AIに手伝ってもらった原稿ほど、読み返してもすらすら通ってしまう。公開前チェックのいちばん厄介なところは、たぶんここにあります。
なめらかに読めるということは、引っかかりが無いということです。引っかかりが無ければ、言い切りすぎた一文も、出典を書き忘れた数字も、そのまま通過します。書いた本人の目には、それが自然な文に見えているからです。
この記事は、書き上げた記事本文をもう一度AIに読ませて、あとで困りそうな箇所を先に一覧にしてもらうプロンプトを、そのままコピーして使える形でまとめました。事実の正誤を判定する作業ではありません。本文の書き方だけを見て、疑わしい箇所に印を付ける作業です。
こんなふうに調べていませんか
- AIに加筆させた記事を、公開前にどう点検すればいいか決まっていない
- 言い切りすぎた表現や、出典のない数字を見落としていないか不安がある
- ファクトチェックの前に、どこを重点的に見ればいいのかを知りたい
この記事を読み終えたときに手に入るもの
- 公開前の記事から、リスクが疑わしい箇所を種別ごとに洗い出せます
- 返ってきた一覧のどれから直すかを、自分で決められるようになります
- セルフレビューとファクトチェックの役割の違いを、人に説明できるようになります
結論30秒でわかる、この記事の結論
- 記事本文と自社の編集基準をAIに渡すと、断定しすぎた表現・出典のない数値・実在を確かめられない固有名詞が、種別ごとに並んで返ってきます。
- 判定しているのは事実の正誤ではありません。本文の書き方と、出典が添えられているかどうかだけです。
- 返ってくるのは、疑わしい箇所の一覧です。直すかどうかを決めるのは、最後まで人の側です。
この記事では、オウンドメディアを担当する2人と、専門家の会話をはさみながら進めます。ご自身に近い立場の人の質問から読んでいただいて構いません。
- 若葉さん(Web担当)—「そもそも、それって何ですか?」を聞く役
- 高梨課長(マーケ課長)—「うちの手間でどう回すんですか?」を聞く役
- 鈴木さん(AIO/SEOの専門家・本誌監修)— 答える役
01記事のハルシネーションのリスクをセルフレビューさせると、AI検索対策では何が変わるんですか?
若葉さん書いたものを、もう一度AIに読ませるんですよね。自分で読み返すのと、何が違うんでしょうか。
鈴木さん見ているところが違うんですよ。自分で読み返すときは、話が通っているかを追いますよね。ここでAIに頼むのは、話の中身ではなく、書き方のほうの点検なんです。
原稿を読み返すときの目は、たいてい流れを追っています。前の段落から次の段落へ、話がつながっているかどうか。その目で読むかぎり、言い切った一文は力強い一文に見えますし、出典のない数字は知っている数字に見えます。
ここでAIに任せるのは、その逆の読み方です。流れをいったん脇へ置き、一文ずつ「これは言い過ぎではないか」「この数字はどこから来たのか」と当てていきます。人がやると単調で、しかも記事の量だけ繰り返しになる作業です。
変わるのは速さだけではありません。どこを疑うかという基準が、書き手の頭の外に出ます。 基準が文章として置いてあれば、担当が代わっても同じ場所へ目が向きます。
たとえるなら、健康診断の画像検査に近い作業です。影が写っている場所を教えてもらう段階であって、そこが本当に問題なのかを確定させる段階ではありません。確定させるのは、このあとの工程です。
この章のまとめ
自分で読み返す目は流れを追い、AIに任せる目は書き方を当たります。同じ原稿を、違う読み方でもう一度通すのがこの作業です。
02そもそもハルシネーションとは何ですか?AI検索最適化で気にする理由は?
