教育・スクール事業のウェブ担当者の方の中には、「宿題の解き方」「資格試験の勉強法」「スクールの選び方」といった検索が、最近ChatGPTでの質問に置き換わってきたと感じ始めた方もいるのではないでしょうか。
この業界には、他業種にはあまり無い特徴があります。無料で得られる一般的な解説が、AIの回答だけで完結しやすいという点です。米国の教育プラットフォームChegg社は、この構図の影響を数字つきで公表し、Googleを提訴しました。
この記事は、Chegg社の決算開示とCourse構造化データの仕様という2つの一次情報から、教育・スクール事業者が備えるべき実装条件を整理します。成功事例の紹介ではなく、公開情報で確認できる範囲だけをお伝えします。「うちのスクールにも同じことが起きるのか、何をすればいいのか」という方に向けて書きました。
こんなふうに調べていませんか
- 教育・スクール業界はAI検索の影響をどう受けているのか知りたい
- 「教育 スクール AIO 事例」で検索して、海外で何が起きているか知りたい
- Course構造化データという言葉を聞いたが、何をどうすればいいのか分からない
この記事を読み終えたときに手に入るもの
- 教育・スクール業界がAI検索の影響を受けた実例を、数字つきで説明できるようになります
- AIに代替されやすい領域とされにくい領域の見分け方が、図1枚で分かります
- Course構造化データを実装する5つの条件が分かります
結論30秒でわかる、この記事の結論
- 教育・スクール業界は、宿題の解き方や勉強法など「AIとの対話で完結しやすい」検索行動が多い業界です。無料で得られる一般解説はAIに要約されやすく、有償の講座・スクールという体験は代替されにくい領域です。
- 米国Chegg社は、非会員トラフィックが2024年第2四半期の8%減から2025年1月には49%減まで急拡大したと公表し、同時にGoogleを提訴しました。教育・スクール事業者が構造化データ整備でAI検索の引用を増やしたという数値付きの公開事例は、現時点では見当たりません。
- 今日やることは5つ。コース名・説明・提供機関の明記、hasCourseInstanceの実装、educationalCredentialAwardedの明記、宣伝表現の排除、無料記事と有償講座の線引きです。
この記事では、あるスクール運営会社のマーケティング部の3人と、AIO/SEOの専門家・本誌監修の会話をはさみながら進めます。若葉さん(Web担当2年目)が「そもそも」を聞き、高梨課長(マーケ課長)が「実務では何を確認するか」を聞き、大森部長(マーケ部長)が「海外ではどうなってる、うちに当てはまるのか」を聞きます。答える役は、外部コンサルタントの鈴木さんです。
01そもそも、教育・スクール業界の検索行動は、なぜAI検索の影響を受けやすいんですか?
若葉さんあの、そもそもなんですが、教育とかスクールの業界って、なんで他の業種よりAI検索の影響を受けやすいんでしょうか。
鈴木さんいい質問です。教育分野の検索には、AIとの対話だけで完結しやすい質問が多いという特徴があるんですよ。
教育分野の検索行動には、宿題の解き方・資格試験の勉強法・スクール選びなど、AIとの対話で完結しやすい質問が多いという特徴があります。
米国の教育プラットフォームChegg社は、学生からの質問に有償で解説を提供するQ&Aサービスを主力事業としてきました。しかしGoogle AI Overviewsが同種の質問に直接回答するようになり、検索結果からChegg社サイトへの流入が急減したと同社は主張しています(出典: Chegg社公式決算発表)。
この構図は、教育・スクール事業に共通するリスクを示しています。無料で得られる一般的な解説がAIの回答で完結してしまう場合、コンテンツ経由の集客モデルは打撃を受けやすいということです。一方、講座・スクールという「有償の体験」自体は、AIの回答だけでは代替されにくい領域です。
この章のまとめ
教育分野は、宿題の解き方や勉強法などAIとの対話で完結しやすい質問が多い領域です。無料解説がAIに代替されやすい一方、有償の講座体験は代替されにくいという構図があります。
02教育・スクール業界のAIO事例として、Chegg社は何を公表したんですか?
