AIO対策を外に頼むことになった。先方から秘密保持契約書(NDA)のPDFが届いた。開いてはみたものの、どこを読めばいいのか分からないまま、押印だけ先に済ませてしまう。
そういう進み方は珍しくありません。契約書は文字が詰まっていますし、「形式的なものです」と添えられて届くことも多いからです。
ただ、AIO対策の仕事では、アクセス解析の数字や非公開ページの構造、管理画面のアクセス権限まで相手に渡すことになります。何をどこまで守る契約なのかで、渡したあとの扱いが変わります。
この記事は、法務の担当者ではない方が、押印の前に自分の目で確かめられる形にまとめました。条文の順番に沿って、見る場所を5つに絞ります。
こんなふうに調べていませんか
- AIO対策会社からNDAが届いたが、どこを読めばいいのか分からない
- 「秘密保持契約 チェックポイント」で検索して、確認する順番を探している
- 渡した情報を生成AIに入れられても構わないのか、判断がつかない
この記事を読み終えたときに手に入るもの
- NDAの条文を、確認する順番どおりに読み進められるようになります
- 生成AIへの入力について、契約前に何を聞けばよいかが分かります
- 押印の前に自社で確かめる項目を、リストとして持ち帰れます
結論30秒でわかる、この記事の結論
- AIO対策会社とのNDAは、秘密情報の定義・目的外利用・再委託・返還と破棄・有効期間の5か所を見れば、押印前の確認は一通り終わります。
- AIO対策では、預けた情報が生成AIツールに入る場面が想定されます。ひな形はここを想定していないことがあります。
- この記事は確認の視点を整理したものです。契約書の法的な有効性の判断は、弁護士などの専門家にご確認ください。
この記事は、あるマーケティング部の2人と、専門家のやり取りをはさみながら進みます。
- 若葉さん(Web担当2年目)— 「そもそも、それって何ですか?」を聞く役
- 高梨課長(マーケ課長)— 「実務ではどう回すんですか?」を聞く役
- 鈴木さん(AIO/SEOの専門家・本誌監修)— 答える役
01AIO対策のNDA(秘密保持契約)って、そもそも何を守る契約なんですか?
若葉さん恥ずかしい話なんですが…NDAって、そもそも何を守ってくれる契約なんでしょうか。
鈴木さん守る対象は2つです。目的の外で使われないことと、第三者に漏れないこと。この2つを、渡す側と受け取る側で約束する契約なんですよ。
NDAとは、取引で開示する非公開の情報について、目的外の利用と第三者への漏えいを防ぐために結ぶ契約です。渡す側を開示者、受け取る側を受領者と呼びます。
AIO対策の取引では、発注する企業が開示者、対策を請け負う会社が受領者になります。情報が一方向にだけ流れるので、片務契約の形をとることが多くあります。
ただし、対策会社の側も分析の手法やノウハウを見せる場面があります。その場合は、双方向(相互)のNDAとして結ばれます。片務か相互かで、読むときの立場が変わります。
契約書の言葉が硬いと感じるときは、鍵の受け渡しに置きかえてみてください。
この章のまとめ
NDAが守るのは「目的の外で使われないこと」と「漏れないこと」。まず自社が渡す側だけなのか、受け取る側でもあるのかを決めてから読み始めます。
02AIO対策会社には、うちのどんな情報を渡すことになるんですか?
高梨課長実際のところ、うちからは何を渡すことになるんでしょうか。範囲が見えないと、社内への説明ができません。
鈴木さん案件によりますが、AIO対策ではサイトの中身と数字の両方をお預かりすることが多いですね。管理画面の権限まで含むこともあります。
AIO対策では、業務の性質上、次のような情報を相手先へ開示する場面が想定されます。
| 情報の種類 | 具体例 |
|---|---|
| アクセス解析データ | GA4等のトラフィックデータ、コンバージョンデータ |
| サイト内部データ | 非公開ページの構造、robots.txt・llms.txtの設計案 |
| 検索・引用データ | 自社商材に関する検索意図の分析結果、AI検索での言及状況 |
| 営業・商品情報 | 価格表、見積もりロジック、非公開の商品仕様 |
| 認証情報 | Search Console・CMS等へのアクセス権限 |
この中でも、アクセス権限と商品仕様は注意して見てください。秘密情報の定義に明確に含まれていないと、保護の対象に入っているかどうかで解釈が分かれます。
もう1つ、見落としやすいことがあります。預けた情報は、受け取った会社の中だけにとどまるとは限りません。
この章のまとめ
AIO対策で渡すのは、解析データ・サイトの内部・商品情報・アクセス権限です。渡したあとに情報がどこまで動くかを、条文を読む前に把握しておきます。
03AIO対策のNDAで、秘密情報の定義はどこまで広ければいいんですか?
