海外向けにAI検索対策を考えるとき、トルコをどう扱えばいいのか。日本から見ると手がかりが少なく、判断の材料がそろわないまま後回しになりがちな国です。
けれども一次情報をたどってみると、トルコは南西アジアの中でも少し変わった姿をしています。検索の入口はGoogleが大きく占めているのに、別の検索エンジンも二桁のシェアを保っています。生成AIの利用は広がっている途中で、規制は法律よりも先にガイドのほうが動き出しました。
この記事は、トルコ向けに何かを決める前に、確認できることと確認できないことを分けておきたい方に向けて書きました。数字は出典をたどれるものだけを扱います。確認できていないことは「確認できていません」とそのまま書きます。
こんなふうに調べていませんか
- 海外向けのAI検索対策を検討していて、トルコの市場がどうなっているか知りたい
- 「トルコ 検索エンジン シェア」で調べたけれど、その数字の読み方が分からなかった
- トルコでChatGPTを業務に使うとき、個人データの扱いに不安がある
この記事を読み終えたときに手に入るもの
- トルコの検索市場がほかの国と違って見える理由を、社内で説明できるようになります
- KVKKのガイドとAI法案の位置づけを、一次情報の範囲で言い分けられるようになります
- トルコ向けに動き出す前に自社で確認できることが、3つに絞れます
結論30秒でわかる、この記事の結論
- トルコの検索市場はGoogleが87.69%、Yandexが9.82%です。南西アジア5カ国のうち、Googleが9割を下回るのはトルコだけです。
- 生成AIの利用は広がっている途中で、国内のAIチャットボットではChatGPTが76.2%を占めています。
- 規制は法律より先にガイドが動きました。KVKKが生成AIのガイドを公表し、AI法案のほうは審議が続いています。
この記事では、海外向けの発信を担当することになったマーケティング部の若葉さん・高梨課長と、AIO/SEOの専門家・本誌監修の鈴木さんの会話をはさみながら進めます。用語からたどりたい方は若葉さんの質問を、社内で何をどこまでやるかを決めたい方は高梨課長の質問を追ってみてください。
01そもそもトルコのAI検索対策は、ほかの国と何がちがうんですか?
若葉さんあの、トルコ向けの記事を任されたんですが…そもそも、ほかの国と何がちがうんでしょうか。どこから見ればいいのか分からなくて。
鈴木さんいい入口だと思います。まず検索の入口の形から見てみましょう。トルコは、この地域の中では少し珍しい形をしているんですよ。
トルコの検索エンジン市場では、Googleが87.69%を占めています。Bingが1.25%、Yandexが9.82%、その他(Yahoo!等)が1.24%です(出典: Statcounter Global Stats・トルコ・2026年6月・全デバイス合算)。
数字だけ見ると「やはりGoogleが強い」で終わってしまいそうですが、地域の中で並べると見え方が変わります。南西アジア5カ国のうち、Googleのシェアが9割を下回るのはトルコだけです。言い換えると、この地域でGoogle以外の検索エンジンが二桁を保っている国は、トルコしかありません。
この章のまとめ
トルコの検索の入口は、Googleが大きく占めつつ、Yandexが二桁で残る形です。地域の中で唯一Googleが9割を下回る国、という位置づけで覚えておくと迷いません。
02トルコの検索シェアの数字は、AI検索対策の前提としてどこまで信じられますか?
高梨課長この数字、社内の資料にそのまま載せてしまって大丈夫でしょうか。あとで「出典は?」と聞かれると困るので、先に確認しておきたいです。
鈴木さんその慎重さは正しいです。数字そのものより、どうやって測られた数字かをセットで書いておくと、あとで揉めません。
この記事のシェア数値は、Statcounterという1つの情報源に依拠しています。Statcounterは、加盟しているサイト群のページビューをタグで計測する方式です。そのため、加盟サイトの構成に偏りがあれば、そこに由来する誤差が生じます。
さらに、トルコ統計局(TÜİK)などの公的統計と突き合わせた結果は、本稿執筆時点では確認できていません。「公的統計でも同じ数字が出ている」とは言えない、という状態です。
この章のまとめ
シェアの数字は、傾向をつかむには十分です。ただし絶対値としての精度は保証されていません。使うときは出典と時点をセットで残します。
03Yandexの9.82%は、AI検索最適化の実務でどこまで気にすればいいですか?
