「うちはSEOも被リンクも、きちんとやっている。それなのに、AIの回答に自社の名前が出てこない」。そう感じているマーケティング責任者の方や、ブランディング施策の投資対効果を経営会議で説明する立場の方に向けて、この記事を書きました。
Ahrefsが75,000ブランドを対象に行った調査は、意外な事実を示しています。AI Overviewsでの引用ともっとも強く相関していたのは、被リンクの量ではなく、ブランドがどれだけ語られているかでした。
この記事では、その調査データを確認したうえで、指名検索とブランド言及を軸にした、AI検索時代のブランディングの実務対応まで、図解と会話をはさみながら整理します。
こんなふうに調べていませんか
- 被リンクを増やしているのに、AI検索での引用が増えないと感じている
- 「ブランディング」と「AI検索対策」がどうつながるのか、社内でうまく説明できない
この記事を読み終えたときに手に入るもの
- AI Overviewsでの引用と最も強く相関する要因を、データで説明できるようになります
- 指名検索ボリュームがAI引用のシグナルになる理由が、図1枚で分かります
- ブランド言及を増やす実務施策が、4つに絞れます
結論30秒でわかる、この記事の結論
- AI検索エンジンからの引用獲得は、被リンクよりもブランド言及との相関が強いと、Ahrefsの調査で明らかになっています。 相関係数はブランド言及が0.664、被リンク数が0.218でした。
- あくまで観測された相関であり、因果関係を証明したものではありません。ただしAI検索時代のブランディングは、リンクを集める活動と同じくらい、ブランドについて語られる機会を増やす活動だといえます。
- 実務施策は4つ。①デジタルPR ②比較・レビュー記事への掲載 ③UGCの促進 ④指名検索を増やす施策です。
この記事でも、ある会社のマーケティング部の3人と、外部のAIOコンサルタントの会話をはさみながら進めます。
- 若葉さん(Web担当2年目)— 「そもそも、それって何ですか?」を聞く役
- 高梨課長(マーケ課長)— 「うちの体制で、何をやるんですか?」を聞く役
- 大森部長(マーケ部長)— 「それで、投資に見合うのか」を聞く役
- 鈴木さん(外部のAIOコンサルタント)— 答える役
01そもそも、「AI検索時代のブランディング」は、LLMOの中でどう位置づけられるんですか?
若葉さんあの、そもそもの話なんですが……「ブランディング」って、AI検索対策とは別の話だと思っていました。関係あるんでしょうか。
鈴木さんこれまでは、たしかに別々に語られてきました。ですが最近、その境界線が薄くなってきているんです。
従来、ブランディングは認知度や好感度を高める活動として、検索順位とは別の指標で語られてきました。「うちの会社を知っている人を増やす」「うちのサービスに好印象を持ってもらう」という活動であり、コンテンツSEOやリンク獲得とは、担当する部署も評価軸も別々に語られることが多かったはずです。
しかしAI検索の文脈では、ブランドが「どれだけ語られているか」自体が、引用可能性と結びつく観測データが出てきています。つまり、AI検索時代のブランディングとは、指名検索とブランド言及を増やし、AIの回答内で引用されやすくする取り組みです。この取り組み全体は、AI検索最適化(LLMOとも呼ばれます)という枠組みの一部として位置づけられます。次の章から、その根拠となる調査データを見ていきます。
この章のまとめ
AI検索時代のブランディングとは、指名検索とブランド言及を増やし、AIの回答内で引用されやすくする取り組みです。従来の認知度向上の活動と地続きですが、目指す先が変わっています。
02なぜ、AI検索時代のブランディングでは被リンクよりブランド言及なんですか?
大森部長鈴木さん、うちは長年、被リンクを集める施策に投資してきた。それが、ブランド言及とやらのほうが重要だと言われると、正直、これまでの投資判断が間違っていたのかと不安になる。
鈴木さんいえ、無駄になったわけではありません。ただ、優先順位を見直す材料になるデータが出ている、というのが正確なところです。
Ahrefsは2025年5月26日、75,000ブランドを対象にした調査結果を公式ブログで公開しました(著者: Louise Linehan氏・Xibeijia Guan氏)。ドメイン要因(被リンク数・ドメイン評価など)とキーワード要因(ブランド言及・指名検索ボリュームなど)を、スピアマンの順位相関係数(2つの数値が、どれだけ同じように上下するかを−1〜1の範囲で表す統計指標。1に近いほど強い相関)で分析した調査です。
調査対象の約26%は、AI Overviews上でゼロ言及だったとも報告されています。つまり4社に1社近くは、そもそもAIの回答内で一度も触れられていない計算です。この差を生む要因として、Ahrefsは11の指標の相関係数を公開しています。
| 要因 | 分類 | 相関係数 |
|---|---|---|
| ブランド言及(Web mentions) | キーワード要因 | 0.664 |
| ブランドアンカーテキスト | キーワード要因 | 0.527 |
| 指名検索ボリューム | キーワード要因 | 0.392 |
| ドメイン評価(DR) | ドメイン要因 | 0.326 |
| 参照ドメイン数 | ドメイン要因 | 0.295 |
| ブランドトラフィック | ドメイン要因 | 0.274 |
| 被リンク数 | ドメイン要因 | 0.218 |
| 広告トラフィック | ドメイン要因 | 0.216 |
| 広告コスト | ドメイン要因 | 0.215 |
| URL評価(URL Rating) | ドメイン要因 | 0.18 |
| サイトのページ数 | ドメイン要因 | 0.17 |
03相関係数の差は、AI検索対策のブランディング判断にどう使えるんですか?