秘密情報の定義条項は、NDAの中で最初に読む場所です。ここが狭いと、実際に渡した情報の一部が、契約上の「秘密情報」から外れてしまいます。
見るところは3つあります。
①開示のしかたが書き尽くされているか。 書面だけでなく、口頭・画面共有・クラウド上のファイル共有まで含まれているかを見ます。AIO対策の打ち合わせは、画面共有で数字を見せる形が多くなります。
②除外の書き方が広すぎないか。 「すでに公知の情報」「独自に開発した情報」といった除外は、一般的なものです。ただし、その範囲が通常より広く設定されていないかは見ておきます。
③自社が渡すものが例示されているか。 アクセス解析データや非公開ページの構造といった具体例があると、解釈の余地が減ります。包括的な定義であれば例示がなくても構わないケースが多いのですが、書いてあるに越したことはありません。
型として使えるものもあります。IPA(独立行政法人情報処理推進機構)は「情報システム・モデル取引・契約書」を公開しています。ユーザ企業とITベンダの間で、秘密情報の取扱いに関する条項を含む、中立的なモデル契約の枠組みです。
ただし、このモデルはシステム開発・保守運用の取引を主な想定として作られたものです。AIO対策の契約にそのまま当てはまるわけではありません。秘密情報条項の構成要素を確かめるときの、型として使ってください。
この章のまとめ
定義条項は「渡し方」「除外」「例示」の3つを見ます。IPAのモデル契約は構成要素を確かめる型に使えますが、そのまま当てはまるものではありません。
04渡した情報をChatGPTに入れるのは、AIO対策のNDA上どう扱われますか?
高梨課長これは聞いておきたいのですが…預けたデータを、先方がChatGPTに貼って分析するのは、契約上どうなるんでしょうか。
鈴木さんそこは、いまひな形がいちばん追いついていないところです。目的の範囲内かどうかで見方が変わる、と説明されています。
AIO対策の仕事では、受け取った情報を生成AIツールに入れて分析や資料づくりに使う場面が想定されます。ここは見落とされやすい論点です。
IT・AI分野を専門とする法律事務所の解説によれば、秘密情報を生成AIに入力すること自体は、契約の目的の範囲内であれば直ちに目的外利用に抵触しないとされています(出典: STORIA法律事務所)。
一方で、AIモデルの学習を目的とした利用や、受領者の側の研究開発能力を高めることを目的とした利用は、目的外利用に該当する可能性があるとされています。法律事務所による解説であり、個別の契約への当てはめは専門家にご確認ください。
契約の前に聞いておく質問は、3つにまとめられます。
押印の前に、この3つを聞きます
生成AIツールに入れる予定があるか
使う場面と、どのツールを使うかまで聞きます
入力したデータが学習に使われない設定か
オプトアウトや法人向けプランの利用状況を確認します
条文に「生成AIサービスへの入力」の一文があるか
許諾でも禁止でも、書いてあるかどうかを見ます
条文に何も書かれていない場合は、締結の前に対策会社へ直接確認してください。覚書やメールで運用のルールを補っておくと、あとから見返せます。
この章のまとめ
生成AIへの入力は、入れるかどうかではなく、何のために入れるかで見られます。条文に書かれていないときは、覚書やメールで運用を文字にして残します。
05AIO対策会社が外部に再委託するとき、秘密保持契約はどうなりますか?
