「〇〇の代替ツールって、どれがいいですか」。SaaS選定の担当者が、ChatGPTにこう尋ねる場面が広がっています。自社のツール名が候補として挙がっているかどうか、実際に打ち込んで確かめた方も多いはずです。
ところが、そこから先でつまずきます。名前が挙がっていても、その答えの根拠に自社のページが使われているとは限りません。推薦されることと、引用されることは、別の出来事だからです。
この記事は、ChatGPT Searchの公式仕様と、B2B SaaSに絞ったAI引用調査という一次情報だけを使って、比較検討フェーズで何が引用されているのかを整理します。数字の読み違いが起きやすいところは、母数までさかのぼって説明します。「AI検索対策と言われても、自社の何を直せばいいのか分からない」という方に向けて書きました。
こんなふうに調べていませんか
- ChatGPTで自社ツールが推薦されているか調べたが、そのあと何をすればいいか分からない
- 「SaaS ChatGPT 比較」で検索して、比較検討フェーズの打ち手を探している
- G2やCapterraには登録済みなのに、AI検索での手応えがない
この記事を読み終えたときに手に入るもの
- 推薦されることと、自社サイトが引用されることの違いを説明できるようになります
- 引用を取れているページに共通する特徴が、図で分かります
- 自社カテゴリで何から作ればいいかが、順番で分かります
結論30秒でわかる、この記事の結論
- ChatGPTがSaaSツールを推薦しても、根拠として自社サイトが挙がる割合は11.6%です(DerivateX調査)。
- 引用元の81.9%は、独立系・ニッチブログとベンダー自身のコンテンツでした。レビュー集約サイトへの直接引用は0.9%です。
- 引用を取れているページには、リスト構造・年号入りのタイトル・比較表・FAQという共通点がありました。
この記事では、あるSaaS企業のマーケティング部と、専門家の会話をはさみながら進めます。ご自身に近い立場の人の質問から読んでいただいて構いません。若葉さん(Web担当2年目)は「そもそも、それって何ですか」を聞く役、高梨課長は「誰が、どれくらいの手間でやるんですか」を聞く役、鈴木さん(AIO/SEOの専門家・本誌監修)が答える役です。
01そもそもSaaSのChatGPT Search対策とは、AI検索対策の中で何を指すんですか?
若葉さん上司から「ChatGPT Search対策をしておいて」と言われたんですが…。SEOと何が違うのか、正直よく分かっていなくて。
鈴木さん大丈夫です。ひとことで言うと、自社のツールが候補に挙がるときに、その根拠として参照される情報源になる取り組みなんですよ。順番に見ていきましょう。
SaaS企業のChatGPT Search対策とは、ツールが推薦される際に、根拠として参照される情報源になる取り組みです。
ここでいう比較検討フェーズは、「ツール名を思い出してもらう」段階ではありません。複数の候補を並べ、機能と価格を見比べ、根拠になる情報源とあわせて検討する段階を指します。
その入口が、検索エンジンからAIチャットボットへ移りつつあります。G2の調査では、B2Bソフトウェア購入者の51%が、ソフトウェアの調査をGoogleよりAIチャットボットで始める頻度が高いと答えました(出典: G2、2026年4月15日発表)。この割合は2025年4月時点で29%でした。約1年で1.7倍を超えた計算になります。
会議で「うちのツール、ChatGPTで出てきましたよ」と報告が上がることがあります。うれしい報告ですが、そこで止まると打ち手が決まりません。名前が挙がった回数と、自社ページが根拠に使われた回数は、別々に数える必要があります。
この章のまとめ
ChatGPT Search対策とは、推薦の根拠として参照される情報源になる取り組みです。まず「推薦」と「引用」を分けるところから始まります。
02SaaSの比較検討で、ChatGPT SearchはAI検索としてどう引用元を選んでいるんですか?