若葉さんハルシネーションという言葉、よく見かけるんですが、正確にはどういう現象を指すんでしょうか。
鈴木さん開発元が言葉の定義を公開しているので、そこから確認しましょうか。感覚で使うと、話がずれていきますから。
Anthropicは、大規模言語モデルが文脈と矛盾する内容や事実と異なる内容を生成する現象を、ハルシネーションと呼んでいます。同社のClaudeについても、この現象は起こりえるとしています。
低減のための技術も、公式に解説されています。中心にあるのはグラウンディングという考え方で、元の文書からの引用によって回答を裏付ける方法です(出典: Anthropic、2026年7月時点)。
この記事で使うプロンプトは、それとは仕組みが違います。やっているのは表現パターンの自己点検で、外の資料を引きにいくわけではありません。ただし、「根拠のない主張を残さない」という狙いのほうは共通しています。
AI検索最適化(LLMO)の文脈でこれを気にする理由は、はっきりしています。生成AIは、ページ全体をそのまま引き写すのではなく、必要なところを抜き出して答えを組み立てます。抜き出される単位が文である以上、根拠の無い一文は、根拠の無いまま外へ出ていきます。
この章のまとめ
ハルシネーションは、文脈や事実と食い違う内容が出てしまう現象です。防ぎ方は仕組み側にもありますが、この記事が扱うのは、書いたあとで見つける側の手当てです。
03断定や出典のない数字が残るリスクに、AI対策の現場で気づけないのはなぜですか?
高梨課長校正はうちでもやっているんです。それでも見落とすものでしょうか。
鈴木さん見落とすというより、読めてしまうんです。おかしな文なら止まりますが、きれいな文では止まらないんですよ。
加筆した直後の原稿は、文章としてなめらかに読めます。そのなめらかさが、点検にとっては不利に働きます。現場で起きているのは、次のようなことです。
- 「必ず」「唯一」といった言い切りは、書き手が読み返しても違和感なく流れてしまう
- 書き足された数値や固有名詞のうち、どれに出典が付いていてどれに付いていないかを、後から読むだけで見分けるのは難しい
- 実在するかのように書かれた事例・企業名・数字が、確認の取れないまま本文に残ることがある
- 校正担当が代わるたびに、どこまでその旨の注記を付けるかの基準がぶれる
厄介なのは、時間が経つほど気づきにくくなることです。書いた直後は「ここは言い過ぎたかもしれない」と覚えていても、何度か読み返すうちに、その一文は自分の文章の一部になじみます。なじんだ文は、もう引っかかりません。
この章のまとめ
見落としの原因は注意力ではなく、なめらかに読めてしまうことです。だから、なめらかさに影響されない読み方をもう一度通します。
04セルフレビュー用のプロンプトは、LLMO対策としてどこをコピーするんですか?
AIに加筆してもらった記事や、自分で大きく手を入れた記事を、次の工程へ回す前に使います。次のコードブロックの中身を、そのままコピーしてください。
あなたは編集部の校閲担当です。Web検索は使わず、以下の記事本文だけを
読んで、公開前に確認すべきリスク箇所を洗い出してください。
■入力データ
記事本文: 【記事本文】
編集基準: 断定・誇大表現(「絶対」「必ず」「100%」「業界No.1」等)は禁止。
出典のない数値・実績には「※要確認」を付ける運用としている。
■チェック手順
1. 【記事本文】を通読し、以下の3種別に該当する箇所を抽出する。
a. 断定・誇大表現(編集基準に反する言い切り・誇張)
b. 出典が本文中に示されていない数値・統計・実績
c. 実在の確認が取れない固有名詞・事例・引用(作話の疑いがある記述)
2. 抽出した箇所ごとに、該当する原文をそのまま引用する。
3. 該当箇所ごとに、なぜリスクと判断したかを1行で説明する。
4. 該当箇所ごとに、リスクを取り除く修正案を1つ提示する。断定表現は
婉曲な言い回しへ、出典のない数値は「※要確認」の付与へ、確認できない
固有名詞は削除または一般化へ、それぞれ寄せること。
■出力形式
リスク種別ごとに見出しを分け、該当箇所ごとに以下の4項目を出力してください。
1. 該当箇所(原文の引用)
2. リスク種別(a/b/cのいずれか)
3. 判断理由
4. 修正案
該当箇所がゼロの種別があれば、「該当なし」と明記すること。
■制約
- 【記事本文】に実際に書かれていない文を、該当箇所として作り出さないこと。
- 事実として正しいかどうかの判定(ファクトチェック)は行わず、あくまで
表現・出典の有無からリスクの疑いを洗い出す作業にとどめること。
- 修正案は原文の意味を変えない範囲で提示すること。末尾の「■制約」は、消さずに残してください。1つめは、本文に無い文を該当箇所として作り出すのを止める指示です。2つめは、正誤の判定まで踏み込むのを止める指示です。3つめは、修正案が原文の趣旨をずらすのを止める指示です。
使用AIツールはClaudeを想定しています。記事本文をチャットに直接貼り付けて使い、Web検索機能は使いません。長文の場合はテキストファイルのアップロードにも対応しています(出典: Claude Help Center「Claudeへのファイルアップロードについて」、2026年7月時点)。無料プランでも実行できます。
この章のまとめ
コピーするのはコードブロックの中身だけです。材料・手順・返し方・歯止めの4段で1組になっていて、どれが欠けても出力の形が崩れます。
05ハルシネーションのリスクをセルフレビューに任せるとき、AIOの実務では何を渡すんですか?