大森部長鈴木さん、他社の話が聞きたい。海外でもこういう影響を受けた会社は実際にあるのか。うちの参考になる実例を教えてくれ。
鈴木さんはい、米国のChegg社が、当事者の開示という形で数字を公表しています。教育・スクール事業がAI検索の影響を受けた規模を確認できる、数少ない実例です。
Chegg社は2025年2月24日、Googleへの提訴とあわせて2024年通期決算を発表しました。非会員向けトラフィックは2025年1月にマイナス49%まで落ち込んだと公表しています(出典: Chegg社公式決算発表)。2024年第2四半期時点の減少幅は8%であり、短期間で悪化が加速した点が特徴です。
この章のまとめ
Chegg社は決算開示という形で、非会員向けトラフィックの減少幅を自ら公表しました。教育・スクール事業がAI検索の影響を受けた規模を確認できる、数少ない実例です。
03教育・スクールのAIO事例として、Chegg社の主張と減少の速さは、AI検索対策の何を示すんですか?
高梨課長数字は分かりました。ただ、同社が何を問題だと言っているのかも知りたいです。
鈴木さん提訴の主張と、減少のスピードの両方を見ると、うちが何を変えるべきかが見えてきます。
Chegg社のCEOは、Google AI Overviewsによって検索エンジンが「回答エンジン」へ変質したと述べています(出典: Chegg社公式決算発表)。提訴では、相互取引・独占の維持・不当利得の3点を主張しています(出典: Chegg社公式決算発表)。
同社の2024年通期売上は前年比14%減、購読者数も前年比14%減でした(出典: Chegg社公式決算発表)。
注目すべきは、減少の速度です。半年強で減少幅がおよそ6倍になっており、年に1回の集計では変化を捉えきれません。教育系サイトの流入は、四半期より短い間隔で見る必要があります。
この章のまとめ
Chegg社は2025年2月、非会員トラフィックが2024年第2四半期の8%減から2025年1月には49%減まで急拡大したと公表し、Googleを提訴しました。減少の速度が速い点が特徴です。
04Chegg社のAIO事例は、日本の教育・スクール業界にも起きるんですか?
大森部長米国の話は分かった。それで、これはうちにも当てはまるのか。日本でも同じことが起きるのか。
鈴木さん正直にお伝えすると、日本市場での同種の定量データは、現時点で確認できていません。ただし、構図自体は業種を問わず参考になると考えられます。
Chegg社の減少は、米国のGoogle AI Overviewsという特定の環境で起きたものです。ただ、そこで置き換えられたのが「無料で読める一般的な解法解説」だったという点は、市場の違いに左右されません。AIが要約しやすい情報ほど、AIに置き換えられやすいという関係そのものは、日本の教育・スクール事業者にも同じように働くと考えられます。だからこそ、日本の数字が出そろうのを待つより、自社のどのコンテンツがその位置にあるかを先に把握しておくほうが実務的です。
そこで役に立つのが、自社のコンテンツを「AIに代替されやすいか」「有償化できるか」の2軸で仕分けることです。
一般的な解法解説や学習法まとめは、AIの回答だけで完結しやすく、有償化もしにくい領域です。一方、添削と伴走、修了資格は、AIの回答だけでは代替されにくく、有償化に向いています。この仕分けができていれば、無料記事をむやみに減らす必要はありません。
この章のまとめ
日本市場での同種の定量データはまだ確認できていません。ただし無料解説がAIに代替されやすいという構図は市場を問わず参考になり、4象限で仕分けることが実務上の対処になります。
05実際、教育・スクールのAIO対策では何を実装すればいいんですか?