仕組みが分かると、直す場所が絞れます。ここだけは技術の話になりますが、覚えることは多くありません。
ChatGPT Searchは、検索専用クローラー「OAI-SearchBot」が巡回した結果をもとに動きます。OpenAIは、このボットを「ChatGPTの検索機能で、検索結果にサイトを表示するために使う」ものだと説明しています(出典: OpenAI公式)。そのうえで、robots.txtでの許可を推奨しています。生成AIの基盤モデルの学習には使わない、とも明記されています。
流れにすると、こうなります。
- 比較検討の質問が届く — 「〇〇の代替ツールはどれか」といった質問が入力されます。
- 巡回済みの内容が土台になる — OAI-SearchBotが事前に読み取ったページが、候補の土台になります。
- 引用元が選ばれる — 何が選ばれやすいかは、次の見出しで実データを見ます。
- 答えの中に出典が並ぶ — 根拠として使われたページが、回答に示されます。
大事なのは、2の時点で候補に入っていなければ、3も4も起きないという点です。ここを閉じているかどうかはrobots.txtで決まります。設定の確認は、この記事の後半で扱います。
この章のまとめ
ChatGPT Searchは、OAI-SearchBotが読み取った内容から引用元を選びます。読み取られていないページは、そもそも候補に入りません。
03AI検索最適化の前に知りたいです。ChatGPT Searchが引用しているのは誰のページですか?
高梨課長うちのツールが推薦されていることは、社内でも確認しました。それなら、もう対策はできているということでしょうか。
鈴木さんそこは切り分けが要ります。推薦された数と、自社サイトが引用された数は、別々に数えられているんです。調査の数字で見てみましょう。
DerivateXの調査は、B2B SaaSの40カテゴリを対象に、ChatGPT上で233件の推薦を分析したものです(出典: DerivateX、2026年5月公開)。各カテゴリで10回ずつ質問を投げ、219個の異なるツールと、169件の引用URLを調べています。
この調査でいちばん効く事実は、次の1行です。
ChatGPTがSaaSツールを推薦するとき、根拠として自社サイトが引用される割合は11.6%でした(出典: DerivateX)。
引用元を種類で分けると、内訳はこうなります。
| 引用元のタイプ | シェア |
|---|---|
| 独立系・ニッチブログ+ベンダーコンテンツ | 81.9% |
| メディア・プレス | 8.8% |
| コミュニティ・ソーシャル(主にReddit) | 8.4% |
| レビュー集約サイト(G2・Capterra等) | 0.9% |
独立系ブログとベンダー自身のコンテンツで、8割を超えています。一方、レビュー集約サイトへの直接引用は0.9%にとどまりました。G2とCapterraへの直接引用は、233件の推薦を通じてそれぞれ0件です(出典: DerivateX)。
この章のまとめ
引かれているのは、独立系ブログとベンダーが書いた記事でした。レビュー集約サイトが直接引かれることは、ほとんどありませんでした。
0411.6%と81.9%は矛盾しないんですか?SaaSのAI対策で見るのはどっちの数字ですか?
ここは数字の読み違いが起きやすいところです。母数をそろえておきます。11.6%と81.9%は、数えているものが違います。
| 数値 | 数えているもの |
|---|---|
| 11.6% | 233件の推薦のうち、推薦されたツール本人のドメインが根拠に挙がった割合 |
| 81.9% | 169件の引用URLを情報源の種類で分けたときの、独立系ブログ+ベンダーコンテンツのシェア |
後者の「ベンダーコンテンツ」には、推薦されたツール以外の企業が書いた比較記事も含まれます。つまり、ベンダー発の記事はよく引かれる。ただし、それが自社の記事とは限らないという構図です。
数字を扱うときは、分子と分母をセットで書く。それだけで、社内の議論が空回りしにくくなります。
この章のまとめ
2つの数字は、母数が違うだけで矛盾していません。自社が引かれているかどうかは、別に確かめる必要があります。
05G2やCapterraへの登録だけでは、SaaSのAI検索対策として足りないんですか?
