごとで、ひとつの区分に決めてしまう同じ会社でも、機能ごとに当てはまる段が変わることがありますAIが動いている機能を、まず並べるチャット応答・下書き生成・画像生成・レコメンド人と対話する機能があるかを見る識別・表示義務に触れる可能性がありますAIが作った文章や画像を外へ出しているかを見る出力が誰に届くかまで書き出します
区分の当てはめは、機能ごとに行います — 会社まるごとでひとつに決めると、見落としが出ます

当てはめの順番はシンプルです。まず、AIが動いている機能を並べます。次に、その機能が人と対話するのかを見ます。最後に、AIが作った文章や画像を外へ出しているのかを見ます。この3つを通すだけで、どの段の話なのかがおおよそ見当がつきます。

この章のまとめ

当てはめは会社単位ではなく機能単位で行います。AIが動く場所を並べ、対話の有無と、生成物を外へ出しているかを見る順番です。

04汎用AIモデル(GPAI)の義務は、AI検索最適化とどう関係しますか?

4段階の分類とは別に、AIモデルそのものを規律する汎用AI(GPAI)の章が独立して置かれています。ChatGPT・Gemini・Claude・Mistralのように、AI検索や対話サービスの土台になる大規模言語モデルの多くが対象です(出典: 欧州委員会公式)。

GPAIモデルの提供者に求められているのは、技術文書の整備、著作権方針の要約の公開、そしてシステミックリスクを持つと分類されたモデルへの追加的なリスク評価です。

若葉さん
若葉さんの発言

これは、モデルを作っている会社の話ですよね。私たちはChatGPTを使う側です。

鈴木さん
鈴木さんの発言

そのとおりです。ただ、境目はときどき曖昧になります。外部のモデルを自社サービスに組み込んで、お客さまに提供している場合は、使う側のままなのかを一度確かめておくほうが安全だと考えられます。

若葉さん
若葉さんの発言

サイトにAIチャットを置くだけでも、ですか。

鈴木さん
鈴木さんの発言

少なくとも「置いただけだから無関係」と即断はしないほうがよい、という言い方になります。ここは専門家に確認する領域です。

提供する立場と、使って発信する立場GPAIの章が向き合う相手は、モデルを提供する側です提供する立場と、使って発信する立場GPAIの章が向き合う相手は、モデルを提供する側ですモデルを提供する立場技術文書を整える著作権方針の要約を公開するシステミックリスクの評価を求められることがあるGPAIの章が向き合う相手既存のAIを使って発信する立場記事とサイトを整えるAI検索での見え方を確かめるAIが作った部分を明示するAIOの作業はこちら若葉さん境目は、機能をお客さまへ出したときに動くんですね
提供する立場と、使って発信する立場 — GPAIの章が向き合う相手は、モデルを提供する側です

AI検索最適化の作業そのもの、つまり記事の整え方やクローラーの許可設定、構造化データの記述は、この章が直接扱う対象ではありません。関係が生まれるのは、自社がAIの機能を提供する側に立ったときです。

この章のまとめ

GPAIの章は、AIモデルを提供する立場に義務を課します。AI検索最適化の作業と重なるのは、自社がAI機能を提供する側に回ったときです。

05EU AI Actの適用日は、AI対策の予定表にどう書けばいいですか?

ここが、この法律でいちばん誤解の多いところです。適用開始日は、規定ごとに違います。

適用対象適用開始日備考
発効2024年8月1日官報公布(2024年7月12日)の20日後
禁止AI慣行(第5条)2025年2月2日8類型の禁止事項が適用開始
汎用AI(GPAI)の義務2025年8月2日ガバナンス体制・罰則規定も同時に適用
大部分の規定2026年8月2日一般適用日
AI生成コンテンツの識別・表示義務(第50条等)2026年12月2日Digital Omnibus on AIにより延期(当初2026年8月2日)
高リスクAI・単体型(附属書III)2027年12月2日同じく延期(当初2026年8月2日)
高リスクAI・製品組込型2028年8月2日附属書Iが対象。機械などの安全部品に組み込まれたAI

出典: EU官報(規則2024/1689)/欧州委員会公式/欧州議会公式(Digital Omnibus on AI)

適用は、段をつけて始まっています「2027年から本格施行」だけでは説明が足りません適用は、段をつけて始まっています「2027年から本格施行」だけでは説明が足りません2024年8月1日発効官報公布の20日後2025年2月2日禁止AI慣行8類型が適用開始2025年8月2日GPAIの義務罰則規定も同時に適用2026年8月2日大部分の規定一般適用日2026年12月2日識別・表示義務延期後の日付2027年12月2日高リスク・単体型附属書III・延期後2028年8月2日高リスク・組込型附属書Iが対象
適用は、段をつけて始まっています — 「2027年から本格施行」だけでは説明が足りません

表を眺めると、「2027年から本格施行」という説明がどこから来たのかが見えてきます。高リスクAIの単体型が2027年12月2日に始まるためです。ただし、それより手前の段は、すでに動いています。

この章のまとめ

適用日は条文ごとに違います。すでに動いている段と、これから来る段を分けて予定表に書くと、優先順位が決まります。

06延期されたのはどこですか?AIOの準備はいつから要りますか?