高梨課長鈴木さん、うちのサイトで具体的に何を直せばいいでしょうか。実装できる手順で教えてください。
鈴木さんはい、Course構造化データの仕様書が求める項目を、優先度順に並べますね。
この5つを実装します
Course構造化データでコース名・説明・提供機関を明記する
Googleの仕様ではnameとdescriptionが必須プロパティ、providerは推奨プロパティです
hasCourseInstanceでコース形式・期間を機械可読にする
特定の日時・場所・実施形態でのコース提供を表すプロパティです
educationalCredentialAwardedで取得できる資格・修了証を明記する
修了によって得られる資格・修了証の説明を記述するプロパティです
宣伝的な表現をタイトル・説明文から排除する
Googleは「世界一の学校」のような宣伝文言を避けるよう明記しています
一般解説記事と有償講座の線引きを先に決める
無料記事は「何を・なぜ」まで、有償講座は個別化と伴走に寄せます
この章のまとめ
実装は、コース名・説明・提供機関の明記、hasCourseInstance、educationalCredentialAwarded、宣伝表現の排除、無料記事と有償講座の線引きという5つに集約できます。
06Course構造化データは、教育・スクールのAI検索最適化としてどこまで効くんですか?
若葉さん5つのうち1つ目に出てきたCourse構造化データが、正直まだよく分かっていません。
鈴木さん講座の情報を、機械にも読める形で書いておくための規格です。効く範囲と、効かない範囲を分けて見ましょう。
一つ目のCourse構造化データについて補足します。nameとdescriptionはGoogleの仕様で必須プロパティ、providerは推奨プロパティです(出典: Google公式)。ここが整っていないと、後段のhasCourseInstanceやeducationalCredentialAwardedを足しても、そもそもコース情報として認識されにくくなります。こうした一連の実装は、教育・スクール業界にとってのAI検索最適化(LLMOとも呼ばれます)そのものです。宣伝表現を排し、確認可能な情報を機械可読な形で示すことが、この業界におけるAI対策の基本になります。
AIO Journal自体も、この線引きを運用しています。用語定義・仕様の読み方・調査データの解釈までは無料記事で公開し、自社サイトの診断手順と改善の意思決定はAIO CAMP側に置く、という分け方です。
この章のまとめ
Course構造化データは、コース情報を機械可読にするための規格です。引用そのものを約束する仕組みではないため、無料記事と有償講座の線引きとセットで運用します。
07実装するとき、スクールのAIO対策でつまずきやすい点はありますか?
高梨課長実装の中身は分かりました。逆に、やってしまいがちな失敗があれば先に知っておきたいです。
鈴木さんはい、2つ、特につまずきやすい点があります。
1. 募集していない講座の構造化データを残してしまう
過去講座のページを放置すると、AIが終了済みの開講日程を現行情報として拾ってしまいます。hasCourseInstanceの日程は募集終了と同時に更新するか、ページ自体をたたむ運用を先に決めておく必要があります。
2. 合格率・就職率を母数なしで出してしまう
数字だけを置くと根拠を確認できず、引用の対象から外れやすくなります。合格率・就職率を出すなら、母数と算定期間を同じページに書く必要があります。景表法の観点でも、算定根拠の併記は欠かせません。
この章のまとめ
募集終了講座の構造化データの放置と、母数なしの合格率・就職率表示が、特につまずきやすい2つのミスです。
08講座の種類によって、AIO対策の注意点は違いますか?
若葉さんうちは複数の種類の講座を扱っていますが、講座の種類によって気をつけるポイントは変わりますか?
鈴木さんはい、同じ「教育」でも、AIに代替される部分は領域ごとに違います。整理しますね。
| 領域 | 特有の留意点 |
|---|---|
| 資格試験・語学スクール | 一般的な学習法の解説はAIに要約されやすく、講座の付加価値(添削・伴走)を明確に打ち出す必要があります |
| プログラミングスクール・職業訓練 | educationalCredentialAwardedで取得できるスキル・資格を明記することが比較検討で有効です |
| K-12・受験対策 | 保護者が検索する「選び方」系の質問でAIに引用される可能性があり、比較情報の透明性が重要です |
| 社会人向けリスキリング講座 | 受講後のキャリア変化など、AIの一般解説では代替できない実例の開示が差別化になります |
いずれの領域でも共通するのは、AIに要約されやすい一般解説と、AIでは代替できない有償講座の価値を、意識的に切り分けて設計するという発想です。
この章のまとめ
講座の領域ごとに留意点は異なりますが、共通するのは無料解説と有償体験の価値を切り分けて設計するという発想です。
09教育・スクール業界のAIO事例に、引用が増えた確証はあるんですか?