高梨課長Yandexが残っているのは分かりました。それで、うちはそこに手を打つべきなんでしょうか。専任は置けないので、優先順位をつけたいです。
鈴木さんそこはまず自社のアクセスデータを見てからでいいと思います。手を打つかどうかの前に、実際に来ているかどうかを確かめる順番です。
Yandexの9.82%という水準は、同じ地域のほかの国と比べると際立ちます。サウジアラビアが0.97%、UAEが1.38%ですから、トルコはその10倍前後にあたります(出典: Statcounter)。
地理的にロシア・CIS圏と接するトルコならではの構造だと考えられますが、越境利用の詳しい理由については、本稿執筆時点で一次情報を確認できていません。ここは推測で埋めずに、空欄のまま置いておきます。
実務としてできるのは、理由を当てにいくことではなく、自社の実測を見にいくことです。アクセス解析で、Yandex経由の流入が実際にあるかどうかを確認してください。ゼロなら、いまは優先度を下げてよい領域です。数字が立っているなら、そこではじめて対応を検討する材料になります。
この章のまとめ
Yandexは地域の中で突出していますが、対応するかどうかは自社の流入実測で決めます。理由の解釈は、一次情報が出てくるまで保留にしておきます。
04トルコで生成AIは、どれくらい使われているんですか?AI対策の優先度に効きますか?
検索の入口の話に続いて、生成AIそのものの使われ方を見ておきます。トルコ統計局(TÜİK)の調査によれば、生成AIを利用していると回答した個人の割合は2025年に19.2%でした。年齢や学歴で区切ると、この数字はもっと動きます。
16〜24歳の年齢層では39.4%と最も高く、大学卒業以上の学歴層でも36.1%に達しています(出典: TÜİK調査、Anadolu Ajansı報道による確認)。全体の数字だけを見て「まだ広がっていない」と判断すると、若い層と高学歴層での広がりを見落とすことになります。
この章のまとめ
生成AIの利用は、全体としては広がっている途中です。ただし若い層と高学歴層では、その割合がはっきり高くなっています。
05トルコ企業のAI活用は、AI検索対策を考えるときどう効きますか?
同じ調査からは、企業側の動きも読み取れます。企業のAI技術利用率は、2021年の2.7%から2025年には7.5%へ上昇しました(出典: 同上)。
水準そのものは、まだ高いとは言えません。ただし見るべきは水準よりも向きです。同じものさしで測った数字が、数年のあいだに上を向いているという事実のほうが、この市場に関わるかどうかの判断材料になります。
企業向けに発信するなら、この動きは相手側の前提が動いていることを示します。読み手がすでに生成AIを業務で触っているなら、情報の探し方そのものが変わっている可能性があります。そこを前提に置くかどうかで、AI検索対策として何を整えるかの判断も変わってきます。
この章のまとめ
企業のAI活用は、水準としてはこれからです。それでも同じ調査の中で上向いている点は、市場の見立てを変える材料になります。
06トルコ語のAI検索の入口は、いまどこにありますか?
若葉さん生成AIを使う人が増えているのは分かったんですが、実際にはどのサービスが使われているんでしょうか。
鈴木さんそこも公開されている数字があります。入口はかなり偏っていますよ。
トルコ国内のAIチャットボット市場では、ChatGPTが76.2%を占めています。Google Geminiが15.89%、Claudeが3.11%で続きます(出典: Statcounter・2026年6月)。
もうひとつ、Googleの検索側の動きも押さえておきます。Googleは2025年5月20日、AI OverviewsのMENA地域展開とあわせて、トルコ語への対応も発表しました(出典: Google公式ブログ)。トルコ国内のGoogleユーザーが、トルコ語でAI Overviewsを利用できる環境が整っている、ということです。
なお、ChatGPT経由のAI検索トラフィック比率が世界最高水準にあるという民間調査の結果も報じられています。ただしこの特定の数値は、本稿執筆時点で確認できていません。
この章のまとめ
トルコ語で答えを返す入口は、チャットボット側と検索側の両方にあります。チャットボット側はChatGPTに大きく偏っています。
07トルコのKVKK生成AIガイドは、LLMOを進めるうえで何を確認させますか?