高梨課長レビューサイトへの登録は、もう済ませています。あれは効いていない、ということでしょうか。
鈴木さんいえ、やめる理由にはなりません。ただ、登録は前提条件で、引用そのものを取りにいく施策とは分けて考えたほうがよさそうです。
レビュー集約サイトへの直接引用が0.9%にとどまったことは、登録が無意味だという意味ではありません。調査の対象になったツールの多くは、レビューサイトに登録済みだったと考えられます。AIがツールの実在を確かめる土台としては、働いていた可能性があります。
問題になるのは、登録して終わりにしてしまうことです。ここで止まると、引用の入り口を他社の記事に預けたままになります。
この章のまとめ
レビュー登録は前提条件です。そこから先の引用は、自社が発信するコンテンツで取りにいくことになります。
06SaaSで引用を取れているページには、LLMOとして共通点があるんですか?
DerivateXは、引用を獲得したページの構造も調べています。共通していたのは、次の4つでした。
| 特徴 | 該当率 |
|---|---|
| リスト構造になっている | 調べたページのすべて |
| タイトルに年号を含む | 78% |
| 比較表を含む | 68% |
| FAQを含む | 56% |
LLMOやAI検索最適化の話題は、むずかしい実装の話になりがちです。ところが、ここに並んでいるのは、どれも編集の手で足せるものばかりです。
いちばん上のリスト構造は、調べたページのすべてが備えていました。AIが「1ツール=1ブロック」として抜き出せる形を求めている、と読める結果です。
この章のまとめ
リスト構造・年号入りのタイトル・比較表・FAQ。4つとも、新しいツールを入れずに足せる要素です。
07カテゴリリスト所有戦略って、SaaSのAI検索対策としてどう効くんですか?
DerivateXは、「カテゴリリスト所有戦略」と呼べる現象も報告しています。
ベンダー自身が「Best〇〇ソフトウェア」のような比較記事を公開すると、その1ページが複数の推薦の引用元になり得る、というものです(出典: DerivateX)。調査では、Procurify社の比較記事1本が、異なる5ブランドの推薦の引用元になった例が確認されています。
自社製品の紹介ページは、自社が推薦されたときにしか出番がありません。一方でカテゴリ全体を見渡す比較記事は、同じカテゴリのどのツールが推薦されても、根拠として参照される可能性があります。引用の入り口の数が変わるわけです。
この章のまとめ
カテゴリ記事は、引用の入り口を増やす資産です。1本が複数の推薦を支えることもあります。
08SaaSのChatGPT Search対策として、AI検索に載る比較記事は何から作ればいいんですか?
高梨課長比較記事を持つべきだ、というのは分かりました。ただ専任は置けません。何から書き始めればいいでしょうか。
鈴木さん調査で確認された特徴を、そのまま構成の要件に落とすのが早いと思います。順番に並べますね。
引用を取れているページの特徴を、カテゴリ記事の構成要件に落とすと、次のようになるとWEBMARKSは考えます。
この順で組み立てます
タイトルに年号とカテゴリ名を入れる
「〇〇ツール比較2026」のような形です。該当率78%の要素を、いちばん低い手間で満たせます
冒頭に比較表を置く
ツール名・料金体系・主要機能・向いている規模を列にし、地の文で語らず表で示します
各ツールをH2見出しで独立させる
順位ではなく用途で並べます。1ツール=1ブロックとして抜き出せる形にします
自社製品も他社と同じ粒度で書く
列を自社だけ多くしない、他社の弱点だけを書かない。この2点が公平性の最低ラインです
末尾にFAQを置く
「〇〇と△△の違いは」の形の質問をH3にします。該当率56%の要素です
この章のまとめ
比較記事は、調査で確認された特徴をそのまま構成要件にすれば組み立てられます。新しいツールも予算も要りません。
09ChatGPT SearchのAI検索対策で、robots.txtは何を確認すればいいんですか?