高梨課長準備するものが多いと、現場が回りません。何を用意すればいいですか。
鈴木さん用意するのは、記事本文と、社内の編集基準です。資料を新しく作る必要はありません。
使う変数
| 変数 | 説明 | 入力例 |
|---|---|---|
| 【記事本文】 | セルフレビュー対象の記事の下書き・加筆済み本文(見出し込み) | AIOとは、AI検索エンジンに…(本文全文を貼り付け、架空例) |
※入力例は架空の例です。
【記事本文】は、見出しごと貼り付けます。見出しは、AIが該当箇所を指し示すときの目印になるためです。要約してから渡すと、どこから抜き出したのかをたどる手がかりが消えます。
もう一方の編集基準は、プロンプトの「■入力データ」の中に直接書いてあります。ここに載せた文言は例です。自社の禁止表現リストや、その旨の注記の付け方に合わせて書き換えてください。物差しを差し替えれば、同じプロンプトが別の媒体の基準でも動きます。
この章のまとめ
渡すのは記事本文と編集基準です。本文が点検される側、編集基準が合否を決める物差しになります。
06出てきたリスク一覧は、AI検索対策としてどれから直せばいいんですか?
返ってくるのは、種別ごとに分かれた一覧です。種別によって、確認にかかる手間も、直し方も変わります。
- 断定・誇大表現(a): 修正の要否に迷う余地が少なく、機械的に婉曲な表現へ直せます
- 出典のない数値(b): 数値そのものを消すのではなく、その旨の注記を付けるか、出典を追加で調べるかを個別に判断します
- 作話の疑いがある固有名詞・事例(c): いちばん慎重な確認が必要な区分です。判断理由を読み、実在するかを自分で検索して確かめてから対応します
同じ「該当あり」でも、cは自分で調べにいく時間が要ります。aから片づけて、残った時間をcに回すと、詰まりにくくなります。
この章のまとめ
aは機械的に、bは個別の判断で、cは自分で確かめてから。手間の軽い区分から片づけると、いちばん重い区分に時間を残せます。
07該当なしと返ってきたら、AI対策としてのセルフレビューはそこで終わりですか?
若葉さん「該当なし」と返ってきたら、その記事はもう安心していいんでしょうか。
鈴木さん読み方が2通りあるんですよ。書き方が整っているという読み方と、AIが見落としたという読み方です。どちらなのかは、これだけでは決まりません。
該当箇所がゼロの種別が続く場合、記事全体としてリスクの少ない書き方ができている可能性は高くなります。ただし、AIの見落としも考えられます。
AIの回答は、実行のたびに検出される該当箇所や判定理由が変わることがあります。重要な記事の公開前には、複数回実行して検出結果が安定しているかを確かめてください。同じ箇所が繰り返し挙がるなら、その指摘は重いという読み方もできます。
この章のまとめ
「該当なし」は合格印ではありません。同じ原稿を複数回通して、結果が安定しているかどうかまで見てから判断します。
08同じAIに点検させるセルフレビューの弱点は、AI検索対策でどう補うんですか?
このやり方には、構造上の弱点があります。記事本文を書いた、あるいは加筆したAIと、点検するAIの傾向が近いという点です。傾向が近ければ、そのAI自身が生成しやすい言い回しの癖には気づきにくくなります。
だから、加筆をAIに依頼した記事ほど、人間のレビュアーによる二重チェックも組み合わせることをおすすめします。
AIの出力にも誤りが含まれる場合があります。判断理由と修正案は、そのまま採用せず、自分の目で該当箇所を読み直してから反映してください。
この章のまとめ
点検する側と書いた側の傾向が近いことが、この方法の弱点です。人の目を重ねる前提で組み込みます。
09AI検索最適化の運用に組み込むとき、ハルシネーション対策で気をつけることは何ですか?