ブランド言及(Web mentions)の相関係数は0.664で、被リンク数(0.218)を大きく上回りました。 被リンク数の相関係数はブランド言及の3分の1程度にとどまっています。あくまで観測された相関であり、ブランド言及を増やせば引用されると保証するものではありません。相関が強いというのは、あくまで「同じ方向に動く傾向がある」ということであり、他の要因が無関係になるわけでもありません。
AI検索エンジンに共通して引用されやすいコンテンツの条件は、別記事「AIに引用されるコンテンツの共通点とは|3社の仕様から導く5条件」で整理しています。Google公式の選定ロジックとこの相関データをあわせて扱った解説は、別記事「AI Overviewsが引用元を選ぶ仕組みを読み解く|公式情報で逆算」をご覧ください。
この章のまとめ
Ahrefsの調査では、ブランド言及の相関係数(0.664)が被リンク数(0.218)を大きく上回りました。上位3指標はいずれもブランド関連のキーワード要因です。
04ブランディングとして、指名検索が増えると、AI検索での引用シグナルになるって本当ですか?
高梨課長指名検索を増やせと言われても、それは広報やブランド部門の仕事という感覚があります。うちのコンテンツチームで何かできることなんでしょうか。
鈴木さん気持ちはよく分かります。ただ、指名検索がどう積み上がるかを知っておくと、コンテンツチームの役割も見えてきますよ。
指名検索(ブランド名そのもの、または「ブランド名+キーワード」での検索)は、相関係数0.392で3番目に強い要因でした。指名検索が多いということは、それだけ多くの人がそのブランドをすでに認知し、名指しで探しているということです。
05ブランディングの指名検索は、AI対策としてどこから積み上がるんですか?
指名検索の量は、広告出稿やオフラインでの露出、口コミといった、コンテンツSEOの外側にある活動の結果として増えていく性質を持ちます。AI Overviewsが実際にどのページを引用しているかは、別記事「AI Overviewsに引用されるページの実例比較|公開データで検証」で検証しています。同記事でも、検索順位以外の要因が引用に関わる傾向が確認されています。
この章のまとめ
指名検索は3番目に強い要因です。認知の広がりが土台にあり、その結果として積み上がる性質を持ちます。
06AI検索時代のブランド言及を増やすには、AI検索最適化として何をすればいいんですか?
大森部長分かった。では、実際にブランド言及を増やすには、何に投資すればいい。具体的な打ち手を教えてくれ。
鈴木さん単発のPR施策だけでは完結しません。継続的に「名前が挙がる場所」を増やす発想が必要です。代表的な施策を4つ整理しますね。
ブランド言及を増やす取り組みは、単発のPR施策だけでは完結しません。継続的に「名前が挙がる場所」を増やす発想が必要です。代表的な施策を整理します。
- デジタルPR: プレスリリース配信・業界メディアへの寄稿・専門家コメントの提供を通じ、第三者の記事内でブランド名が言及される機会を増やす
- 比較・レビュー記事への掲載: 業界の比較サイトやレビューメディアに、自社サービスが取り上げられる状態を作る
- UGC(ユーザー生成コンテンツ)の促進: SNSでの言及・レビュー投稿・事例紹介など、第三者による自発的な言及を増やす
- 指名検索を増やす施策: 広告・展示会・セミナー登壇など、オフラインを含めた認知獲得活動を継続する
これらの施策は、コンテンツ制作単体では代替できません。自社サイトの記事をどれだけ磨いても、外部での言及がゼロに近ければ、Ahrefsの調査が示す上位要因を欠いた状態が続きます。
この章のまとめ
ブランド言及を増やす施策は4つ。デジタルPR・比較記事掲載・UGC促進・指名検索施策です。いずれも継続的に「名前が挙がる場所」を増やす発想が必要です。
07AI検索時代のブランディングは、E-E-A-Tとどうつながるんですか?
