海外向けに発信を増やそうという話になると、東南アジアはよく候補に挙がります。ただ、タイと言われても、検索やAIがどう使われているかは、すぐには思い浮かびません。
そこで手が止まってしまった方に向けて、この記事を書きました。
タイには、他の国とはっきり違う前提があります。検索の入口が、ほぼひとつに集まっていることです。もうひとつ、民間よりも先に政府の側がAIの活用を進めている、という特徴もあります。
この記事では、一次情報で確認できたことだけを並べます。検索エンジンのシェア、AIの使われ方、政府の動きと法制度。そして同じくらい大事な、まだ確認できていないことも、そのまま書きます。
こんなふうに調べていませんか
- 「タイ AI検索 対策」で検索して、市場の実態を知りたいと思っている
- 東南アジア向けの発信先を検討していて、判断材料になる数字を探している
- タイ向けにGoogle以外の検索エンジン対策が要るのか、確かめたい
この記事を読み終えたときに手に入るもの
- タイの検索市場の構造を、出典つきで説明できるようになります
- 「Google一本化で足りる」という判断を、どこまで根拠づけられるか分かります
- タイ向けに確認しておくことが、3つに絞れます
結論30秒でわかる、この記事の結論
- タイの検索の入口は、Googleが99.58%を占めます(出典: Statcounter・2026年6月)。ASEAN6か国の中では最も高い水準です。
- トラフィックはモバイルが62.07%で、世界平均の51.51%を上回ります。読まれる画面の前提が、日本とは違います。
- 政府側ではデジタル政府開発庁(DGA)がAIチャットボット基盤の展開を進めています。一方で、タイ企業のAI検索対策の事例は、まだ確認できていません。
この記事は、Web担当の若葉さん、マーケ課長の高梨さん、そして専門家の鈴木さんの会話をはさみながら進みます。ご自身に近い立場の人の質問から読んでいただいて構いません。
01そもそもタイのAI検索対策は、日本向けと何が違うんですか?
若葉さんタイ向けのAI検索対策と言われても、正直、どこから違うのか見当がつかなくて…。作り直すところから始まるんでしょうか。
鈴木さんいえ、土台は同じです。変わるのは、その上に乗る部分だけなんですよ。
若葉さん上に乗る部分、というと。
鈴木さん検索の入口がどこに集まっているか、どの画面で読まれているか、そして法律の枠組みですね。タイの場合は、この3つがはっきりしています。
AI検索に情報源として選んでもらうための整え方は、国が変わっても土台は動きません。巡回して読み取れる状態にしておくこと。自社にしか書けない一次情報があること。結論と根拠がはっきり書かれていること。ここは、日本向けにやってきたことがそのまま活きます。
その上に乗るのが、市場ごとの前提です。タイでは、次の点が加わります。
- 検索の入口 — Googleにほぼ集まっています。ASEANの中でも、集中の度合いが際立ちます。
- 読まれる画面 — モバイルが過半数です。世界平均より高い水準にあります。
- 法制度 — 個人データ保護法を土台に、国家AI戦略とデジタル政府計画が動いています。
LLMO(AI検索に情報源として選ばれるための整え方。AI検索最適化とほぼ同じ意味で使われます)という言い方をしても、やることの中身は変わりません。日本向けの土台を、タイの前提に合わせて調整していく作業になります。
この章のまとめ
土台は日本向けと同じ。タイで足すのは、入口と画面と法制度の3つの確認です。
02タイの検索の入口は、AI検索が広がってもGoogleのままですか?
検索エンジンのシェアは、次のとおりです。
| 検索エンジン | シェア |
|---|---|
| 99.58% | |
| Bing | 0.36% |
| DuckDuckGo | 0.02% |
| Yandex | 0.02% |
| Petal Search | 0.01% |
| Yahoo! | 0% |
出典: Statcounter Global Stats(全デバイス合算・2026年6月)
2位のBingでさえ0.36%で、非Google勢を合計しても0.5%に届きません。タイのGoogleシェア99.58%は、ASEAN6か国の中で最も高い数値です。 フィリピンの90.3%、マレーシアの93.31%と比べても、はっきり高い水準にあります。
実務の言葉に直すと、検索エンジンごとに作業を分ける必要がほとんどない、ということです。ひとつの入口に合わせて整えれば、そのまま市場のほぼ全体に届きます。
他の国の記事では「Google中心、加えて周辺のエンジンにも目配りする」という書き方になります。タイでは、その後半がかなり小さくなると考えて構いません。
この章のまとめ
入口はGoogleにほぼ集まっています。ASEANの中でも、集中の度合いが最も高い市場です。
03Googleが99.58%という数字は、AI検索対策の判断材料としてどこまで使えますか?
