AIチャットボットが、自信ありげに誤った情報を答える——生成AIの実務活用で繰り返し話題になる現象です。この課題への対策の1つが「グラウンディング」と呼ばれる技術です。ただし、この技術で解決するのはどこまでか。Google・Anthropicが公開している仕様を並べると、できることとできないことの線引きが見えてきます。
01グラウンディングとは(基礎定義)
Google公式は、「Grounding with Google Search」をGemini APIとGoogle AI Studioで提供しています。Geminiモデルをリアルタイムのwebコンテンツに接続する機能だという説明です(出典: Google公式)。
Google公式は、この機能の効果としてハルシネーション(AIが事実に基づかない情報を生成する現象)の削減を挙げています。モデルの回答を実世界の情報に基づかせることで、より事実に即した情報提供に役立つという説明です(出典: Google公式)。
02仕組み:検索結果を経由して回答を組み立てる
基本的な流れは3段階です。質問を受け取ったモデルが、まずGoogle検索で関連情報を取得し、その結果に基づいて回答を組み立て、根拠となった情報源へのリンクを添えて返します。学習済みの知識だけで答えるのではなく、回答を作る前に一度、外部の情報を取りに行く工程が挟まる——ここがグラウンディングの有無を分ける違いです。
Google公式によると、グラウンディングを有効にした際のレスポンスには2つの要素が含まれます。根拠となる情報源への「インラインの裏付けリンク」と、検索結果に誘導する「検索候補」です(出典: Google公式)。ユーザーは、回答の元になった情報源を確認できます。
03「RAG」との違い(関連用語との違い)
グラウンディングは、AIの回答生成に外部情報を組み込むという点で、RAG(別記事『RAGの仕組みとは?AI検索で引用される文章の原理を徹底解説』参照)と近い発想です。ただし情報源の扱い方には違いがあります。
| 手法 | 情報源 | 主な目的 |
|---|---|---|
| RAG | 自社が用意した文書ベース | 自社データにもとづく回答生成 |
| グラウンディング(Google Search) | リアルタイムのWeb検索結果 | 最新情報の反映と根拠の明示 |
Anthropic公式も、近い仕組みを提供しています。Web検索ツールがClaudeにリアルタイムのWebコンテンツへの直接アクセスを与え、回答には検索結果の出典を示す引用が含まれるという説明です(出典: Anthropic公式)。Anthropic公式はこの仕組みを主に「引用(citations)」という語で説明しており、呼び方は企業によって異なります。
04実務でグラウンディングが関わる場面
グラウンディングは、AIを実務で活用する上での信頼性に直結する技術です。代表的な4つの場面を紹介します。
- 最新情報が必要な回答: 学習データの知識カットオフ以降の出来事について、Google公式はグラウンディングが最新情報への回答に役立つとしています(出典: Google公式)
- 事実確認が必要な回答: 価格・統計・固有名詞など、誤りが許されない情報を扱う場面では、回答そのものより先に付随する裏付けリンクを開き、引用元が一次情報かどうかを確認する運用とセットにします(記事公開前の点検は別記事『記事のハルシネーションリスクをAIにセルフレビューさせる』も参照)
- AIが引用する情報源の理解: 自社サイトがAIの回答にどう引用されるかを考える上で、AI側が参照する情報源の仕組みを理解しておく意味があります(別記事『クエリファンアウトとは|1つの質問が分解される仕組み』参照)
- 費用の見積もり: Google公式によると、Gemini 3系のモデルでは実行された検索クエリごとに課金される一方、Gemini 2.5以前のモデルではプロンプトごとの課金になります(出典: Google公式)。1回の依頼で検索が何度実行されるかによって、前者は費用が変動します。見積もりの単位が「依頼数」なのか「検索回数」なのかを、使うモデルごとに確認してください。 ここを取り違えると、事前の試算と実際の請求額がずれます
05よくある誤解
「グラウンディングをすればハルシネーションはなくなる」という誤解。Google公式は、グラウンディングがハルシネーションの削減に役立つと説明していますが、完全になくなるとは述べていません(出典: Google公式)。「削減」であって「除去」ではない——AIの出力をそのまま公開しない人の確認工程は、グラウンディングを有効にしても外せません。
「グラウンディングは1社だけの機能」という誤解もあります。GoogleはGemini APIで「Grounding with Google Search」を、AnthropicはClaudeの「Web search」ツールで近い仕組みを提供しています。呼び方や実装は異なりますが、外部情報で回答を裏付けるという発想は共通しています。「Geminiの機能名」として脇に置いてしまうと、Claudeなど他のAIも同じように自社サイトを読みに来ている前提を見落とします。
06FAQ
Q. その回答がグラウンディングされたものかどうかを見分けられますか?
手がかりになるのが、回答に付く要素です。Google公式は、グラウンディングを有効にしたレスポンスに、根拠への「インラインの裏付けリンク」と「検索候補」が含まれると説明しています(出典: Google公式)。逆に、出典が1つも示されないまま断定的に語られる回答は、外部情報の裏付けを経ていない可能性を疑う材料になります。
Q. グラウンディングとRAGは同じ技術ですか?
近い発想ですが、情報源が異なります。RAGは主に自社が用意した文書ベースを検索対象にします。一方でグラウンディング(Grounding with Google Search)は、リアルタイムのWeb検索結果を情報源にします(出典: Google公式)。
Q. 自社サイトがAIのグラウンディングに使われるための対策はありますか?
引用元として選ばれるための具体的な条件は、確認できた公式資料の範囲では明言されていません。ただし前提条件は仕様から読み取れます。Grounding with Google SearchはGoogle検索を経由してWebコンテンツに接続する機能である以上、Google検索にインデックスされていないページは出発点に立てません。Anthropic側も同様にWeb検索ツールを経由します。まず確認すべきは、順位より前に、対象ページがインデックスされているか、そしてAIクローラーを意図せず遮断していないか(別記事『AIクローラー別robots.txt設計テンプレ集【2026年版】』参照)の2点です。