AI経由の流入は、どこから来たのかがログに残らないことがあります。「ChatGPTで調べて来ました」と言われても、アクセス解析にはその記録が残っていない——そんな経験はないでしょうか。
計測の穴が広がるほど、顧客本人が自分の意思で教えてくれた情報の価値は、相対的に上がります。「ゼロパーティデータ」は、その情報を指す区分です。
この記事は、「ゼロパーティデータ」という言葉を今日はじめて調べた方に向けて書きました。定義元として広く参照されるForrester Researchの説明にもとづき、意味とAI検索時代での使いどころを整理します。
こんなふうに調べていませんか
- 「ゼロパーティデータ」という言葉を初めて見て、意味が分からなかった
- ファーストパーティデータとの違いが分からず、検索してこの記事にたどり着いた
この記事を読み終えたときに手に入るもの
- ゼロパーティデータの意味を、人に説明できるようになります
- ファーストパーティデータとの違いが、図1枚で分かります
- 自社のフォームに1問足すだけの、最初の一歩が分かります
結論30秒でわかる、この記事の結論
- ゼロパーティデータとは、顧客が自ら意図的かつ積極的にブランドへ共有するデータのことです。
- 行動を観察して得るファーストパーティデータとは、取得方法が異なります。
- AI経由の流入はリファラー情報が欠けやすく、だからこそ顧客の自己申告が計測を補う手段になります。
この記事では、ある会社のマーケティング部の2人と、専門家の会話をはさみながら進めます。
- 若葉さん(Web担当2年目)— 「そもそも、それって何ですか?」を聞く役
- 高梨課長(マーケ課長)— 実務での手のつけ方を確認する役
- 鈴木さん(AIO/SEOの専門家・本誌監修)— 答える役
01そもそもゼロパーティデータとは、AI検索で何を指すデータなんですか?
若葉さん「ゼロパーティデータ」って、初めて聞く言葉なんですが…何のことですか?
鈴木さんはい、比較的新しい区分です。ひとことで言うと、「お客さん自身が、自分から進んで教えてくれた情報」のことなんですよ。
ゼロパーティデータとは、顧客が自ら意図的かつ積極的にブランドへ共有するデータのことです。
顧客像を自己申告データで補いながらAIに正しく理解してもらう取り組みは、AI検索最適化(LLMOとも呼ばれます)とも関係します。
この言葉の定義元として広く参照されるのが、調査会社Forrester Researchです。同社アナリストのStephanie Liu氏は2024年11月21日の公式ブログで、顧客が自分について自発的に提供するデータだと説明しています。好み・個人的な状況・購入意図などが対象に含まれます(出典: Forrester公式ブログ)。
なおQualtricsの記事は、Forresterの定義を「顧客が意図的かつ積極的にブランドへ共有するデータ」として紹介しています(出典: Qualtrics公式)。
ゼロパーティデータは顧客が自ら意図して差し出した情報であり、行動ログの観察からは取得できません。
この章のまとめ
ゼロパーティデータとは、顧客が自ら意図的に差し出す情報のこと。定義元として広く参照されるのは、Forrester Researchです。
02ゼロパーティデータの「ゼロ」は、AIOのデータ区分で何を意味するんですか?
高梨課長「ファースト」「セカンド」「サード」は聞いたことがありますが、「ゼロ」はなぜ0番目なんですか?
鈴木さんいい質問です。実は、軸そのものが違うんですよ。
データの分類には、従来ファーストパーティ・セカンドパーティ・サードパーティという区分がありました。区分の基準は、そのデータを誰が集めたかという顧客との距離です。
ゼロパーティデータは、そこに「顧客本人が意図して差し出したかどうか」という別の軸を持ち込んだ区分です。ファーストパーティよりさらに手前という意味で「ゼロ」が付いています。
Qualtricsの公式記事も、この分類の違いを整理しています(出典: Qualtrics公式・Will Webster氏ほか・2023年10月10日公開)。ゼロパーティは顧客との直接的な関係を特徴とします。加えて、顧客が便益と引き換えに自ら差し出す「価値交換」の性質も挙げられています。
この章のまとめ
「ゼロ」は、顧客との距離の近さを表す言葉。ファースト・セカンド・サードが「誰が集めたか」の軸なのに対し、ゼロパーティは「顧客が意図して差し出したか」という別の軸を持ち込んでいます。
03「ファーストパーティデータ」とは、AI検索対策でゼロパーティデータと何が違うんですか?
若葉さん自社で直接得るデータという意味では、ファーストパーティと同じに聞こえるんですが…違うんでしょうか?
鈴木さん似ていますが、取得方法が違います。 そこが、いちばん混同されやすいポイントです。
ゼロパーティデータとファーストパーティデータは、どちらも自社で直接得るデータですが、取得方法が異なります。
| 観点 | ファーストパーティデータ | ゼロパーティデータ |
|---|---|---|
| 主な取得方法 | 閲覧履歴・購買履歴などの行動観察 | アンケート・診断コンテンツでの自己申告 |
| 顧客の関与度 | 受動的(気づかれずに記録される) | 能動的(顧客が意図して提供する) |
| 取得できる内容 | 実際に何をしたかという行動の事実 | なぜそうしたか・何を望むかという意図 |
Google公式のPrivacy Sandbox用語集では、ファーストパーティを「訪問しているサイトから得られるリソース」と定義しています(出典: Google公式)。同用語集にゼロパーティデータという語は登場しません。
この章のまとめ
ファーストパーティは行動観察で受動的に集まるデータ。ゼロパーティは顧客が能動的に提供するデータ。取得できる内容も、行動の事実と、意図・理由という違いがあります。
04たとえて言うと、AI検索時代のゼロパーティデータはどういうことですか?