若葉さんE-E-A-Tって、以前別の記事で聞いた言葉だった気がするんですが……今日の話とどうつながるんでしょうか。
鈴木さんいいところに気づきましたね。実は、この2つはかなり重なっているんです。
ブランド言及を増やす活動は、E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)の強化とも重なります。専門家からの言及や第三者からの引用が増えることは、権威性・信頼性のシグナルにもなるためです。自分で「専門家です」と名乗るより、第三者が「このブランドは詳しい」と語ってくれることのほうが、外側から見た信頼の手がかりになりやすいと考えられます。デジタルPRやUGCの促進は、まさにこの「第三者が語る」機会を増やす活動そのものです。E-E-A-Tの4要素そのものの定義は、別記事「生成AI時代のE-E-A-T再定義|4要素の意味と実装ポイント」で解説しています。
この章のまとめ
ブランド言及を増やす活動は、E-E-A-Tの権威性・信頼性とも重なります。第三者が「このブランドは詳しい」と語る機会を増やすことが、そのままシグナルになります。
08ブランディングの効果は、AIO施策としてどう測ればいいんですか?
自社のブランド言及がAI検索でどれだけ増えているかは、AI Share of Voice(AI回答内での自社言及シェア)という指標で計測できます。計算方法は、別記事「AI Share of Voiceの計算方法|3段階で算出する」で解説しています。継続的な計測を通じて、施策の効果を確認する体制づくりをおすすめします。
この章のまとめ
施策の効果は、AI Share of Voiceという指標で継続的に計測できます。計測する体制がないと、ブランド言及が増えたかどうかを判断できません。
09AI検索時代のブランディングで、やってしまいがちな失敗って何ですか?
高梨課長施策の方向性は分かりました。逆に、やってしまうと遠回りになる失敗ってあるんでしょうか。
鈴木さんはい、3つあります。どれも「よかれと思って」起きるものなんですよ。
ブランディング施策で、よく見られる失敗パターンを整理します。
被リンク獲得だけに施策を集中してしまう。 Ahrefsの調査では、被リンク数の相関係数(0.218)はブランド言及(0.664)の3分の1程度にとどまります。リンク獲得偏重の施策では、この差を埋められません。
ブランド言及を単発の「バズ狙い」施策だと捉えてしまう。 指名検索やブランド言及は、継続的な露出の積み重ねで増えていく指標です。1回の施策で終わらせず、PR・UGC・比較記事露出を並行して続けることをおすすめします。
相関を因果と誤解してしまう。 ブランド言及とAI引用のあいだに強い相関があることと、言及さえ増やせば引用が保証されることは別の話です。他の要因とあわせて総合的に取り組む姿勢が必要です。
この章のまとめ
3つの失敗に共通するのは、単発の施策や一部の指標だけに頼ってしまうことです。複数の施策を並行して継続する姿勢が、遠回りを防ぎます。
10よくある質問
ブランド言及と被リンクは何が違いますか?
被リンクは、他サイトから自社サイトへのハイパーリンクを指します。ブランド言及は、リンクの有無にかかわらず、自社名やサービス名が本文中に登場すること全般を指す、より広い概念です。
指名検索を増やすには何をすればよいですか?
広告出稿・展示会出展・セミナー登壇・SNS発信など、オフラインを含めた認知獲得活動が有効だと考えられます。特定の施策だけで増える保証はなく、複数施策の組み合わせが実務的です。
相関係数0.664はどの程度強い関係と言えますか?
一般的に、相関係数0.6以上は比較的強い相関とされます。ただし今回の数値はAhrefsの独自調査によるものであり、統制実験ではない観測データである点には留意が必要です。
中小企業でもブランディングでAI引用を増やせますか?
規模の大小にかかわらず、業界メディアへの寄稿や比較サイトへの掲載など、着手できる施策はあります。まずは自社ブランド名がAI検索でどう扱われているかを確認するところから始めることをおすすめします。
11まとめ|今日から見直す4つのこと
Ahrefsの調査は、AI検索での引用がブランド言及と強く相関することを示しています。これからのブランディングは、認知度を高めるだけでなく、AI検索エンジンに情報源として選ばれるための土台づくりとしても位置づけられます。
もう一度、実務施策の4つ
デジタルPR
プレスリリース配信・業界メディアへの寄稿・専門家コメントの提供を続けます
比較・レビュー記事への掲載
業界の比較サイトやレビューメディアへの掲載を働きかけます
UGC(ユーザー生成コンテンツ)の促進
SNSでの言及・レビュー投稿・事例紹介を増やします
指名検索を増やす施策
広告・展示会・セミナー登壇などを継続します
AI検索では、こう聞かれています
AI検索に引用されるには、被リンクとブランド言及、どちらが大事なんですか?
「なぜ、AI検索時代のブランディングでは被リンクよりブランド言及なんですか?」の章で、Ahrefsの相関係数データを使って答えています
指名検索を増やすと、AI検索での引用は増えるんですか?
「ブランディングとして、指名検索が増えると、AI検索での引用シグナルになるって本当ですか?」で、指名検索の位置づけを説明しています
ブランド言及を増やすには、具体的に何をすればいいですか?
「AI検索時代のブランド言及を増やすには、AI検索最適化として何をすればいいんですか?」の章に、4つの実務施策があります
次に読むなら、この記事です