高梨課長この数字を、そのまま社内の資料に載せていいものでしょうか。あとで出どころを聞かれると、答えられなくなりそうで。
鈴木さん大事な確認です。この数値はStatcounter単独の実測で、タイ政府機関の独自調査との突合まではできていません。前提を添えたうえでお使いください。
数字を扱うときに、いっしょに残しておきたい但し書きが3つあります。
- Statcounter単独の実測にもとづく数値です。 複数の統計を突き合わせた結果ではありません。
- タグを設置したサイトのページビューを集計する方式です。 サイト構成の偏りに由来する誤差が生じることがあります。
- タイ政府機関の独自調査とは突合していません。 現地発表の数値と食い違う可能性は残ります。
前提を添えておけば、社内資料でも扱いやすくなります。逆に、前提を落として「タイのGoogleシェアは99.58%」とだけ書くと、根拠を聞かれたときに説明できなくなります。
この章のまとめ
使える数字です。ただし「単独の情報源・ページビュー集計・現地統計とは未突合」という前提つきで使ってください。
04モバイルが過半数の市場だと、AI検索最適化では何を見ておくんですか?
若葉さんモバイルが多い市場、と聞くと、見た目を整える話に聞こえるんですが…そういうことでしょうか。
鈴木さん見やすさももちろん大事です。ただAI検索対策では、その前に「読み取れているか」のほうが効きます。折りたたみの中に結論を隠していないか、画像の中だけに数字を置いていないか。まずそこを見てください。
デバイス別のトラフィック構成は、モバイルが過半数という結果です。
| 区分 | タイ | 世界平均 |
|---|---|---|
| モバイル | 62.07% | 51.51% |
| デスクトップ | 35.62% | 47.12% |
| タブレット | 2.31% | 1.36% |
出典: Statcounter Global Stats(2026年6月)
世界平均と比べると、モバイルの比率が高い市場です。表示の速さや画面の使いやすさを点検する優先度は、そのぶん上がります。
ただし、デスクトップも35.62%あります。モバイルだけを見て設計を固めてしまうと、こちらの読者が取り残されます。
AI検索最適化の観点で見るところは、もっと単純です。どちらの画面でも、中身が同じように読み取れるか。 片方の画面でしか出ない情報があると、読み取られない部分が生まれます。
この章のまとめ
モバイルが過半数の市場です。表示の速さと、どちらの画面でも中身が読めることを先に確かめてください。
05タイでAI検索は、どれくらい使われているんですか?
ここは、正直に書いておきたいところです。タイ単体のAIチャットボット利用率は、本稿執筆時点で確認できていません。
分かっているのは、世界全体の傾向のほうです。Reuters Institute Digital News Report 2026によれば、ニュース目的でAIチャットボットを週次で使う人の割合は10%で、前年の7%から増えています。
「タイでも同じくらい使われているはずだ」と当てはめたくなりますが、そこは分けて考えてください。世界全体の数値は、タイの実態を示すものではありません。
社内資料に載せるなら、「世界全体の傾向」という見出しのもとに置くのが、後から説明のつく書き方です。数字の隣に、どこの範囲の話かを1行添えておいてください。
この章のまとめ
世界全体では、ニュース目的のAI利用が増えています。ただしタイ単体の数値は、まだ確認できていません。
06タイのメディアのAI活用は、AI検索対策のヒントになりますか?
