「AIOは内製でいくのか、代理店に任せるのか」。この問いのまま会議を重ねて、結論が出ないまま止まっている。そういう相談をよく受けます。
止まる理由は、たいてい問いの立て方にあります。AIOの業務はひとかたまりではなく、性質のまったく違う仕事が並んでいます。ひとかたまりのまま「内製か外注か」を決めようとすると、どちらを選んでも半分は無理が出ます。
この記事は、自社のAIO体制をこれから決める事業責任者の方に向けて書きました。業務を工程に分け、工程ごとに担い手を決めるところまでを、図解と会話で整理していきます。
こんなふうに調べていませんか
- 「AIO 内製化」で検索して、外注との線引きを探している
- 代理店から提案を受けたが、どこまで任せてよいか判断できない
- すでに全部外注していて、社内に何も残っていないことに気づいた
この記事を読み終えたときに手に入るもの
- 自社の業務を5つの工程に分けて、内製と外注を採点できるようになります
- 工程の性質に合う契約形態を選べるようになります
- 委託先にデータを渡すときに決めておくことが分かります
結論30秒でわかる、この記事の結論
- AIOの体制は、全部内製か全部外注かの二択ではありません。工程ごとに担い手を変えるのが実務の形です。
- 判断の軸は4つ。更新頻度・機密性・専門性の習得コスト・意思決定の速さです。
- 5つの工程を採点すると、外注が明確に向くのは技術実装だけになります。
この記事では、体制を決める立場の2人と、専門家の会話をはさみながら進めます。
- 高梨課長(マーケ課長)— 「誰が、どれくらいの手間でやるんですか?」を聞く役
- 大森部長(マーケ部長)— 「それで、投資に見合うのか」を聞く役
- 鈴木さん(AIO/SEOの専門家・本誌監修)— 答える役
01そもそもAIOの体制は、内製化と代理店のどちらかを選ぶ話なんですか?
大森部長結局のところ、AIOはうちでやるのか、外に出すのか。どちらなんですか。
鈴木さんそこは、どちらか一方には決まらないんです。中身を分けてみると、社内でしか決められない仕事と、外の専門性を買ったほうが早い仕事が、はっきり分かれてくるので。
AIOのハイブリッド体制とは、業務を工程ごとに分解し、工程単位で内製と外注を使い分ける運用設計のことです。全体をひとかたまりのまま扱わない、というだけの話でもあります。
身近なものに置きかえると、感覚がつかみやすくなります。
家に住むとき、住む場所を決めるのは住む人自身です。一方で、電気やガスの工事を自分でやろうとする人はほとんどいません。毎日の食事は外に頼りきりにもできません。同じ「家のこと」でも、担い手は自然に分かれています。
内製と外注が併存するのは、日本のAIOに限った話ではありません。米国広告主協会(ANA)の調査では、企業のインハウスエージェンシー保有率が2013年の58%から2023年に82%まで上昇しました。出典は、この調査を報じたMarketing Diveの記事です。
同じ回答企業162社(5年ごとに実施、直近は2023年)のうち、92%は外部の代理店も併用しています。社内に機能を持つことと、外を使うことは、置き換えの関係になっていません。
内製か外注かという二択そのものを選ぶ企業は、実態としては少数派です。工程を分解し、それぞれに合った担い手を選ぶ発想が、すでに主流になっています。
この章のまとめ
AIOのハイブリッド体制とは、工程単位で内製と外注を使い分ける設計のことです。まとめて決めようとするから、決まらなくなります。
02AI検索対策を全部内製化すると、どこで行き詰まるんですか?
高梨課長構造化データも、クローラーの設定も、勉強すれば社内でできそうな気はするんです。実際どうなんでしょうか。
鈴木さんできるようになります。ただ、そこにかかる時間のあいだ、ほかの工程が止まるのが実務では効いてくるんですよ。
全部内製を選んだ企業が最初にぶつかるのは、専門性の習得にかかる時間です。構造化データの実装やAIクローラーの制御は、独学で身につけるにはそれなりの期間が要ります。
内製・外注そのものの判断基準は、別記事『AIO内製か外注か?3つの軸で決める判断チェックリスト』(AIOM-059)で3つの軸から整理しました。同記事で触れているとおり、構造化データの拡充に着手できている企業は16.1%にとどまります(出典: Faber Company「AI×SEOの実態調査」、回答企業120社・2025年冬)。
着手率がこの水準にとどまっている工程を、社内の独学だけで立ち上げようとするところに無理が生まれます。
行き詰まり方には順番があります。まず専門書やドキュメントを読む時間が要ります。次に、その時間を捻出するために、記事の更新や計測の確認が後回しになります。最後に、止まっているのは技術だけのはずが、更新の止まったサイト全体になっています。
技術の習得そのものより、その間ほかの工程が止まることのほうが、実務では痛手になります。
03代理店中心の体制で、AI検索最適化を全部外注にすると、何が社内に残らないんですか?
