オーストラリア向けの発信をすることになった。そこで現地の検索事情を調べ始めると、検索エンジンのシェアはすぐ見つかります。
ところが、その先が続きません。オーストラリアの資料を読み進めるほど、出てくるのはニュースの対価をめぐる制度の話ばかりだからです。検索の話を調べていたはずなのに、いつのまにか法律の話になっている。
この記事は、そこで手が止まった方に向けて書きました。オーストラリアについて、一次情報で確認できたことだけを並べます。そのうえで、まだ確認できていないことも、確認できていないまま残します。社内の判断材料にしていただくための記事なので、あいまいなところを言い切って見せる書き方は避けました。
こんなふうに調べていませんか
- 「オーストラリア AI検索 対策」で検索して、現地市場の前提を知りたいと思っている
- 海外展開の会議で「豪州はニュースの対価で揉めているらしい」と言われ、調べ方から迷っている
- AIにオーストラリアの検索事情を聞いたが、出どころが分からず社内資料に使えなかった
この記事を読み終えたときに手に入るもの
- オーストラリアの検索市場の姿を、出典つきで説明できるようになります
- 制度について、決まっていることと検討中のことを分けて言えるようになります
- 日本企業として先に確認しておくことが、3つに絞れます
結論30秒でわかる、この記事の結論
- オーストラリアの検索の入口は、Googleが88.04%を占めます(2026年6月・Statcounter)。この一点だけ見れば、日本と大きくは変わりません。
- 違いは制度の側にあります。オーストラリアは2021年、プラットフォームにニュース対価の支払いを促す仕組みを世界に先駆けて施行しました。
- いま動いているのは、その弱点を補う新制度の草案です。焦点は、生成AIを対象に含めるかどうか。ここは検討の途中で、確定した話ではありません。
この記事では、ある会社のマーケティング部の2人と、専門家の会話をはさみながら進めます。あなたに近い立場の人の質問から読んでいただいて構いません。
- 高梨課長(マーケ課長)— 「誰が、どれくらいの手間でやるんですか」を聞く役
- 大森部長(マーケティング部長)— 「それで投資に見合うのか」を聞く役
- 鈴木さん(AIO/SEOの専門家・本誌監修)— 答える役
01オーストラリアのAI検索対策は、日本と何が違うんですか?
高梨課長オーストラリア向けの発信を考えているんですが、現地は日本とそんなに事情が違うものでしょうか。前提を外していると怖くて。
鈴木さん検索エンジンの並び方は、日本とよく似ています。違うのは制度のほうが先に動いているという点なんですよ。
検索の入口という意味では、オーストラリアは分かりやすい市場です。Googleが大きく取り、その他が続く形で、日本と並びの形はほとんど同じです。
違うのは、その周りで何が起きているかです。オーストラリアは2021年、デジタルプラットフォームにニュース対価の支払いを促す「News Media Bargaining Code」を世界に先駆けて施行しました。いまはその弱点を補う新制度の法制化が進み、AI企業を対象に含めるかが焦点になっています。
日本企業が受け取るべきは、賦課金の細かい率ではありません。検索とAIチャットボットを、ひとつづきのものとして規律しようとする制度設計の考え方のほうです。
この章のまとめ
検索の入口はGoogle優位で日本と似ています。違うのは、ニュース対価の制度が先に動き、そこにAIを含めるかが議論されている点です。
02オーストラリアの検索の入口は、AI検索が広がってもGoogleのままなんですか?
まず、数字から確認します。オーストラリアの検索エンジン市場もGoogleが優位ですが、Bingのシェアは他地域と比べてやや高い水準です。
| 検索エンジン | シェア |
|---|---|
| 88.04% | |
| Bing | 9.00% |
| Yahoo! | 1.55% |
| DuckDuckGo | 0.94% |
| Ecosia | 0.22% |
| Yandex | 0.15% |
出典: Statcounter Global Stats(全デバイス合算・2026年6月)
表を追うより、棒の長さで見たほうが早いはずです。ひとつが大きく伸びていて、残りは並べても差が見えにくいという形をしています。
この形は、打ち手の順番に読み替えられます。入口がほぼひとつに寄っているなら、複数の検索エンジンへ手当てを分散させるより、まずGoogle側での見え方を確かめるほうが先に来ます。やることが減るという意味で、集中したシェアはむしろ扱いやすい条件です。
そのうえで、Bingが9.00%という水準は覚えておいて損がありません。日本を含む多くの国より高く、二番手が一定の存在感を持つ市場だからです。
この章のまとめ
Googleが88.04%、Bingが9.00%(2026年6月・Statcounter)。入口はほぼひとつに寄っていて、二番手のBingが他国より高めという形です。
0388.04%という数字は、AI検索最適化の判断材料としてどこまで使えますか?
