AI経由の流入は、どこから来たのかがログに残らないことがあります。計測の穴が広がるほど、顧客本人が自分の意思で教えてくれた情報の価値は相対的に上がります。ゼロパーティデータは、その情報を指す区分です。本記事は、定義元として広く参照されるForrester Researchの説明にもとづき、意味とAI検索時代での使いどころを整理します。

01ゼロパーティデータとは(基礎定義)

この言葉の定義元として広く参照されるのが、調査会社Forrester Researchです。同社アナリストのStephanie Liu氏は2024年11月21日の公式ブログで、顧客が自分について自発的に提供するデータだと説明しています。好み・個人的な状況・購入意図などが対象に含まれます(出典: Forrester公式ブログ)。

なおQualtricsの記事は、Forresterの定義を「顧客が意図的かつ積極的にブランドへ共有するデータ」として紹介しています(出典: Qualtrics公式)。

ゼロパーティデータは顧客が自ら意図して差し出した情報であり、行動ログの観察からは取得できません。

02なぜ「ゼロ」という数字がついているのか

データの分類には、従来ファーストパーティ・セカンドパーティ・サードパーティという区分がありました。区分の基準は、そのデータを誰が集めたかという顧客との距離です。

ゼロパーティデータは、そこに「顧客本人が意図して差し出したかどうか」という別の軸を持ち込んだ区分です。ファーストパーティよりさらに手前という意味で「ゼロ」が付いています。

Qualtricsの公式記事も、この分類の違いを整理しています(出典: Qualtrics公式・Will Webster氏ほか・2023年10月10日公開)。ゼロパーティは顧客との直接的な関係を特徴とします。加えて、顧客が便益と引き換えに自ら差し出す「価値交換」の性質も挙げられています。

03「ファーストパーティデータ」との違い(関連用語との違い)

ゼロパーティデータとファーストパーティデータは、どちらも自社で直接得るデータですが、取得方法が異なります。

観点ファーストパーティデータゼロパーティデータ
主な取得方法閲覧履歴・購買履歴などの行動観察アンケート・診断コンテンツでの自己申告
顧客の関与度受動的(気づかれずに記録される)能動的(顧客が意図して提供する)
取得できる内容実際に何をしたかという行動の事実なぜそうしたか・何を望むかという意図

Google公式のPrivacy Sandbox用語集では、ファーストパーティを「訪問しているサイトから得られるリソース」と定義しています(出典: Google公式)。同用語集にゼロパーティデータという語は登場しません。

04実務でゼロパーティデータが求められる場面

AI検索の文脈でこのデータが効くのは、次の3点です。

  1. 間接効果の補完: AI経由の流入はリファラーが欠落しやすく、別記事『GA4でAI参照を測る限界と代替手段』で扱う計測の盲点があります。顧客への直接ヒアリングは、この盲点を補う手段になります
  2. 指名検索との接続: 別記事『ゼロクリック間接効果を可視化する方法』で扱う間接効果の分析でも、顧客が自ら申告する認知経路の情報が参考になります
  3. AI回答経由の認知の裏取り: 顧客が「AIに聞いて知った」と申告した場合、そのとき何を尋ねたかまで聞ければ、自社が引用されているクエリの見当がつきます

最初の一歩は、既存の問い合わせフォームに1問足すことです。「当社をどこで知りましたか」という設問に、検索・SNS・紹介と並べて「ChatGPT・Gemini・Perplexityなどの生成AI」の選択肢を加えます。自由記述ではなく選択肢にすると、月次で件数を数えられます。設問を追加した日を記録し、それ以前の数字とは混ぜないでください。

05よくある誤解

「ゼロパーティデータはファーストパーティデータの一種にすぎない」という誤解があります。Qualtricsの整理では、両者は取得方法と顧客の関与度が異なる、区別された概念として扱われています。

「ゼロパーティデータを集めれば計測の課題がすべて解決する」という誤解もあります。あくまで顧客が回答してくれた範囲の情報であり、行動データをどこまで代替できるかは、確認できた公式資料の範囲では明言されていません。

06FAQ

Q. ゼロパーティデータは、具体的にどう集めればいいですか?

アンケート・診断コンテンツ・会員登録時のヒアリングなどが代表的な手段です。Qualtricsの記事では、こうした収集を「価値交換」の一種と説明しています。

Q. Googleは公式にゼロパーティデータという言葉を使っていますか?

Google公式のPrivacy Sandbox用語集には、ゼロパーティデータという語自体が存在しません。ファーストパーティ・サードパーティの定義のみが確認できます。

Q. AI検索の計測で、なぜゼロパーティデータが注目されているのですか?

AI経由の流入は、従来のリファラー計測で捉えにくい特性があります。顧客が自ら申告する情報は、この盲点を補う手段として位置づけられます。