全部外注を選んだ企業には、別の形の問題が起こります。自社の事業理解が外部にたまり、戦略の意思決定を代理店に預ける構造になりやすいためです。
契約が続いているあいだ、この構造の危うさは表に出てきません。報告は上がってきますし、数字も動いています。問題が見えるのは、契約が終わった瞬間です。
外注そのものが悪いのではありません。判断のよりどころが社外にしかない状態が、あとで効いてきます。同じ工程を外注していても、判断の材料が社内にも残る形になっていれば、契約が切り替わっても続けられます。
04AIOの内製化と代理店の分担は、どんな体制でも同じ4つの軸で決まるんですか?
工程ごとに担い手を決めるとき、見る軸は4つです。更新頻度・機密性・専門性の習得コスト・意思決定の速さ。AIOに限らず、マーケティング業務全般に使える見方でもあります。
| 判断軸 | 内製が有利になる状態 | 外注が有利になる状態 |
|---|---|---|
| 更新頻度 | 高い(週次・月次で継続的に手を入れる) | 低い(一度作れば長期間安定する) |
| 機密性 | 高い(経営情報・顧客データに触れる) | 低い(公開情報・汎用的な作業が中心) |
| 専門性の習得コスト | 低い(社内の知見の延長で対応できる) | 高い(専門技術の独学に時間がかかる) |
| 意思決定の速さ | 現場での即断が要る | 要件を固めてからまとめて依頼できる |
4つの軸は、いつも同じ方向を向くわけではありません。更新頻度と専門性の習得コストは、逆を向くことがあります。更新頻度が高くても、習得コストがそれ以上に高い工程は、外注が優位になります。技術実装がその典型です。
機密性と意思決定の速さは、多くの場合そろって動きます。機密性の高い工程は経営判断に直結しやすく、現場での即断も要るためです。戦略設計と計測分析は、この2つが重なる位置にあります。
軸を1つだけ見て決めると、判断がぶれます。2つの軸の上に工程を置いてみると、外に出す判断がつく工程が、一角にだけ現れることが見えてきます。
05LLMO対策の5工程は、どれを内製化してどれを外注しますか?
AIOの業務は、戦略設計・技術実装・コンテンツ制作・計測分析・運用改善の5つに分けられます。前章の4軸で採点すると、次のようになります。
| 工程 | 更新頻度 | 機密性 | 専門性の習得コスト | 意思決定の速さ | 基本方針 |
|---|---|---|---|---|---|
| 戦略設計 | 低〜中 | 高い | 中程度 | 経営判断に直結 | 内製 |
| 技術実装 | 低い | 低〜中 | 高い | 要件確定後に依頼可 | 外注が向く |
| コンテンツ制作 | 高い | 中〜高 | 低〜中 | 企画段階の機動力が要る | 内製+外部ライター |
| 計測分析 | 高い | 高い | 中程度 | 異常値への即応が要る | 内製(ツール併用) |
| 運用改善 | 高い | 中程度 | 低〜中 | 現場感覚での即応が要る | 内製 |
外注が明確に向くのは技術実装だけです。更新頻度が低く、専門性の習得コストが高いという組み合わせは、ほかの4工程には現れません。
コンテンツ制作だけは、内製と外注の両方を使う設計になります。更新頻度の高さと、習得コストの低さが同時に成り立つためです。量を確保する部分を外部ライターに任せ、専門知見の言語化を社内で担う分担が現実的です。
この章のまとめ
5つのうち4つは内製が基本方針になります。外注の議論は「どこまで出すか」ではなく、「技術実装をどう出すか」に絞れます。
06AI対策の工程ごとに、内製化と外注の線引きはどこに引きますか?