若葉さんなんとなく分かってきたんですが、身近なたとえがあると助かります。
鈴木さんいいですよ。アンケート用紙に自分で書き込むかどうか、で考えてみてください。
アンケート用紙に、お客さん自身がペンを持って書き込む場面を想像してください。書くかどうかも、何を書くかも、すべて本人の意思にゆだねられています。これがゼロパーティデータです。
一方、お店の中でお客さんの動きをそっと観察し、どの棚の前で立ち止まったかを記録するとしたらどうでしょうか。お客さんはメモを取られていることに気づいていません。これがファーストパーティデータのイメージに近いものです。
05LLMOの実務では、どんな場面でゼロパーティデータを使うんですか?
高梨課長考え方は分かりました。それで、うちの会社では実際にどう使えばいいんでしょうか。
鈴木さんAI検索の文脈だと、特に3つの場面で効いてきます。 まずは、フォームに1問足すところから始められますよ。
AI検索の文脈でこのデータが効くのは、次の3点です。
- 間接効果の補完 — AI経由の流入はリファラーが欠落しやすく、別記事『GA4でAI参照を測る限界と代替手段』で扱う計測の盲点があります。顧客への直接ヒアリングは、この盲点を補う手段になります
- 指名検索との接続 — 別記事『ゼロクリック間接効果を可視化する方法』で扱う間接効果の分析でも、顧客が自ら申告する認知経路の情報が参考になります
- AI回答経由の認知の裏取り — 顧客が「AIに聞いて知った」と申告した場合、そのとき何を尋ねたかまで聞ければ、自社が引用されているクエリの見当がつきます
この3点を押さえることは、AI経由の流入を取りこぼさないためのAI対策の一環です。
この章のまとめ
AI検索の文脈でこのデータが効くのは、間接効果の補完・指名検索との接続・AI回答経由の認知の裏取りの3点です。
06ゼロパーティデータを集めるには、AI検索最適化としてまず何をすればいいんですか?
高梨課長集めるとなると、新しいツールの導入が必要になりますか?
鈴木さん要りません。 大事なのは、あとから数えられる形で聞くことです。
今日できる最初の一歩
既存の問い合わせフォームを開く
新しいフォームを作る必要はありません
「当社をどこで知りましたか」の選択肢を増やす
検索・SNS・紹介と並べて、「ChatGPT・Gemini・Perplexityなどの生成AI」を加えます
追加した日を記録する
自由記述ではなく選択肢にし、それ以前の数字とは混ぜずに月次で数えます
この章のまとめ
最初の一歩は、既存の問い合わせフォームに選択肢を1つ足すこと。自由記述ではなく選択肢にし、追加した日を記録して、それ以前の数字とは混ぜずに月次で数えます。
07ゼロパーティデータについて、AI対策でやってしまいがちな誤解はありますか?
若葉さんゼロパーティデータって、結局ファーストパーティデータの仲間、ということですよね?
鈴木さんそこは、よくある誤解なんです。 取得方法と、お客さんの関わり方が違うので、分けて考える必要があります。
「ゼロパーティデータはファーストパーティデータの一種にすぎない」という誤解があります。Qualtricsの整理では、両者は取得方法と顧客の関与度が異なる、区別された概念として扱われています。
「ゼロパーティデータを集めれば計測の課題がすべて解決する」という誤解もあります。あくまで顧客が回答してくれた範囲の情報であり、行動データをどこまで代替できるかは、確認できた公式資料の範囲では明言されていません。
08よくある質問
ゼロパーティデータは、具体的にどう集めればいいですか?
アンケート・診断コンテンツ・会員登録時のヒアリングなどが代表的な手段です。Qualtricsの記事では、こうした収集を「価値交換」の一種と説明しています。
Googleは公式に「ゼロパーティデータ」という言葉を使っていますか?
Google公式のPrivacy Sandbox用語集には、ゼロパーティデータという語自体が存在しません。ファーストパーティ・サードパーティの定義のみが確認できます。
AI検索の計測で、なぜゼロパーティデータが注目されているんですか?
AI経由の流入は、従来のリファラー計測で捉えにくい特性があります。顧客が自ら申告する情報は、この盲点を補う手段として位置づけられます。
ゼロパーティデータと「エンティティ」は、関係がありますか?
直接の関係はありません。エンティティはAIが対象を識別する単位、ゼロパーティデータは顧客が自ら提供する情報の区分です。両者とも、別記事でそれぞれ扱っています。
09まとめ|ゼロパーティデータを一言で言うと
ゼロパーティデータとは、顧客が自ら意図的かつ積極的にブランドへ共有するデータのことです。行動観察で受動的に集まるファーストパーティデータとは、取得方法も顧客の関与度も異なります。AI経由の流入はリファラーが欠落しやすいからこそ、顧客本人の自己申告が計測を補う手段になります。
まず、今日できることは3つです。
もう一度、今日できる3つ
既存の問い合わせフォームを開く
新しいツールは要りません
「どこで知りましたか」の選択肢を増やす
生成AIの選択肢を加えます
追加した日を記録する
それ以前の数字とは混ぜず、月次で数えます
AI検索では、こう聞かれています
ゼロパーティデータって何ですか?
「そもそもゼロパーティデータとは、AI検索で何を指すデータなんですか?」の章で、定義と出典を説明しています
ファーストパーティデータとの違いは何ですか?
「『ファーストパーティデータ』とは、AI検索対策でゼロパーティデータと何が違うんですか?」の章で、表と図を使って説明しています
AI検索の時代になぜゼロパーティデータが注目されているんですか?
「LLMOの実務では、どんな場面でゼロパーティデータを使うんですか?」の章で、3つの場面を説明しています
次に読むなら、この記事です