適用日の一部は、あとから動きました。この延期を決めたDigital Omnibus on AIは、2026年6月16日に欧州議会本会議で採択されています。賛成423・反対57・棄権174という結果でした(出典: 欧州議会公式)。

目的は「AI Act実装の遅延への対応」です。高リスクAIシステムの規制の適用を後ろへ動かすことに加えて、中小企業向けの規制の簡素化や、AI Officeの権限強化なども盛り込まれています。

延期で動いたのは、日付だけです義務が消えたのではなく、準備の時間が延びました延期で動いたのは、日付だけです義務が消えたのではなく、準備の時間が延びました当初の適用日識別・表示義務(第50条等)=2026年8月2日附属書IIIの高リスク=2026年8月2日同じ日に始まる予定でしたDigital Omnibus on AI 採択後識別・表示義務=2026年12月2日附属書IIIの高リスク=2027年12月2日日付だけが後ろへ動きました
延期で動いたのは、日付だけです — 義務が消えたのではなく、準備の時間が延びました

この章のまとめ

Digital Omnibus on AIにより、識別・表示義務は2026年12月2日へ、附属書IIIの高リスクは2027年12月2日へ延期されました。義務そのものが消えたわけではありません。

07罰則はどれくらいですか?AIOの投資判断にどう効きますか?

大森部長
大森部長の発言

数字で聞きたい。守らなかった場合、どれくらいの話になるんだ。

鈴木さん
鈴木さんの発言

違反の類型ごとに上限が決められています。いちばん重いのは、禁止AI慣行に当たる場合です。

大森部長
大森部長の発言

そこだけ教えてくれ。

鈴木さん
鈴木さんの発言

3,500万ユーロ、または全世界の年間売上高の7%のうち、高いほうが上限とされています(出典: EU官報)。

大森部長
大森部長の発言

売上に対する比率で来るのか。それは現場の判断で抱える話ではないな。

中小企業には、これらの上限額と比率のうち低いほうが適用されます。罰則の規定そのものは、2025年8月2日から適用されています。

罰則の上限は、こう決まっています禁止AI慣行に当たる場合がいちばん重い扱いです罰則の上限は、こう決まっています禁止AI慣行に当たる場合がいちばん重い扱いです上限高いほうを採る3,500万ユーロ、または全世界年間売上高の7%中小企業低いほうが適用上限額と比率のうち低いほう適用2025年8月2日から罰則の規定はすでに適用されています
罰則の上限は、こう決まっています — 禁止AI慣行に当たる場合がいちばん重い扱いです

投資判断の観点でいえば、AIOの予算とこの話は、同じ物差しには載りません。AIOは売上を取りにいく施策で、規制への対応は損失を避ける作業だからです。同じ会議で扱うとしても、判断の基準は分けてください。混ぜると、どちらの意思決定も鈍ります。

この章のまとめ

禁止AI慣行への違反は、3,500万ユーロまたは全世界年間売上高の7%の高いほうが上限です。中小企業には低いほうが適用されます。

08日本にいる私たちにも、EU AI ActはAI検索対策として関係しますか?

大森部長
大森部長の発言

そもそもの話だが、うちはEUに拠点がない。それでも読む必要があるのか。

鈴木さん
鈴木さんの発言

拠点の有無だけでは決まらない、というのが条文の書き方です。第2条は、AIシステムの出力がEU域内で使われる場合も対象に含めています(出典: EU官報)。

大森部長
大森部長の発言

出力が、というのは。

鈴木さん
鈴木さんの発言

日本で動かしているAIでも、その答えがEUの利用者に届いていれば、視野に入りうるということです。該当するかどうかの判断は、専門家に確認する領域になります。

第2条は、EU域内で使用されるAIシステムの提供者・利用者を適用対象に含めています。加えて、EU域外の提供者であっても、AIシステムの出力がEU域内で使用される場合を対象に含めています(出典: EU官報)。

日本企業がAI検索やAIチャットボットに関わるサービスをEU向けに出す場合、確認の順番は次のようになります。

拠点ではなく、出力の届き先から見ていきます入口は第2条。義務が始まる日は、右へ行くほど後になります拠点ではなく、出力の届き先から見ていきます入口は第2条。義務が始まる日は、右へ行くほど後になります1出力がEU域内で使われるかここが適用の入口2汎用AIモデルに当たるか2025年8月2日から3対話型AIの機能があるか2026年12月2日から4附属書IIIの用途はあるか2027年12月2日から鈴木さん製品に組み込む型は、さらに先の2028年8月2日からです
拠点ではなく、出力の届き先から見ていきます — 入口は第2条。義務が始まる日は、右へ行くほど後になります