戦略設計 — 意思決定権は外に出さない
戦略設計には、KPI設計・投資配分・優先順位づけが含まれます。自社の事業構造への理解が前提になるため、外部だけでは代わりになりません。代理店やコンサルを壁打ち相手に使うことはできますが、最終の決定は社内に残します。
技術実装 — 専門性を買う工程
構造化データの実装、AIクローラーの制御、サイト速度の改善は、専門技術のかたまりです。更新頻度が低いため、都度の依頼でも機動力を損ないません。社内で育てるより、外部の専門知見をそのつど調達するほうが理にかないます。
ただし、依頼先を見極める目は要ります。Googleは公式ガイドで、1位表示を約束できる業者は存在しないと注意を促しています。この視点は、AIOの外注先選びにもそのまま当てはまるとWEBMARKSは考えます。
コンテンツ制作 — 企画は社内、量は分担
コンテンツ制作の価値は、自社の専門知見を言語化できるかどうかにあります。ここは内製が向きます。一方で、企画が固まったあとの量産は、外部ライターに委ねられます。
計測分析 — 人の代わりにツールという選択肢
計測分析は、顧客データや売上との相関という、機密性の高い情報を扱います。専任者を置く代わりに、統合型の計測ツールを導入する企業も増えています。Conductor社の調査(回答者は米国のCMO・VP等デジタルリーダー250名超)では、51%が統合型のAEO/GEOプラットフォームを活用していると回答しました。
運用改善 — 報告が集まる窓口は社内に置く
運用改善は、ほかの4工程からの報告を受け止め、優先順位を見直す役割です。外注している工程があっても、その報告を受け取る窓口は社内に要ります。月次の定例を1つ設けて、そこに報告を集めるだけでも、窓口が社内にある状態は作れます。
すでに社内にSEOチームがある場合は、社内側の統合パターンも合わせて検討してください。別記事『AIOはSEOチームに統合できる?』(AIOM-177)で、完全統合型・ハイブリッド型・併走型という3つの型を解説しています。この記事は、その外側にある社外との境界線を扱っています。
07AIOの代理店との契約は、リテイナー型とプロジェクト型のどちらですか?
高梨課長外に出す工程は決まりました。契約の形は、どう選べばいいんでしょうか。先方からは月額を提案されているのですが。
鈴木さん工程の性質に合わせるのが基本です。続く仕事なら続く契約、終わる仕事なら終わる契約。ここがずれると、あとで困るのはたいてい発注側なんですよ。
契約形態は、リテイナー型・プロジェクト型・スポット型の3つに整理できます。
| 契約形態 | 特徴 | 向いている工程 |
|---|---|---|
| リテイナー型(月額契約) | 継続的に関与し、都度の依頼を待たない | コンテンツ制作の量産補完、計測ツールの運用支援 |
| プロジェクト型(成果物単位) | 要件を固めてから発注し、納品で完了する | 技術実装(構造化データ導入などの一時的な作業) |
| スポット型(単発) | 診断・壁打ちなど、単発の関与にとどめる | 戦略設計の意思決定支援 |
迷ったときは、順番に問いを立てると決まります。まず「その仕事は来月も続くか」。続くならリテイナー型です。続かないなら、次に「要件を先に固められるか」。固められるならプロジェクト型、固められないならスポット型です。
費用は業務範囲によって大きく変わるため、一律の相場は示せません。ただし構造には傾向があります。技術実装のような専門工程は、初期の立ち上げに費用が集中し、運用に入ると軽くなる傾向があるとWEBMARKSは考えます。継続する工程は、月次で一定の費用が発生し続ける形になりやすいところです。
08AI検索対策で代理店にデータを渡すとき、契約に何を書きますか?
受け渡しで見落とされやすいのが、データの監督責任です。
個人情報保護法第25条は、個人データの取扱いを外部委託する場合、委託先への監督を委託元に義務づけています。計測データや顧客情報に触れる工程を外に出すなら、この監督義務を契約書に書いておいてください。出典は個人情報保護委員会のFAQです。
契約に書いておくと後が楽になるのは、監督体制だけではありません。計測データを社内にも渡す取り決めを先に入れておくかどうかで、運用改善の判断材料が社内に残るかどうかが変わります。
外部の担当者を選ぶ基準そのものは、別記事『AIO対策会社の選び方』(AIOM-061)で解説しています。この記事の工程別の切り分けと組み合わせて使ってみてください。
なお、技術実装のように専門性を外から調達する工程では、本誌を運営するWEBMARKSも支援の候補の1つです。契約形態ごとの向き不向きを踏まえて、ほかと並べて比べていただければと思います。
09AIOの内製化と代理店の体制は、いつ見直せばいいんですか?