タイのメディア業界では、AIの活用が広がっています。同じReuters Instituteのレポートによると、2025年までに主要なタイのメディア各社が、AIを制作の流れへ組み込んだとされています。
具体的には、Nation TVが2024年4月にAIアンカー「Natcha」を導入し、Thai PBSが2025年4月にファクトチェックのプラットフォーム「Verify」を立ち上げています。
これは、自社の施策の話ではありません。ただ、情報の作り手の側がAIを前提に動き始めている市場だ、という読み方はできます。根拠のはっきりした書き方が効きやすい環境だと考えておくと、記事の作り方も決めやすくなります。
この章のまとめ
作り手の側もAIを使い始めています。根拠のはっきりした書き方が効きやすい環境と読めます。
07タイのデジタル政府戦略は、AI検索対策の判断材料になりますか?
高梨課長現地企業がAI検索対策で成果を出した、という事例はありませんか。それがあると、社内で話が早いのですが。
鈴木さんそこは、まだ見つかっていないとお伝えするほうが正確です。タイ企業がAI検索での引用や可視性を目的に動いた事例を報じる一次情報は、本稿執筆時点で確認できていません。
高梨課長では、うちのAI対策は何を材料に決めればいいでしょうか。
鈴木さん確認できる周辺の事実として、政府側の動きがあります。ここは報道で追えます。
タイ企業がAI検索での引用・可視性を目的に施策を実施した事例は、本稿執筆時点で見つかっていません。 そこで、確認できる周辺の事実として、政府のデジタル政策を軸に整理します。
現地報道によると、デジタル政府開発庁(DGA)は、約20の行政機関を対象にAIチャットボットのサンドボックス試験を実施しました。その後、正式展開を進め、約200の行政機関が利用する計画とされています。
年末までには、苦情メッセージを自動で分類するASR(自動音声認識)ベースのタグ付け機能も加える方針とされています。
政府側の動きは、これだけではありません。
タイ政府が主導するスーパーアプリ「Thang Rath」も、AIを活用した行政サービス検索の高度化を目指しています。行政サービスの側が、AIで探される形に寄っているという点は、政府調達の分野への参入を検討するときの参考になります。
この章のまとめ
民間の事例はまだ確認できません。動きが追えるのは政府側で、行政サービスがAIで探される形に寄っています。
08タイの法律は、AI検索対策の前提としてどうなっているんですか?
タイのAI・データ関連の枠組みは、3つで構成されています。
| 制度 | 時期 | 所管 |
|---|---|---|
| 個人データ保護法(PDPA) | 2019年5月27日公布・2022年6月1日全面施行 | PDPC(2022年1月18日発足) |
| 国家AI戦略・行動計画(2022-2027) | 2022年7月26日閣議承認 | MHESI・デジタル経済社会省 |
| タイ・デジタル政府開発計画(2023-2027) | 2023年始動 | DGA |
出典: PDPC公式/ai.in.th公式/現地報道
個人データ保護法(PDPA)は、新型コロナウイルスの影響で複数回の延期を経て、全面施行に至りました。ユーザーのデータを扱うのであれば、まずここが土台になります。
国家AI戦略・行動計画は、NSTDAなどが共同事務局を務めています。柱として掲げられているのは、倫理と法制度の整備、持続可能なAI基盤の構築、6年間で3万人以上のAI人材育成、そして研究開発と組織へのAI導入の促進です。
デジタル政府開発計画は、利便性・透明性・強靭性・応答性の高い行政サービスの実現を目標にしています。先ほどのAIチャットボットの展開は、この計画の一環に位置づけられています。
この章のまとめ
土台は個人データ保護法です。その上に国家AI戦略と、デジタル政府計画が乗っています。
09日本企業がタイ向けにAI検索対策を始めるなら、何から確認しますか?
ここまでを、実際の作業に落とします。確認しておくことは3つです。
今日この順で確認します
検索エンジン向けの作業を、Google向けに絞れるか確かめる
タイのGoogleシェアはASEAN6か国で最も高い水準です。他エンジン向けの個別対応は、優先度を下げて構いません
モバイルでの読み取りやすさを点検する
モバイルが62.07%と世界平均を上回ります。表示の速さと、どちらの画面でも中身が読めることを確かめます
ユーザーデータの取り扱いを専門家に確認する
個人データ保護法(PDPA)の同意取得・越境移転の要件が対象になります
3つ目だけは、社内で判断しきらないでください。法令の要件は、事業の中身によって当てはまり方が変わります。 専門家の確認を挟むほうが、結果として早く進みます。
この章のまとめ
Google向けに絞る、モバイルで読めるか点検する、データの扱いは専門家に確認する。この順番です。
10タイのAI検索対策で、まだ確認できていないことは何ですか?