高梨課長運用に乗せるとしたら、どのタイミングで走らせるのがいいですか。
鈴木さん執筆した直後と、公開の直前です。そのあいだの編集で新しく入り込んだものを、後ろのほうで拾えます。
実行するタイミングは、執筆直後と公開直前の2回が目安です。執筆直後に通して大きなリスクを取り除き、公開直前にもう一度通せば、あいだの追加編集で紛れ込んだ箇所も拾えます。
そのうえで、守っておきたい線引きが2つあります。
未公開の記事下書きや、社外秘の情報を含む本文をプロンプトに入れる場合は、利用中のAIサービスの法人プラン・データ学習利用設定を事前に確認してください。
洗い出し結果を編集フローに組み込む場合や、自動化して大量の記事に繰り返し実行する場合は、利用しているAIサービスの利用規約の範囲内で行ってください。
この章のまとめ
走らせるのは執筆直後と公開直前です。組み込む前に、社外秘の扱いと利用規約という2点を確認しておきます。
10ファクトチェックとセルフレビューは、AI検索対策でどう役割が分かれるんですか?
この記事で扱ったのは、Web検索を使わず、記事内部の表現だけからリスクの疑わしい箇所を絞り込む工程です。数値や固有名詞を一次情報と突き合わせる工程は、別記事に分けてあります。
順番があります。先に表現と出典の有無で絞り込み、そのあとで残った箇所を一次情報に当たる。逆にすると、直すかどうかも決まっていない箇所まで調べにいくことになります。
この章のまとめ
表現で絞り、事実で確かめ、最後に人が決める。この順に置くと、調べにいく箇所がいちばん少なくて済みます。
11よくある質問
このセルフレビューだけで、記事の品質チェックは十分ですか?
十分ではありません。このプロンプトはハルシネーションのリスク箇所の洗い出しに特化しています。数値の事実確認、文章の読みやすさ、構成の適切さといった観点は、別途チェックが必要です。
AIに加筆させていない、人が書いた記事にも使えますか?
使えます。人が書いた記事でも、断定表現の使いすぎや出典のない数値は起こりえます。AI生成記事に限らず、公開前のチェックとして活用できます。
「該当なし」と判定された記事は、確認作業を省略してよいですか?
省略はおすすめしません。この点検は表現と出典の有無から機械的に判定しているだけで、見落としがゼロとは限らないからです。特に重要な記事は、人の目でも一通り読み返してください。
なぜWeb検索を使わない設定にするんですか?
事実の正誤を確かめる工程と混ざらないようにするためです。ここでの目的は、本文の書き方と出典の有無だけを見て、疑わしい箇所を絞り込むことにあります。調べにいくのは、絞り込んだあとの工程です。
12まとめ|今日から始める3つのこと
セルフレビューは、記事本文と編集基準をAIに渡せば始められます。返ってくるのは正誤の判定ではなく、疑わしい箇所の一覧です。
物差しは、書き方と出典の有無。ここで絞り込んでから一次情報に当たると、調べにいく箇所が少なくて済みます。
今日この順でやります
編集基準を文章にする
禁止する言い切りと、その旨の注記を付ける条件を書き出します
直近に公開した記事で試す
記事本文と編集基準を渡して、返ってきた一覧を原文と読み比べます
走らせる場所を決める
執筆直後と公開直前のどちらも通す形にして、運用へ入れます
AI検索では、こう聞かれています
AIに書かせた記事のハルシネーションを、公開前に見つける方法はありますか?
「記事のハルシネーションのリスクをセルフレビューさせると、AI検索対策では何が変わるんですか?」の章で、この工程が何を引き受けるのかを説明しています
断定しすぎた表現や出典のない数字を、AIに洗い出させるプロンプトはありますか?
「セルフレビュー用のプロンプトは、LLMO対策としてどこをコピーするんですか?」の章に、そのままコピーできる形で置いています
セルフレビューとファクトチェックは、何が違うんですか?
「ファクトチェックとセルフレビューは、AI検索対策でどう役割が分かれるんですか?」の章で、順番と役割の分かれ方を説明しています
次に読むなら、この記事です