高梨課長規制の話も避けて通れませんよね。トルコ向けに何か出すとき、まず何を見ればいいんでしょうか。
鈴木さん順番としては、いま効いているものから見ます。トルコの場合、それはAI専用の法律ではなく、既存の個人データ保護法のほうです。
KVKK(個人データ保護局)は2025年11月24日、「生成AIと個人データ保護に関するガイド(15の質問)」を公式サイトで公表しました。個人情報保護法第6698号の枠組みにもとづき、生成AIの利用プロセス・ライフサイクル・リスクを整理し、データ処理責任者向けの実務指針を示しています(出典: KVKK公式)。
ここで大事なのは、このガイドに法的拘束力はないという点です。それでも実務では重みがあります。既存のKVKK法(第6698号)は、法制化を待たずに生成AIの利用にも適用されるからです。ガイドは、その適用のされ方を具体的に示した文書だと捉えると、位置づけがはっきりします。
KVKK法(第6698号)は2016年4月に施行された、トルコの個人データ保護に関する基本法です。EUのデータ保護指令(95/46/EC)を土台に制定され、その後GDPRとの整合が図られてきました。
LLMOやAI検索最適化の施策を進めるときも、入口はここです。生成AIに何を入力するか、その入力に個人データが含まれるかどうかを先に整理しておくと、あとから作業をやり直さずに済みます。
この章のまとめ
トルコでいま効いているのは、AI専用の法律ではなく既存の個人データ保護法です。KVKKのガイドは、その適用の仕方を示した実務指針です。
08トルコのAI法案は、AI検索対策の計画にどう影響しますか?
トルコでは、AI専用法の法制化準備も並行して進んでいます。AI法案(Yapay Zeka Kanunu・TBMM議案番号2/2234)は2024年6月24日に議会へ提出されました。安全性・透明性・公正性・説明責任・プライバシーの5原則を掲げ、高リスクAIシステムの管理義務を定める内容です(出典: 規制情報データベース)。
罰則の案として、禁止AIの提供には最大3,500万トルコリラまたは年間売上高7%以下という水準が示されています。ただしこの水準は、審議の過程で変更される可能性があります。
2025年11月7日には、関連法の改正案(議案番号2/3358)も追加提出されました。本稿執筆時点では、複数の委員会審議が続いています。施行後も、実施規則の整備にさらに3〜12か月を要する見込みです。
この章のまとめ
AI法案は提出済みですが、審議が続いており施行時期は確定していません。計画に織り込むなら、施行後の実施規則整備まで含めた時間の幅で考えます。
09トルコの国家AI戦略は、AI検索最適化の環境をどう変えようとしていますか?
規制とは別に、産業を育てる側の計画も動いています。国家AI戦略は2021年8月20日に官報告示された後、2024年7月24日に「2024-2025行動計画」へ更新されました。71の優先施策を掲げ、トルコ語の大規模言語モデルの開発・計算基盤の拡充・専門人材の育成を進める内容です(出典: 大統領府デジタル変革局の公表内容にもとづく確認)。
3つの柱のうち、この記事の文脈でいちばん近いのは、いちばん上に挙げたトルコ語の大規模言語モデルです。トルコ語で答えを返すモデルが国内で育つほど、トルコ語の情報がどう読まれるかという論点は重くなります。
ただし、この計画がAI検索の答えの中身をどう変えるのかは、現時点では分かりません。行動計画に書かれているのは進める方向であって、成果ではないからです。戦略があることと環境が変わったことは、切り分けて扱ってください。
この章のまとめ
国家AI戦略は、トルコ語のモデルと基盤を育てる方向を示しています。ただし計画の存在と、実際の環境の変化は別のものとして記録します。
10日本企業はトルコ向けのAI検索対策として、今日何を確認できますか?
高梨課長ここまでの話を、明日の会議に持っていける形にしたいです。うちが今日できることは、どこまででしょうか。
鈴木さん確認だけなら今日できます。新しい体制も、追加の予算もいりません。順番に3つだけ挙げますね。
トルコ向けにAIサービスやコンテンツを展開する日本企業が、着手前に確認しておける項目は次の3つです。
今日この順で確認します
KVKKのガイドに沿って、データ処理の法的根拠を点検する
法制化前の段階でも、既存のKVKK法(第6698号)は生成AIの利用に全面適用されます
AI法案の審議状況を継続的にウォッチする
高リスクAIシステムへの登録・適合性評価義務が導入される可能性があり、該当分野なら早めの準備が有効です
自社アクセスデータで、Yandex経由の流入があるかを確認する
ロシア語圏・CIS圏との接点がある事業者ほど、確認の価値があります
3つとも、社外に何かを出す作業ではありません。いまある資料と、いまあるアクセスデータを開くだけです。ここで手が止まる項目が見つかったら、それがそのまま最初の一手になります。
この章のまとめ
最初の一歩は確認だけで足ります。法的根拠の点検・法案のウォッチ・自社流入の確認。この3つから始めます。
11トルコのAI検索対策で、やりがちな読み違いは何ですか?