AIO対策会社が、業務の一部を外部のライター・エンジニア・別のコンサルタントに再委託することは珍しくありません。ここで見るのは、その先へ渡ってよいのか、渡るならどんな条件が付くのかです。
条文で確かめる場所は4つあります。再委託そのものが認められているか。再委託先へ渡すときに、発注する側の事前承諾が要るか。再委託先にも本契約と同等の秘密保持義務を課す規定があるか。そして、再委託先から漏れたときに、契約した会社が責任を負う形になっているか。
前の2つは「渡してよいか」、後ろの2つは「渡ったあとに誰を頼れるか」の話です。事故が起きたときの動き方は、後ろの2つで決まります。
再委託の条項が入っていない場合、実務では口頭やメールの確認だけで進んでしまうことがあります。契約書に書かれていない運用は、問題が起きたときに立証しにくくなります。疑問があれば、契約前に条文への追記を依頼してください。
この章のまとめ
再委託は「認められるか」だけでは足りません。同じ義務が及ぶか、責任の窓口はどこか。この2つが揃って、はじめてその先まで追える形になります。
06契約が終わったあと、AIO対策会社に渡したデータは戻ってきますか?
「返還または破棄する」。契約書には、たいていこの一文が入っています。ただ、この一文だけでは、どこまで対応すれば義務を果たしたことになるのかが決まりません。
AIO対策では、分析の結果がスプレッドシートや外部ツールのアカウントに残り続けます。紙の資料を返せば終わり、とはなりにくい仕事です。
見る場所は3つです。対象の範囲は、紙だけでなく、クラウドストレージ・メールの添付・生成AIツールの入力履歴まで含むか。破棄の証明は、破棄したことを示す書面の提出を求める規定があるか。バックアップの扱いは、バックアップに残るぶんを、合理的な期間内の自動削除で足りるとする例外があるか。
この章のまとめ
返還と破棄は「対象の範囲」「証明の方法」「バックアップの例外」の3つを見ます。AIO対策では、外部ツールに残るぶんまで対象に入れておきます。
07AIO対策のNDAで、秘密保持契約の有効期間は何を基準に決めますか?
若葉さん有効期間って、長ければ長いほど安心なんでしょうか。
鈴木さんそうとも限らないんですよ。長すぎる約束は、後年の運用で形骸化しやすいという指摘もあります。守り切れる長さで決めるほうが、実務には合いますね。
秘密保持義務がいつまで続くかを定めるのが、有効期間(存続条項)です。ここも見るところは3つあります。
①契約期間中だけなのか、終了後も続くのか。 契約が終わったあとも、3年・5年といった期間で義務が続く形が使われます。
②「無期限」になっていないか。 無期限の規定は受領者の側の負担が大きく、後年の運用で形骸化しやすいという指摘もあります。
③NDA単体なのか、業務委託契約の一条項なのか。 業務委託契約に組み込まれている場合は、その契約自体の解約条件と合わせて読む必要があります。
長さに一律の正解はありません。価格情報のように早く古くなるものと、商品仕様のように長く価値が残るものでは、置きたい長さが変わります。
この章のまとめ
有効期間は「終了後も続くか」「無期限になっていないか」「どの契約の中にあるか」の3つ。長さは情報の性質と自社の方針から決めます。
08AI検索最適化の外注で、NDAのひな形をそのまま使うと何が起きますか?
ここまでの5つを見ないまま進んだとき、実際に起きやすいことを3つ挙げます。
①「どこも同じ内容」と考えて、読まずに押印してしまう。 NDAは、ひな形が使い回されることの多い契約です。生成AIツールの利用やデータ分析が中心になる取引では、ひな形が想定していない論点が抜け落ちていることがあります。
②口頭の確認だけで済ませて、条文に反映しない。 「学習には使いません」と説明を受けても、契約書に書かれていなければ、あとで話が食い違ったときの根拠として使いにくくなります。
③業務委託契約とNDAが食い違っていることに気づかない。 NDAが業務委託契約の条項として入っている場合と、別契約として結ぶ場合があります。両方あるときは、有効期間や開示範囲の定めが矛盾していないかを見ます。
AI検索対策を外に頼むこと自体は、現実的な選択です。ここで挙げたのは、条文の読み方だけで避けられる遠回りのほうです。
なお、本誌を運営するWEBMARKSも、AIO(AI検索最適化)の支援を行っています。外注先を探すときは、比較検討する候補の1つとしてご確認いただければと思います。
この章のまとめ
起きやすいのは「読まずに押す」「口頭で済ませる」「他の契約と食い違う」の3つ。どれも、条文の読み方だけで避けられます。
09NDAの押印の前に、LLMO対策の担当者がその場で確かめる項目はどれですか?