大森部長一度決めた体制は、しばらくそのままでいいんでしょうか。
鈴木さんいえ、見直す前提で組むほうがいいです。社内の専門性が育てば、外に出していた工程を戻す判断も出てきますから。逆に、内製が回らなくなれば外を増やす判断もありえます。
見直しの目安は、半年から1年です。これより短いと、外注先が専門性を発揮する前に契約が終わってしまいます。長すぎると、社内の状況の変化に体制が追いつかなくなります。
時間の経過とともに動くのは、たいてい技術実装とコンテンツ制作です。立ち上げの時期は外の比率が高く、社内に知見がたまるにつれて内製の比率が上がっていきます。戦略設計と計測分析は、はじめから社内に置いたまま動きません。
見直すときは、4つの判断軸を毎回同じ基準で採点し直してください。基準を変えてしまうと、体制がなぜ変わったのかを社内で説明できなくなります。採点結果を残しておくと、次の見直しが軽くなります。
この章のまとめ
体制は決めて終わりではありません。半年から1年の間隔で、同じ4軸で採点し直します。基準をそろえておくことが、説明できる体制を保つ条件になります。
10AI検索最適化の体制づくりで、つまずくのはどこですか?
つまずく場所は、だいたい決まっています。
1つめは、戦略設計まで代理店に預けてしまうことです。事業理解にもとづく判断ができなくなり、依存だけが深まります。どれだけ外注が増えても、意思決定権は社内に残してください。
2つめは、外注先の計測データが社内に共有されないことです。運用改善の判断材料が社内にたまらず、知見が代理店側にだけ残ります。データの受け渡し方法は、契約の時点で決めておく必要があります。
3つめは、契約形態と工程の性質を合わせずに発注することです。更新頻度の高いコンテンツ制作をプロジェクト型で出すと、単発の納品で関係が途切れます。続く工程には、続くことを前提にした契約を選んでください。
推進役を社内のどこに置くかで迷う場合は、別記事『AIOチームの作り方』(AIOM-176)が役割の分け方を整理しています。
11よくある質問
小規模企業でもハイブリッド体制は組めますか?
組めます。1人の担当者が戦略設計・計測分析・運用改善を兼務し、技術実装だけを外に出す構成が現実的です。コンテンツ制作は、担当者の負荷を見ながら外部ライターの併用を検討してください。人数よりも、どの工程を社内に残すかを先に決めることが大事です。
代理店を1社に絞るべきですか、複数社を使い分けるべきですか?
工程ごとに求められる専門性が違うため、使い分けも珍しくありません。ただし窓口が増えるほど、社内の調整の手間も増えます。まずは技術実装から1社に絞り、必要に応じて広げる進め方をおすすめします。
すでに全部外注している場合、どこから内製化を始めるべきですか?
戦略設計からをおすすめします。意思決定権を社内に戻すことが、ほかの工程を見直す土台になるためです。次に計測分析を内製化すると、成果を自社の言葉で語れるようになります。
ハイブリッド体制は、何人くらいの社内体制があれば成立しますか?
最小構成は1人からでも成立します。社内にAIOの推進役をはっきり1人置く座組みは、別記事『AIOチームの作り方』(AIOM-176)で詳しく解説しています。人数よりも、意思決定権を誰が持つかを先に決めることが重要です。
外注の費用は、どれくらいを見ておけばよいですか?
業務範囲によって大きく変わるため、一律の相場は示せません。傾向として、技術実装のような専門工程は立ち上げに費用が集中し、運用に入ると軽くなります。コンテンツ制作や計測支援のような継続工程は、月次で一定の費用が発生し続ける形になりやすいところです。見積もりを比べるときは、金額より先に、どの工程がどの契約形態で入っているかをそろえてください。
12まとめ|今日やる3つのこと
AIOの体制設計でいちばん大事なのは、内製か外注かをまとめて選ばないことです。工程に分けてしまえば、判断はぐっと簡単になります。
外注が明確に向くのは技術実装だけ。残りは社内に置き、契約形態は工程の性質に合わせる。ここまで決まれば、体制の話は前に進みます。
今日この順でやります
自社の業務を5つの工程に書き出す
戦略設計・技術実装・コンテンツ制作・計測分析・運用改善です
4つの軸で採点する
更新頻度・機密性・専門性の習得コスト・意思決定の速さで見ます
採点結果を残しておく
次の見直しのとき、同じ基準で比べられます
AI検索では、こう聞かれています
AIOは内製と外注、どちらでやるべきですか?
「そもそもAIOの体制は、内製化と代理店のどちらかを選ぶ話なんですか?」の章で、二択にならない理由を説明しています
AIOを代理店に頼むなら、どの工程を任せるのが妥当ですか?
「LLMO対策の5工程は、どれを内製化してどれを外注しますか?」の章に、5工程の採点表があります
AI検索対策を外注するとき、契約で何を決めておくべきですか?
「AI検索対策で代理店にデータを渡すとき、契約に何を書きますか?」の章で、監督義務とデータの受け渡しを扱っています
体制はいつ見直せばいいですか?
「AIOの内製化と代理店の体制は、いつ見直せばいいんですか?」の章で、間隔と採点のやり直し方を説明しています
次に読むなら、この記事です