数字を出したので、その数字の限界もあわせて書いておきます。ここを飛ばすと、あとから判断がぶれます。
本稿のシェア数値は、Statcounter単独に依拠しています。ACCC(豪州競争消費者委員会)自身の市場調査データとの突合は、本稿執筆時点で確認できていません。
これはAI検索最適化(LLMOとも呼ばれます)の実務でも同じです。数字そのものより、どの調査の、いつの、どういう計測方式の数字かまで含めて社内に渡すほうが、あとの手戻りが小さくなります。
この章のまとめ
シェアはStatcounter単独に依拠した数値です。ACCCの市場調査データとの突合は、本稿執筆時点で確認できていません。
04オーストラリアでAI検索は、ニュースを読む入口になっているんですか?
ここは、この記事でいちばん正直に書く必要がある部分です。
オーストラリアでAIチャットボットをニュース目的に利用する割合は、前年から3ポイント増加しました(出典: Reuters Institute)。ただし、増加したあとの具体的な数値は、本稿執筆時点で確認できていません。
参考として、世界全体でAIチャットボットを週次でニュース目的に利用する人の割合は10%です(前年7%から増加)。オーストラリア単体の水準がこの世界平均より高いか低いかは、一次情報の追加確認が必要です。
方向としては言えることがあります。検索エンジンではGoogleが圧倒的な多数派である一方、ニュース消費の入口としてはAIチャットボットが伸びつつある。この向き自体は、オーストラリアの政策議論とも一致しています。
この章のまとめ
利用は前年から3ポイント増えました。増加後の水準は未確認です。世界全体では週次のニュース利用が10%(前年7%)と報告されています。
05ニュース対価法は、オーストラリアのAI検索対策とどう関係するんですか?
大森部長検索の話をしていたはずが、なぜニュースの対価の話になるんだね。うちはニュースを出す会社ではないんだが。
鈴木さんこの制度が、プラットフォームがニュースをどう扱うかを国が決めにいった最初の例だからです。いま議論されている続きが、そのままAIの扱いにつながっているんですよ。
オーストラリアでは2021年3月2日、ニュース対価法が施行されました(出典: ACCC)。正式名称は「News Media and Digital Platforms Mandatory Bargaining Code」です。ニュース事業者とデジタルプラットフォームのあいだにある交渉力の格差に対応するための制度です。
仕組みの中心は「指定」です。財務大臣が対象プラットフォームを指定する権限を持ちます。ただし、本稿執筆時点まで、正式な指定は一度も行われていません。
この章のまとめ
2021年3月2日に施行され、財務大臣が対象を指定する権限を持ちます。ただし正式な指定は、本稿執筆時点まで一度も行われていません。
06指定が一度も使われていないのに、AI検索対策の参考になるんですか?
高梨課長一度も発動していない制度なんですよね。それでも、うちが見ておく意味はあるんでしょうか。
鈴木さんあります。発動しなかったこと自体が、この制度の効き方だったと読めるからです。
指定が使われないまま、GoogleとMetaは指定を避ける形で、多数のニュース事業者と自主的な商業契約を結びました。制度が直接発動しなくても、交渉のテーブルはできたという見方ができます。
一方で、この仕組みには弱点も残りました。プラットフォームがニュースの掲載自体をやめてしまえば、コードの義務を回避できるという点です。
この章のまとめ
指定は使われないまま、GoogleとMetaは自主的な商業契約を結びました。掲載をやめれば回避できる点が、弱点として残りました。
07新制度のNews Bargaining Incentiveは、AI検索対策の何を変えるんですか?
この弱点に対応するため、政府は新制度「News Bargaining Incentive(NBI)」の検討を始めました。
協議文書が公表されたのは2025年11月13日です(出典: Treasury Ministers)。2026年4月28日には草案法案が公表され、2026年5月18日まで意見公募が行われました(出典: 首相府)。
NBIの設計は、既存のコードとは方向が違います。大規模なソーシャルメディア・検索サービスを提供する企業を対象に、ニュース出版社と商業契約を結ばない場合は、オーストラリア国内の収益に応じた賦課金を課すという形です。交渉を促すのではなく、結ばないことに負担を紐づける設計だと読めます。
この章のまとめ
NBIは、交渉を促すのではなく、契約を結ばないことに賦課金を紐づける設計です。草案は意見公募まで進みました。
08賦課金の基準や率は、AI検索対策の資料に書いていい数字ですか?