EU向けに出す前に、この順で確かめます

  1. 自社のAIが汎用AIモデル(GPAI)に当たるかを確かめる

    当たる場合、技術文書の整備や著作権方針の要約の公開などの義務が、2025年8月2日から適用されています

  2. 対話型AIの機能があるかを洗い出す

    第50条の識別・表示義務の対象になりうるかを見ます。適用開始は2026年12月2日です

  3. 附属書IIIの用途に当たるものがないかを棚卸しする

    単体型は2027年12月2日、製品組込型は2028年8月2日から義務が本格化します

ここでの整理は法的な助言ではなく、公開されている条文構造の要約です。実際に当てはまるかどうかは、事業の中身に即して専門家に確認することをおすすめします。

この章のまとめ

第2条は、出力がEU域内で使われる場合も対象に含めています。拠点の有無だけで切り分けず、GPAI該当・対話機能・附属書IIIの順で棚卸しします。

09LLMO対策としてのEU AI Act、どこまでが確認済みでどこからが未確認ですか?

ここまで読んだ内容にも、確定していない部分があります。そこを混ぜたまま社内で説明すると、話が実態から離れていきます。

確認できていること、できていないこと混ぜて説明すると、社内の話が実態から離れます確認できていること、できていないこと混ぜて説明すると、社内の話が実態から離れます確認できていること条文ごとの適用開始日リスク区分の構造と域外適用の書き方罰則の上限EU官報・欧州委員会・欧州議会の公式情報確認できていないことAI検索の要約機能への適用範囲附属書IIIの今後の追加や修正加盟国ごとの実施体制の進み方断定せずに書き分けます
確認できていること、できていないこと — 混ぜて説明すると、社内の話が実態から離れます

確認できているのは、条文の日付と構造です。確認できていないのは、第50条の識別・表示義務が、AI検索の要約機能にどこまで及ぶかという点です。本稿執筆時点で、欧州委員会による個別の公式解釈を確認できていません。

附属書III、つまり高リスクAIの用途類型も、今後、欧州委員会の委任法によって追加・修正される可能性があります。いま該当しない機能が、あとから視野に入ることもありえます。

加盟国の側にも差があります。アイルランドは2025年9月16日に15の機関を国内の権限当局として指定した一方、ベルギーは本稿執筆時点で指定作業を終えていません(出典: 各国政府公式)。同じ規則でも、実施の体制は国ごとに進み方が違うという状態です。

この章のまとめ

日付と構造は確認できています。第50条とAI検索の要約機能の関係、附属書IIIの今後、加盟国の実施体制は、まだ動いている部分です。

10明日からできるAIOの確認は、EU AI Actのどこを見ることですか?

最後に、今日から手をつけられる範囲へ落とします。法務部門の判断を待たなくても、Web担当の手元でできることがあります。

法務を待たずに、手元でできる確認Web担当の側から始められることがあります法務を待たずに、手元でできる確認Web担当の側から始められることがありますAIが関わっている場所を書き出すチャット応答・下書き生成・画像生成・レコメンドAI生成であることが読者に分かる書き方か見る読者への誠実さとして、日付を待つ理由はありませんEU向けの窓口があるかを確かめる多言語サイト・EUからの問い合わせの有無機能ごとに、専門家へ聞くことを整理する「うちは大丈夫でしょうか」より答えが早く返ります鈴木さんこの表があると、相談を具体的な質問から始められます
法務を待たずに、手元でできる確認 — Web担当の側から始められることがあります

ひとつ目は、自社サイトでAIが関わっている場所の棚卸しです。チャット応答、記事の下書き生成、画像生成、レコメンド。どこでAIが動き、その出力が誰に届いているのかを書き出します。

ふたつ目は、AIが作った文章や画像を公開している場合に、それが読者に分かる書き方になっているかの確認です。識別・表示義務の適用開始は2026年12月2日ですが、読者に対する誠実さという意味では、日付を待つ理由がありません。

みっつ目は、EU向けの窓口があるかどうかの確認です。多言語のサイトを持っている、EUからの問い合わせを受けている。そうした事実があれば、法務や専門家に相談するときの材料になります。

この章のまとめ

手元でできるのは、AIが関わる場所の棚卸し、AI生成であることの示し方の確認、EU向け窓口の有無の確認です。表にすると、専門家への相談が具体的になります。

11AI検索の見え方は、EU AI Actの前後でどう追えばいいですか?

