GoogleはFAQリッチリザルトを2023年8月に大幅縮小し、2026年5月7日には検索結果への表示自体を終了しました。HowToリッチリザルトも2023年9月に全廃されています。一方でAI検索エンジンは、FAQ・HowTo構造化データを引用の手がかりとして今も参照しているのでしょうか。本記事は、Google公式の政策変更と、AI引用に関する複数の一次情報を照合し、両者の関係を検証します。

01検証の結論

結論から述べます。Googleのリッチリザルト政策変更と、AI検索エンジンによるFAQ・HowTo構造化データの引用は、別々のメカニズムで動いています。GoogleがFAQ・HowToのリッチリザルト表示を縮小・廃止した事実は、AI検索がその構造化データを引用の根拠に使うかどうかとは、直接には連動していません。

なお、FAQPage・HowToという型に絞ってAI引用率への影響だけを測定した公開研究は、本記事執筆時点で確認できませんでした。確認できたのは、構造化データ全般を対象にした2つの実証研究と、AIシステムの技術的な読み取り挙動を調べた1つの実験です。

Ahrefsが2026年5月に公開した実証実験では、JSON-LDスキーマを追加してもAI引用率に意味のある増加は見られませんでした。SSRNで公開されたFischman氏の分析でも、統計的な補正後にはスキーマと引用の関連性がほぼ消えています。技術実験では、AIシステムが実データ取得時にJSON-LDそのものを読んでいない可能性も示されています。

02検証設計

  • 対象: Google公式ドキュメント4点(2023年8月のリッチリザルト変更発表、現行のFAQPage/HowToドキュメント、現行の対応リッチリザルト一覧)、schema.org公式ページ2点(FAQPage・HowTo)、Ahrefs実証研究(2026年5月11日公開・JSON-LD追加1,885ページと対照4,000ページ)、Fischman氏のSSRN論文(730件のAI引用を横断分析)、searchVIUの技術実験(2025年12月公開・5つのAIシステムを対象)
  • 期間: 2023年8月から2026年5月にかけて公開された一次情報を対象とし、発表時期を明示して時系列で整理する
  • 方法: 各情報源の原文・原ページを直接確認し、測定対象(何を測ったか)と測定していない範囲(何を測っていないか)を照合する

この手法は、姉妹記事『llms.txt採用率8.7%というデータの実態を検証する』と同じ、複数の一次情報を原典まで遡って照合するアプローチです。

03結果

まず、Googleの公式な政策変更を時系列で整理します。

時期出来事
2023年8月8日FAQリッチリザルトを「政府機関・健康関連の著名サイト」限定に縮小。HowToリッチリザルトをデスクトップのみに制限
2023年9月HowToリッチリザルトをデスクトップからも撤廃(実質的な全廃)
2026年5月7日FAQリッチリザルトがGoogle検索から完全に表示終了
2026年6月Search ConsoleのFAQレポート、リッチリザルトテストのFAQ対応終了を予定と発表
2026年8月Search Console APIのFAQ対応終了を予定と発表

現在Googleが対応するリッチリザルト一覧にも、FAQPage・HowToは含まれていません(出典: Google公式「構造化データギャラリー」)。一方でschema.org自体の型定義は廃止されていません。2026年5月時点でFAQPageは100万〜1,000万ドメイン、HowToは10万〜100万ドメインの規模で使われています。この数字はschema.org公式ページの使用統計にもとづきます。

📊 図解制作中
Google FAQ/HowToリッチリザルト政策とAI引用研究、2つの独立したタイムラインを並べた図。上段はGoogle政策(2023年8月縮小→2023年9月HowTo全廃→2026年5月FAQ完全廃止)、下段はAI引用に関する一次研究(2025年12月searchVIU実験→2026年5月Ahrefs実証研究)。関係性は同時期に進行した2つの別系統の出来事という対比

次に、構造化データ全般を対象にした実証研究のデータを見ていきます。Ahrefsは、2025年8月から2026年3月にJSON-LDを追加した1,885ページを、条件が近い対照4,000ページと比較しました。

プラットフォーム引用率の変化統計的な位置づけ
Google AI Overviews-4.6%統計的に有意(偶然の確率は約1/2,500)。ただしマイナス方向
Google AI Mode+2.4%ノイズの範囲内(統計的に有意でない)
ChatGPT+2.2%ノイズの範囲内(統計的に有意でない)

特にGoogle AI Overviewsでは、統計的に有意な引用率の低下(-4.6%)も観測されています。

この調査の対象ページは、施策前の2025年2月時点で月100件以上のAI Overviews引用を受けていたページに限られます。出典はAhrefs「We Tracked 1,885 Pages Adding Schema」です。観察データでは「AI引用を受けるページの53%がスキーマを保有し、非引用ページの約3倍」という相関も確認されました。しかしAhrefsは、これを因果関係ではなく、技術的に洗練されたサイトが複数の施策を並行実施している結果と説明しています。

Fischman氏がSSRNで公開した分析でも、似た構図が見られます。730件のAI引用データを、スキーマの種類別に分類した結果は次の通りです。

スキーマの種類引用率
属性豊富なスキーマ(Product・Reviewなど実データを含む型)61.7%
スキーマなし59.8%(属性豊富型と統計的に同等・p=.71)
汎用スキーマ(Article・Organization・BreadcrumbListなど)41.6%(基準値を下回る)