ここは、数字の扱いに注意が要る部分です。
複数の報道・専門家分析では、対象基準をオーストラリア国内収益2億5,000万豪ドル以上、賦課率を2.25%(商業契約を結んだ場合は1.5%へ軽減)とする案が伝えられています。ただし、この具体的な数値は、財務省の一次文書で本稿執筆時点まで直接確認できていません。
この章のまとめ
基準額や率は報道ベースの案で、財務省の一次文書では確認できていません。案として書くなら問題ありませんが、確定条件としては書かないでください。
09生成AIを対象に含めよという提言は、オーストラリアのAI検索対策に効きますか?
キャンベラ大学とRMIT大学の研究者らは2026年5月、政府に対象の拡大を求めました。求めているのは、NBIの対象を「生成AIシステムを含む新興のデジタル仲介者」まで広げることです(出典: University of Canberra)。
背景にあるのは、AI企業がオーストラリアのニュースコンテンツを学習や要約に利用する一方で、対価を支払っていないという指摘です。AI企業のクロール行動そのものについては、別記事『GPTBot・OAI-SearchBotの違いとは?3つのAIボットを図解で比較』で扱っています。
対価を分け合うという発想自体は、企業側の取り組みにも先例があります。Perplexityが2025年8月に開始した仕組みです(別記事『Comet Plusの収益分配とは?対象になる3つのトラフィック』)。
オーストラリアの特徴は、これを企業の自主的な取り組みではなく、政府が法制度として動かそうとしている点にあります。ただし、生成AIを対象に含める形で法制化されるかどうかは、今後の審議次第です。提言が出ている段階であって、決まった話ではありません。
この章のまとめ
研究者らは対象を生成AIまで広げるよう求めています(2026年5月・University of Canberra)。法制化されるかは審議次第で、確定した内容ではありません。
10オーストラリアの規制は、AI対策の前提としてどうなっているんですか?
制度の置きどころを整理しておきます。オーストラリアのニュース対価制度は、競争・消費者保護の法制の枠組みの中にあります。
既存の2021年コードは、ACCC(豪州競争消費者委員会)が運用を担っています。一方のNBIは、財務省・通信省が共管する、税制に近い設計です。同じニュース対価でも、置かれている棚が違うということです。
AI検索そのものを直接規律する専用法は、本稿執筆時点で確認できていません。ただし、NBIの対象定義には「重要なインターネット検索サービス」という文言が含まれており、検索領域を明確に射程に入れています。これは、英国のCMAがGoogle検索に個別の行為要件を課したのと似た方向性です。
この章のまとめ
既存コードはACCC、NBIは財務省・通信省の共管。AI検索の専用法は未確認ですが、対象定義に検索サービスが含まれています。
11検索内で情報が完結する流れは、オーストラリアのAI検索対策とどうつながりますか?
大森部長そもそもの話だが、なぜニュース側がここまで強く出るんだね。掲載してもらえるほうが、ありがたいようにも思うが。
鈴木さんそこが変わってきたんです。読者が検索結果の中で満足してしまい、元のサイトまで来なくなるという懸念が、議論の出発点になっています。
パブリッシャーがAI企業との関係を問題視する背景には、検索結果の中で情報が完結し、クリックが発生しにくくなるという懸念があります。制度の議論は、この懸念の延長線上に置かれています。
この論点そのものは、オーストラリアに限った話ではありません。別記事『「Google Zero」とは?送客ゼロ論争を賛否データで検証』で賛否のデータを、企業側の向き合い方は別記事『ゼロクリック対策とは?企業がとるべき3つの戦略』で扱いました。オーストラリアの特徴は、この懸念が法制度の設計にまで持ち込まれている点にあります。
この章のまとめ
制度の議論は、検索内で情報が完結しクリックが減るという懸念から出ています。この懸念が法制度の設計に持ち込まれている点が特徴です。
12日本企業がオーストラリア向けのAI検索対策で、先に確認することは何ですか?