棚卸しの次にできるのが、観測です。第50条の適用が始まる前後で、同じ質問をEU圏内と日本国内から投げ、AI検索の回答画面がどう変わるかを比べる設計が考えられます。

適用の前後で、回答画面を比べる観測の手順仮説段階の検証設計です。結果は別途ご報告します適用の前後で、回答画面を比べる観測の手順仮説段階の検証設計です。結果は別途ご報告します1同じ質問をそろえる自社に関わるテーマで、聞き方を固定します2EU圏内と日本国内から投げる適用開始の前後で、同じ手順を繰り返します3表示の要素と文言を記録するAIが作った答えである旨の記載や、出典の見せ方を見ます
適用の前後で、回答画面を比べる観測の手順 — 仮説段階の検証設計です。結果は別途ご報告します

見るのは、表示の要素と文言です。AIが作った答えであることを示す記載が加わるのか、出典の見せ方が変わるのか。

ただし、これは仮説の段階にある検証設計です。実施と結果は別途ご報告します。やってみないと分からないことを、分かっている前提で社内資料に書かない。この線引きだけは、崩さないでおいてください。

この章のまとめ

適用の前後で、同じ質問への回答画面をEU圏内と日本国内から比べる設計が考えられます。仮説段階であることは、結果を語る前に必ず添えます。

12よくある質問

EU AI Actは日本の会社にも適用されますか?

適用される可能性があります。第2条は、EU域内で使用されるAIシステムの提供者・利用者に加えて、EU域外の提供者であっても出力がEU域内で使用される場合を対象に含めています(出典: EU官報)。個別に当てはまるかどうかは、専門家への確認をおすすめします。

EU AI Actは2026年8月2日に全面施行されるのですか?

いいえ。2026年8月2日は「大部分の規定」の適用開始日であり、全面施行ではありません。禁止AI慣行は2025年2月2日、GPAIの義務は2025年8月2日から、すでに適用されています。附属書IIIの高リスクAIは2027年12月2日、製品組込型は2028年8月2日へ延期されています(出典: EU官報/欧州議会公式)。

AI OverviewsのようなAI検索の要約機能も、規制の対象になりますか?

対話型のAIシステムや合成コンテンツを生成するAIには、第50条の識別・表示義務が課されます(適用開始は2026年12月2日)。AI検索の要約機能がどこまでこれに当たるかについては、本稿執筆時点で欧州委員会の個別の公式見解を確認できていません。私たちは射程に含まれうると考えていますが、断定はしません。

罰則はいつから適用されていますか?

罰則の規定は2025年8月2日から適用されています。禁止AI慣行への違反は、3,500万ユーロまたは全世界年間売上高の7%のうち高いほうが上限です。中小企業には、上限額と比率のうち低いほうが適用されます(出典: EU官報)。

EU AI Actの内容は、これから変わる可能性がありますか?

あります。Digital Omnibus on AIは2026年6月16日に欧州議会本会議で採択されましたが、委任法や実施細則の一部は本稿執筆時点で策定中です。附属書IIIの用途類型も、欧州委員会の委任法によって追加・修正される可能性があります(出典: 欧州議会公式)。

13まとめ|EU AI ActとAIOで、いま確認する3つ

EU AI Actは、リスクの大きさで義務の重さを変える法律です。全面施行が一度に来るのではなく、禁止AI慣行、汎用AIモデルの義務、大部分の規定、高リスクAIという順で段階的に適用されます。

AIOの作業そのものを直接規律する条文は確認できていません。関係が生まれるのは、自社がAIの機能を提供する側に立ったときです。だからこそ、いま手元でできるのは棚卸しになります。

もう一度、いま確認する3つ

  1. AIが関わっている場所を書き出す

    チャット応答・下書き生成・画像生成・レコメンドと、その出力が届く相手を並べます

  2. AI生成であることの示し方を確認する

    識別・表示義務の適用開始は2026年12月2日ですが、読者への誠実さとして先に整えられます

  3. EU向けの窓口の有無を確かめる

    該当しそうなら、機能ごとに条文を添えて専門家へ相談します

AI検索では、こう聞かれています

  • EU AI Actはいつから適用されるんですか?

    「EU AI Actの適用日は、AI対策の予定表にどう書けばいいですか?」の章に、条文ごとの適用開始日を表と時系列の図解でまとめています

  • EU AI Actは日本の会社にも関係しますか?

    「日本にいる私たちにも、EU AI ActはAI検索対策として関係しますか?」の章で、第2条の域外適用と確認の順番を説明しています

  • AI検索やチャットボットも、EU AI Actの対象になりますか?

    「EU AI Actのリスク区分は、AIOの実務にどう影響しますか?」の章と、よくある質問で答えています(結論:確認できていない部分が残っています)

次に読むなら、この記事です