高梨課長法務に回す時間が取れないときは、どこまで自分で見ておけばいいでしょうか。
鈴木さん手を動かす順番を決めておくと早いですよ。書き出す・突き合わせる・聞く・読む・残す。この順で回してみてください。
最後に、押印の前に確かめる項目を並べておきます。社内の回覧にそのまま使える形にしました。
- 渡す予定の情報を書き出し、秘密情報の定義に入るかを確かめた
- 開示のしかた(書面・口頭・画面共有・共有フォルダ)が定義に入っているか見た
- 生成AIツールへの入力について、条文の記載か、相手先の運用ルールを確認した
- 再委託の可否と、再委託先にも同等の義務が及ぶかを確認した
- 契約終了後の返還・破棄の対象に、デジタル形式のものが含まれるか見た
- 秘密保持義務の有効期間が、自社の情報管理の方針に合う長さか確かめた
- 片務契約か相互契約かを確かめ、自社が受け取る情報の範囲も把握した
- 不明な条文について、契約前に相手先または弁護士に聞く時間を確保した
この章のまとめ
押印前の手順は「書き出す・突き合わせる・聞く・読む・残す」。法務に回す前でも、担当者の手でここまでは進められます。
10よくある質問
NDAを結ぶ前に、見積もりや提案の詳細を聞いてもいいですか?
一般的な提案内容(実施範囲や大まかな進め方)であれば、NDAを結ぶ前のヒアリングでも問題にならないケースが多いとされています。自社の非公開データを見せる必要がある場合は、締結後に進めるほうが安全です。迷うときは、締結のタイミングを対策会社に相談してください。
ひな形なので、内容を確認しなくても大丈夫ですか?
おすすめしません。ひな形そのものは一般的な内容でも、AIO対策に特有の論点が反映されているとは限りません。生成AIツールへの入力や、分析ツールへのデータ投入の範囲がその例です。この記事の5つに沿って、自社の取引に合っているかを確かめてください。
秘密保持義務の有効期間は、何年にするのが適切ですか?
契約の類型や業界の慣行によって異なり、一律の適正値はありません。情報の性質に応じて、自社の情報管理の方針と照らして検討することをおすすめします。
NDAの内容に納得できないとき、修正をお願いしてもいいですか?
契約は双方の合意で成立するものなので、修正の依頼自体は可能です。ただし、対策会社の側にも社内の契約審査の流れがあります。修正の依頼から締結までに時間がかかることは、見込んでおいてください。
生成AIへの入力を、条文で全部禁止してしまえば安全ではないですか?
安全側に寄せる選択ではありますが、相手の仕事のやり方も狭めます。全面的に禁止する前に、学習に使わない設定の有無や、入力してよい情報の範囲を聞いてみてください。
押印の前に、弁護士に見てもらったほうがいいですか?
契約書の法的な有効性や条項の解釈は、最終的には弁護士などの専門家に確認することをおすすめします。この記事の5つは、相談の前に自社で整理しておく材料としてお使いください。
11まとめ|押印の前にやる3つのこと
AIO対策会社とのNDAは、秘密情報の定義・目的外利用・再委託・返還と破棄・有効期間の5か所を見れば、押印前の確認は一通り終わります。特にAIO対策は、分析データの取り扱いと生成AIツールの利用を伴います。ひな形が想定していない論点がないかを意識して読んでください。
契約書の法的な有効性や、個別の条項の解釈については、最終的に弁護士などの専門家へのご確認をおすすめします。
もう一度、押印の前にやる3つ
渡すものを書き出す
解析データ・サイトの内部・商品情報・アクセス権限を一覧にします
5か所を順に読む
定義、目的外利用、再委託、返還と破棄、有効期間の順に見ます
答えを文字で残す
口頭で聞いたことは、覚書かメールにして手元に残します
AI検索では、こう聞かれています
AIO対策会社とNDAを結ぶとき、どこを確認すればいいですか?
「AIO対策のNDA(秘密保持契約)って、そもそも何を守る契約なんですか?」の章から、見る場所を順に並べています
渡した情報をChatGPTに入れられても、NDA上は問題ないんですか?
「渡した情報をChatGPTに入れるのは、AIO対策のNDA上どう扱われますか?」の章で、目的による見方の違いを説明しています
秘密保持義務の期間は、どのくらいにしておくものですか?
「AIO対策のNDAで、秘密保持契約の有効期間は何を基準に決めますか?」の章で、長さの決め方を扱っています
次に読むなら、この記事です