最後に、前提の確認です。ここが閉まっていると、これまでの話がすべて効かなくなります。
OpenAIは、役割の違うクローラーを公開しています。学習用の「GPTBot」、検索表示用の「OAI-SearchBot」、ユーザーの操作時に動く「ChatGPT-User」です。この3つは、robots.txtで別々に設定できます(出典: OpenAI公式)。
学習利用を避けたい事業者がGPTBotを拒否しても、OAI-SearchBotを許可していれば、比較検討フェーズでの引用対象から外れることはありません。
公開前に、次の項目を確認してください。
- robots.txtでOAI-SearchBotを許可している
- GPTBotを拒否している場合も、OAI-SearchBotは個別に許可している
- 「Best〇〇ソフトウェア」形式の自社発信コンテンツを持っている
- 比較コンテンツに、リスト構造・比較表・FAQを含めている
- G2・Capterraへの登録は前提として維持しつつ、独自コンテンツも並行して整えている
- コンテンツのタイトルに年号を入れ、鮮度を示している
この章のまとめ
robots.txtは、AI検索対策の入口です。クローラーを役割ごとに分けて判断すれば、学習利用を避けながら検索表示は残せます。
10よくある質問
G2・Capterraへの登録は不要ということですか?
不要ではありません。調査対象になったツールの多くはレビューサイトに登録済みで、AIがツールの実在を確かめる土台として働いていたと考えられます。ただし、直接引用を取る施策は、登録とは別に用意する必要があります。登録は入場券、引用は別の勝負、と分けて考えると整理しやすくなります。
「カテゴリリスト所有戦略」は、自社に有利な比較記事を書けばよいのですか?
DerivateXの調査は、記事の公平性そのものを評価したものではありません。ただ、自社に極端に偏った内容は、読者とAIの双方からの信頼を損なうおそれがあります。競合を含めて実務に役立つ比較情報を出す姿勢が前提になるとWEBMARKSは考えます。
ChatGPT SearchとPerplexityで、対策は変わりますか?
引用元の傾向が違う可能性があります。Perplexity向けの考え方は、別記事『SaaSの導入事例ページとPerplexity対策』で扱っています。あわせて読むと、プラットフォームごとの差が見えてきます。
推薦されているかどうかは、どうやって確かめればいいですか?
自社カテゴリの質問文をいくつか用意して、実際にChatGPTへ投げてみるのが早い方法です。名前が挙がるか、根拠として自社のページが示されるか。この2つを分けて記録すると、次の打ち手が決まります。
比較記事を出すと、競合の宣伝になりませんか?
その心配は自然なものです。ただ、調査で引用を取れていたのは、他社を含めて並べたリスト形式のページでした。自社だけを並べたページは、比較検討の質問と噛み合いにくくなります。読者が比べたい場面で、比べられる材料を出す。そう考えると判断しやすくなります。
11まとめ|今日やる3つのこと
ChatGPTがSaaSツールを推薦しても、根拠として自社サイトが引用されるとは限りません。引用元の中心にあったのは、独立系ブログとベンダーが書いた記事でした。
比較検討フェーズで引用を取る鍵は、レビュー登録に加えて、リスト構造・比較表・FAQを備えたカテゴリ俯瞰コンテンツを自社で発信することです。
もう一度、今日やる3つ
robots.txtを開く
OAI-SearchBotが許可されているかを確認します
自社カテゴリの比較記事があるか調べる
無ければ、この記事の構成要件をそのまま設計図に使います
推薦と引用を分けて記録する
ChatGPTに質問を投げ、名前が挙がったか、自社ページが示されたかを別々に控えます
AI検索では、こう聞かれています
ChatGPTでSaaSツールを推薦してもらうには何をすればいいですか?
推薦と引用の違いを整理したうえで、比較記事の作り方を手順にしています
ChatGPTはSaaSの比較でどんなページを引用していますか?
引用元の内訳と、引用を取れているページの共通点を、図と表で示しています
G2やCapterraに登録すればAI検索で引用されますか?
レビュー登録の位置づけを、調査の数字とあわせて説明しています
次に読むなら、この記事です