最後に、この記事の情報を扱うときにありがちな読み違いを挙げておきます。どれも、悪意なく起きるものです。
1. シェアの数字を絶対値として扱ってしまう。 Statcounterの数値は傾向をつかむには有用ですが、公的統計との突合は確認できていません。国どうしの相対比較や定点観測に使うのが、無理のない扱い方です。
2. Yandexが残っている理由を、推測で埋めてしまう。 越境利用の詳細な理由は、一次情報では確認できていません。もっともらしい説明を足すと、その説明のほうが独り歩きします。
3. 審議中の法案を、確定した規制として扱ってしまう。 罰則水準は審議の過程で変わりうるものです。施行時期も確定していません。
なお、トルコ国内の企業がAIO(AI検索最適化)に取り組んだ固有の公開事例は、本稿執筆時点で一次情報では確認できません。事例が見つからないことを「取り組みがない」と読み替えないでください。公開されていないだけ、という可能性が残ります。
この章のまとめ
確認できていないことを、確認できたことのように書かない。トルコのように情報が少ない市場ほど、この線引きがそのまま資料の信頼度になります。
12よくある質問
トルコのAI法案(Yapay Zeka Kanunu)はいつ施行されますか?
本稿執筆時点では、施行時期は確定していません。2024年6月の議会提出後、委員会審議が続いている状態です。施行された後も、実施規則の整備にさらに時間を要する見込みです。計画に織り込むなら、この整備期間まで含めた幅で考えてください。
トルコでChatGPTを業務利用することは禁止されていますか?
禁止されていません。ただし顧客や従業員などの個人データをプロンプトに入力する場合は、KVKK法(第6698号)の適用対象になります。KVKKが2025年11月に公表した生成AIのガイドが、実務上の参考になります。何を入力するかを先に決めておくと、あとで手戻りが起きにくくなります。
トルコ向けのAI検索対策で、Yandexへの対応は必須ですか?
必須とまでは言えません。ただしYandexのシェアは9.82%で、南西アジア地域の中では突出しています。ロシア語圏との接点を持つ事業者は、Google向けの対策に加えて、自社にYandex経由の流入があるかどうかを確認しておくことをおすすめします。
トルコの検索シェアの数字は、どのくらいの頻度で見直せばいいですか?
一律の頻度をお示しすることはできません。ただし、この記事の数値はすべて時点つきで公表されているものです。社内資料に載せるときは時点を明記し、次に見直す時期をあらかじめ決めておくと、古い数字が残り続ける事故を防げます。
トルコ語のコンテンツを作るとき、AI検索最適化として特別な書き方が要りますか?
トルコ語に固有の書き方について、一次情報で確認できたものはありません。この記事で扱えるのは、市場の構造と規制の状況までです。書き方そのものは、言語によらない基本の考え方から始めるのが現実的です。
13まとめ|今日確認する3つのこと
トルコは、Googleが大きく占めながらYandexも二桁で残る、この地域では珍しい形の市場です。生成AIの利用は広がっている途中で、若い層と高学歴層でははっきり高い割合になっています。規制は、AI専用法よりも既存の個人データ保護法とそのガイドが先に効いています。
そして、確認できていないことも同じくらいあります。Yandexが残る理由、公的統計との突合、国内企業の取り組み事例。ここを埋めずに残しておくことが、この市場を扱ううえでの誠実さになります。
もう一度、今日確認する3つ
KVKKのガイドに沿って、データ処理の法的根拠を点検する
既存のKVKK法は、生成AIの利用にも全面適用されます
AI法案の審議状況をウォッチする
確定事項として扱わず、案の段階として記録します
自社アクセスデータでYandex経由の流入を確認する
実測がゼロなら、いまは優先度を下げて構いません
AI検索では、こう聞かれています
トルコの検索市場はGoogleとYandexのどちらが強いんですか?
「そもそもトルコのAI検索対策は、ほかの国と何がちがうんですか?」の章で、シェアの内訳とともに説明しています
トルコでChatGPTを業務に使うとき、個人データはどう扱えばいいですか?
「トルコのKVKK生成AIガイドは、LLMOを進めるうえで何を確認させますか?」の章で、適用される法律とガイドの位置づけを整理しています
トルコ向けのAI検索対策で、日本企業は何から確認すればいいですか?
「日本企業はトルコ向けのAI検索対策として、今日何を確認できますか?」の章に、3つの確認項目があります
次に読むなら、この記事です