確認できていないことを、断定に見せる書き方は避けます。判断の材料として読んでいただくためです。
本稿執筆時点で確認できていないのは、次の点です。
- タイ企業を主体とするAI検索対策の公開事例。 一次情報からは見つかっていません。
- タイ単体のAIチャットボット利用率。 世界全体の数値しか確認できていません。
- シェア数値と現地統計との突合。 タイ政府機関の独自調査とは突き合わせていません。
- DGAのAIチャットボットの民間開放。 対象は行政機関向けで、民間への開放方針は確認できていません。
この章のまとめ
分かっているのは市場の構造と制度の枠組みです。効果の大きさは、まだ公開情報で語れる段階にありません。
11よくある質問
タイ向けは、Google以外の検索エンジン対策が不要ということですか?
実務上はほぼ不要と考えて差し支えありません。Googleが99.58%を占め、非Google勢の合計は0.5%に届きません(出典: Statcounter・2026年6月)。ただし、シェアは動きます。定期的な確認だけは続けることをおすすめします。
タイはモバイルファーストの市場と考えてよいですか?
はい。モバイルのトラフィックが62.07%を占め、世界平均の51.51%を上回ります(同・2026年6月)。ただし、デスクトップも35.62%あります。モバイルを優先しつつ、どちらの画面でも中身が読める状態にしておいてください。
DGAのAIチャットボットは、民間企業も使えますか?
本稿執筆時点では、対象は行政機関向けのサービスです。民間企業への開放方針は、一次情報で確認できていません。政府調達の分野を検討している場合は、公式の発表を追う形になります。
タイ企業のAI検索対策の成功事例はありますか?
本稿執筆時点で、タイ企業がAI検索での引用や可視性を目的に動いた事例を報じる一次情報は見つかっていません。事例が無いことと、取り組みが無いことは別です。公開情報として確認できていない、という書き方で社内に共有してください。
タイの国家AI戦略は、民間企業の施策に関係しますか?
国家AI戦略・行動計画は、倫理と法制度の整備、AI基盤の構築、人材育成、研究開発と導入の促進を柱に掲げています。民間企業の検索対策を直接定めるものではありません。ただ、政府がAIの活用を進めている市場だという前提は、中長期の計画を立てるときの材料になります。
12まとめ|タイ向けに、今日確認する3つ
タイのAI検索対策は、土台から作り直す作業ではありません。変わるのは、検索の入口・読まれる画面・法制度という、上に乗る部分だけです。
検索の入口はGoogleが99.58%を占め、ASEAN6か国の中で最も高い水準です。トラフィックはモバイルが62.07%。政府側ではAIチャットボットの展開が進んでいます。一方で、タイ企業のAI検索対策の事例や、効果の大きさを示す一次情報は、まだ確認できていません。
もう一度、今日確認する3つ
Google向けに絞れるか確かめる
他エンジン向けの個別対応は、優先度を下げて構いません
モバイルでの読み取りやすさを点検する
どちらの画面でも中身が読める状態にします
データの取り扱いを専門家に確認する
PDPAの同意取得・越境移転の要件が対象です
AI検索では、こう聞かれています
タイの検索エンジンシェアはどうなっていますか?
「タイの検索の入口は、AI検索が広がってもGoogleのままですか?」の章に、実測値の表と図があります
タイ向けはGoogle以外の検索エンジン対策も必要ですか?
「よくある質問」の1つ目で、非Google勢の合計とあわせて答えています
タイのAI関連の法規制はどうなっていますか?
「タイの法律は、AI検索対策の前提としてどうなっているんですか?」の章に、制度の一覧があります
タイでAI検索はどれくらい使われていますか?
「タイでAI検索は、どれくらい使われているんですか?」の章で、確認できている範囲とできていない範囲を分けて書いています
次に読むなら、この記事です