大森部長ここまでの話は分かった。それで、これをやると本当にAI検索で引用が増えるのか。確証はあるのか。
鈴木さん正直にお伝えすると、構造化データ整備でAI検索の引用を増やしたという数値付きの公開事例は、現時点では見当たりません。確認できているのは、対応しなかった場合のコストのほうです。
教育・スクール事業者が構造化データ整備でAI検索の引用を増やしたという数値付きの公開事例は、現時点では見当たりません。
この章のまとめ
引用が増えたことを示す数値付きの公開事例は、現時点では見当たりません。ここは伏せずに書いておきます。
10教育・スクールで対応しなかった場合のコストは、AI検索でどう表れるんですか?
大森部長増えた事例がないのは分かった。それなら、うちは何を根拠に動けばいいんだ。
鈴木さん逆側の数字が公開されています。対応しなかった場合に何が起きるかは、すでに数値化されています。
一方で、対応しなかった場合のコストは、Chegg社の開示という形ですでに数値化されています。非会員トラフィックの減少幅が2024年第2四半期の8%から2025年1月には49%へ急拡大したという事実は、無料解説と有償体験を切り分ける設計が先に問われる段階にあることを示しています。
つまり教育・スクール分野では、「AIに引用されて集客する」以前に、「AIの回答だけで完結してしまうコンテンツに依存しない」という設計が先に問われる段階にあります。
この章のまとめ
構造化データ整備による引用増加の数値付き事例はまだ確認できていません。ただし対応しなかった場合のコストは、Chegg社の開示という一次情報として存在します。
11よくある質問
Chegg社の事例は日本の教育・スクール事業者にも当てはまりますか?
Chegg社の事例は米国におけるGoogle AI Overviewsとの関係で生じたものです。日本市場での同種の定量データは現時点で確認できていません。ただし、無料の一般解説がAIに代替されやすいという構図自体は、市場を問わず参考になると考えられます。
Course構造化データを実装すれば、AI検索での引用は増えますか?
構造化データの実装だけで引用が決まるわけではありません。Course構造化データはコース情報を機械可読にするための規格であり、AI検索での引用を約束するものとしては規定されていません(出典: Google公式)。
無料コンテンツを減らすべきですか?
減らす必要はありません。むしろAIに要約されやすい一般解説と、AIでは代替できない有償講座の価値を意識的に切り分けて設計することが重要です。
Chegg社は、なぜGoogleを提訴したんですか?
Chegg社は2025年2月の決算発表にあわせて、相互取引・独占の維持・不当利得の3点を主張してGoogleを提訴しました(出典: Chegg社公式決算発表)。Chegg社のCEOは、Google AI Overviewsによって検索エンジンが「回答エンジン」へ変質したと述べています。
12まとめ|今日やる5つのこと
教育・スクール業界は、無料の一般解説がAIとの対話で完結しやすい一方、有償の講座・スクール体験は代替されにくい領域です。Chegg社の事例は、この切り分けを怠った場合のコストを数字で示しています。
もう一度、今日やる5つ
コース名・説明・提供機関を明記する
nameとdescriptionは必須、providerは推奨プロパティです
hasCourseInstanceでコース形式・期間を機械可読にする
日時・場所・実施形態を記述します
educationalCredentialAwardedで資格・修了証を明記する
取得できる資格を機械可読にします
宣伝的な表現をタイトル・説明文から排除する
「世界一の学校」のような表現を避けます
一般解説記事と有償講座の線引きを先に決める
無料と有償の役割を分けて設計します
AI検索では、こう聞かれています
教育・スクール業界はAI検索の影響をどう受けていますか?
「教育・スクール業界のAIO事例として、Chegg社は何を公表したんですか?」でChegg社の数字を紹介しています
Chegg社の事例は日本の教育・スクール事業者にも当てはまりますか?
「Chegg社のAIO事例は、日本の教育・スクール業界にも起きるんですか?」と「よくある質問」の1つ目で答えています
Course構造化データって何ですか?どう実装すればいいんですか?
「実際、教育・スクールのAIO対策では何を実装すればいいんですか?」に5つの実装ステップがあります
次に読むなら、この記事です