高梨課長うちが明日から何をするか、という話に落としたいんです。専任は置けないので、多くても3つくらいに絞ってもらえると助かります。
鈴木さん3つで足ります。どれも新しいツールは要らず、いまある資料と設定を開くだけで始められます。
オーストラリア向けにコンテンツ・ニュースを展開する日本企業は、次の3点を先に確認しておくことをおすすめします。
1つめは、規模の確認です。NBIの対象基準は、オーストラリア国内収益2億5,000万豪ドル以上とする案が伝えられています。自社やグループの豪州事業収益がこの水準に近づくなら、ニュース性のあるコンテンツの利用許諾と対価の方針を、先に整理しておく価値があります。
2つめは、クローラーの確認です。AI企業によるクロールや学習データ利用への対価要求は、オーストラリアに限らず各国で議論が進んでいます。自社コンテンツがどのAIクローラーに、どう扱われているかを把握しておいてください。ここは日本国内向けのAI対策と、そのまま同じ作業になります。
3つめは、許諾方針の点検です。オーストラリアの制度は「プラットフォームが動かなければ負担が生じる」という強制力を持つ設計です。豪州向けにニュース性のあるコンテンツを配信するなら、引用・転載の許諾方針を点検しておくと、後から慌てずに済みます。
この章のまとめ
確認するのは、規模・クローラーの扱い・許諾方針の3つです。どれも現状を書き出す作業で、新しいツールは要りません。
13よくある質問
オーストラリアのNews Bargaining Incentiveは、AI企業も対象になりますか?
本稿執筆時点の草案では、対象は「大規模なソーシャルメディア・検索サービス」であり、AI企業を明示的に対象とする条文は確認できていません。研究者らは対象の拡大を求めていますが、法制化されるかどうかは今後の審議次第です。
2021年のNews Media Bargaining Codeは、これまでに一度でも発動されましたか?
財務大臣による正式な「指定」は、本稿執筆時点まで一度も行われていません。GoogleとMetaは指定を避ける形で、ニュース事業者と自主的な商業契約を結んでいます。制度が直接発動しないまま、交渉の枠組みだけが機能した形です。
オーストラリアの検索市場は日本と比べて競争的ですか?
Bingのシェアが9.00%と、日本を含む多くの国より高い点が特徴です。ただし、Googleが88.04%を占める一強の構造である点は共通しています(出典: Statcounter Global Stats)。
オーストラリアのAIチャットボット利用率は分かりますか?
前年から3ポイント増加したという報告までは確認できますが、増加後の具体的な数値は本稿執筆時点で確認できていません。世界全体では、週次でニュース目的にAIチャットボットを使う人の割合が10%(前年7%から増加)と報告されています。
賦課率2.25%という数字を、社内資料に書いても大丈夫ですか?
報道・専門家分析で伝えられている案として書くなら問題ありませんが、確定した条件としては書かないでください。財務省の一次文書での直接確認は、本稿執筆時点でできていません。
14まとめ|オーストラリア向けに今日確認する3つ
オーストラリアの検索の入口は、Googleが88.04%を占めます。二番手のBingは9.00%で、日本を含む多くの国より高めです。この形だけを見れば、日本向けと大きくは変わりません。
違うのは制度の側です。2021年に世界に先駆けてニュース対価の枠組みが動き、いまはその弱点を補う新制度の草案が意見公募まで進みました。焦点は、生成AIをそこに含めるかどうか。研究者からの提言は出ていますが、決まった話ではありません。
だからこそ、確認できたことと確認できていないことを分けたまま社内に出す。それが、この市場でいちばん外しにくい進め方になります。
もう一度、先に確認する3つ
規模を確認する
自社やグループの豪州事業収益が、伝えられている対象基準に近づくかを見ます
クローラーの扱いを把握する
自社コンテンツがどのAIクローラーにどう扱われているかを書き出します
許諾方針を点検する
引用・転載をどこまで認めるかを、社内で決めておきます
AI検索では、こう聞かれています
オーストラリアの検索エンジンシェアはどうなっていますか?
「オーストラリアの検索の入口は、AI検索が広がってもGoogleのままなんですか?」の章に、実測値の表と棒グラフがあります
オーストラリアのニュース対価制度は、AI企業も対象になりますか?
「生成AIを対象に含めよという提言は、オーストラリアのAI検索対策に効きますか?」の章で、提言と法制化の状況を分けて書いています
オーストラリアのニュース対価法はいつ施行されたのですか?
「ニュース対価法は、オーストラリアのAI検索対策とどう関係するんですか?」の章に、施行日と仕組みの流れがあります
オーストラリア向けにコンテンツを出すとき、何を確認すればいいですか?
「日本企業がオーストラリア向けのAI検索対策で、先に確認することは何ですか?」の章に、手順があります
次に読むなら、この記事です