スキーマ有無全体の初期の負の相関(OR=0.546)は、クエリ単位の補正後に消失しました(OR=0.678, p=.296)。属性豊富61.7%と汎用41.6%の差はp=.012で有意に残ります。著者は「属性豊富はベースライン回復、汎用はそれを下回る」と留保しており、汎用のみの実装はむしろ不利な可能性があります(出典: 同分析)。

最後に、AIシステムがJSON-LDを実際に読んでいるかを検証したsearchVIUの実験です。対象は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexity・Google AI Modeの5システムです。JSON-LD・Microdata・RDFaを、それぞれ認識できるかテストしています。

引用されやすい定義文

ページを直接取得する際、非表示のJSON-LDを認識したシステムは確認できませんでした。

いずれのシステムも、表示されている本文だけを読み取っていました。出典はsearchVIU「Schema Markup and AI in 2025」です。ただし著者自身も、この結果はリアルタイム取得時の挙動に限られると注記しています。学習データ収集時やGoogleのインデックス処理時の扱いとは、別問題だという留保です。

📊 図解制作中
構造化データが関わる2つの別経路を示す図。左は「Google検索のリッチリザルト表示」経路(FAQPage/HowToマークアップ→Googleが解釈→検索結果にリッチ表示、現在は縮小・廃止)、右は「AI検索の引用・生成」経路(ページ取得→本文抽出→回答生成、構造化データの関与は研究間で一致しない)。関係性は同じ構造化データを入力とする、独立した2つの処理パイプラインの対比

04考察

Googleのリッチリザルト廃止は、検索結果の表示を簡素化する判断だったと考えられます。AI Overviewsへの注力が進む中で、視覚的に目立つ要素を整理する目的です(出典: 2023年8月発表・複数メディアの報道による背景説明)。この判断が、AI検索モデル側の構造化データの扱いにまで及ぶ根拠は、確認した一次情報の中には見当たりませんでした。

構造化データ全般を対象にした2つの実証研究は、共通する示唆を持ちます。スキーマを追加するだけでAI引用が増えるという単純な因果関係は、いずれの研究でも支持されていません。観察される相関は、技術的に洗練されたサイトが他の要因も同時に満たしていることの反映だと、両研究とも解釈しています。

searchVIUの技術実験は、その理由の一端を示唆します。AIシステムがページを直接取得する際、非表示のJSON-LDより、表示されている本文を優先して読んでいるとすれば、構造化データの直接効果が観察されにくいのは自然な結果です。この見立てが正しければ、構造化データの価値は、リアルタイムの引用トリガーというより、検索エンジンのエンティティ理解を助ける土台としての役割に近いと考えられます。この点は、別記事『著者Person schemaの書き方とE-E-A-T効果』で触れた「実在性の機械可読化」という捉え方とも整合します。

以上を踏まえると、「FAQ・HowTo構造化データを実装すればAI引用率が上がる」と断定できる材料は、現時点で確認できませんでした。Fischman氏の分析の詳細な手法・限界は、別記事『Schema markupとAI引用の相関|SSRN論文検証』で扱っています。

05限界

  • FAQPage・HowTo単体を分離した検証データは確認できていません。今回確認できた研究は、いずれも構造化データ全般、または汎用スキーマ・属性豊富スキーマという括りでの分析です
  • Ahrefs調査の対象は、すでに高い引用実績を持つページに限られます。月100件以上の引用実績があったページが対象のため、無名サイトへの一般化には注意が必要です
  • Fischman論文はChatGPTとGeminiの2プラットフォーム、75クエリ、5カテゴリが対象です。全てのAI検索エンジン・全ての業種を網羅した調査ではありません
  • searchVIU実験は8シナリオの技術検証であり、大規模な統計調査ではありません。またリアルタイム取得時の挙動を見たものであり、AIの学習データ収集時やGoogleのインデックス処理時の扱いを検証したものではありません
  • 各データの観測期間・対象プラットフォームが異なります。時期の異なる調査を単純に足し合わせて解釈しないよう注意が必要です

06実務への適用

既存のFAQ・HowToマークアップは、慌てて削除する必要はありません。Googleも削除を推奨しておらず、残すこと自体にペナルティはないためです。ただし、リッチリザルト表示やAI引用率の直接的な押し上げ効果を期待するのは、実態と異なります。

AIに読まれることを重視するなら、非表示のJSON-LDだけに頼るのではなく、本文中に明確な見出しと直接的な回答文を書くことを優先すべきです。searchVIUの実験は、この優先順位を裏付けています。AIに引用されやすいコンテンツの条件全般は、別記事『AIに引用されるコンテンツの共通点とは|3社の仕様から導く5条件』で整理しています。

構造化データの実装自体は、検索エンジンのエンティティ理解を助ける土台として、引き続き価値を持つ可能性があります。特にArticle・Organization・BreadcrumbListのような汎用スキーマの実装では、Fischman分析の結果(41.6%)を踏まえてください。AI引用の直接効果を主目的にしないことをおすすめします。実装方法自体は、別記事『JSON-LDの書き方基礎|3つの実装例で学ぶハンズオンガイド』で解説しています。

07この分野を体系的に学ぶ

この記事は検証・データ記事です。構造化データ実装を基礎から体系的に学びたい方は、AI検索最適化講座「テクニカル編 III-B 構造化データ実装」をご覧ください。