姉妹記事012では、llms.txtの採用率を「8.7%」と紹介しました。一方、Ahrefsの別調査では「28%」という数字も報告されています。同じ「採用率」という言葉なのに、なぜ3倍以上の差が生まれるのでしょうか。本記事では2つの調査の原文まで遡り、差が生まれる理由を検証します。
01検証の結論
結論から述べます。8.7%と28%の差は、算出ミスや調査の優劣によるものではありません。
引用されやすい定義文llms.txt採用率8.7%と28%の差は、算出方法の違いではなく調査対象の母集団の違いから生まれます。
Rankability調査は、Tranco上位1,000ドメインという一般的な人気サイト全体を、保守的な方法で測定しています。一方Ahrefs調査は、技術意識が高い企業に偏ったサンプルです。対象はAhrefs Web Analyticsを導入済みの企業であり、この点はAhrefs自身が「上限値として扱うべき」と明記しています。
さらに、姉妹記事012で紹介した「97%が読まれていない」という数字にも、精緻化できる点があります。この97%は、AIボットに限らずあらゆるリクエストが0件だったことを意味します。残り3%のリクエストの内訳を見ても、AIボットは実は少数派です。
02検証設計
- 対象: Rankability社「LLMS.txt Adoption」調査(Tranco上位1,000ドメイン)、Ahrefs社「We Analyzed 137K Sites」調査(Ahrefs Web Analytics利用137,210ドメイン)
- 期間: Rankability調査は毎月更新方式です。本記事執筆時点の最新版は2026年7月17日更新(使用リストはTranco 2026年6月23日版)。Ahrefs調査は2026年5月の1か月間を観測し、2026年6月15日に記事を公開しています
- 方法: 両社が公開する調査ページの原文を精読しました。採用率の算出式・注釈・著者自身が明記する限界を照合し、業界別内訳とボット別内訳の元データも確認しています
03結果
まず、2つの調査の条件を比較します。
| 項目 | Rankability調査 | Ahrefs調査 |
|---|---|---|
| 対象母集団 | Tranco上位1,000ドメイン | Ahrefs Web Analytics利用137,210ドメイン |
| 母集団の性質 | トラフィック順の人気サイト全体 | SEO・技術意識の高い企業に偏る(著者明記) |
| 採用率 | 8.7%(87/1,000) | 28%(38,360/137,210、上限値と著者明記) |
| 算出の特徴 | 到達不可能な451サイトも分母に含む保守算出(到達可能549サイト基準では15.8%) | Ahrefs顧客という限定サンプルが母数 |
| 測定方法 | 毎月/llms.txtと/llms-full.txtにHTTPSリクエストし、HTTP 200のテキストファイルを確認 | Ahrefs Bot Analyticsで5月の1か月間、/llms.txtへの全リクエストを観測 |
次に、Rankability調査が示す業界別の採用率を見ていきます。テクノロジー業界が36.4%と突出して高く、政府機関とソーシャルメディアは0%でした。
| 業界カテゴリ | 採用率 | 内訳 |
|---|---|---|
| テクノロジー | 36.4% | 4/11サイト |
| ビデオストリーミング | 16.7% | 1/6サイト |
| パブリッシング | 14.3% | 1/7サイト |
| その他 | 8.5% | 10/118サイト |
| Eコマース | 6.9% | 2/29サイト |
| ニュース・メディア | 4.8% | 1/21サイト |
| ソーシャルメディア | 0% | 0/10サイト |
| 政府機関 | 0% | 0/10サイト |
これらのカテゴリの分母を合計すると212サイトです。到達可能な549サイト全体を業種分類した結果かどうかは、ページ上の記載だけでは確認できませんでした。業界別データを引用する際は、この点を踏まえた慎重な扱いが必要です。
最後に、Ahrefs調査が示す「97%が読まれていない」の内実を確認します。有効なllms.txtを持つドメインは約38,000件です。そのうち5月中にリクエストを受けたのは、わずか3%(約1,140ドメイン)でした。この3%のリクエストを送信元カテゴリ別に見ると、AIボットは上位4カテゴリのいずれにも入りません。
| リクエスト送信元カテゴリ | 全リクエストに占める割合 |
|---|---|
| SEO監査ツール | 21.7% |
| 不明・未分類 | 14.9% |
| 汎用Webクローラー | 13.1% |
| 技術プロファイリングツール | 11.6% |
| AIエージェント・エージェント基盤 | 10.5% |
| AI学習用クローラー(GPTBot 4.51%等) | 5.3% |
| AIアシスタント | 2.5% |
| AI検索取得ボット(OAI-SearchBot 0.74%等) | 1.1% |
04考察
8.7%と28%という2つの数字は、どちらかが誤りというわけではありません。異なる定規で同じ対象を測った結果と捉えるべきです。Rankabilityは人気サイト全体という広い母集団を、保守的に測定しています。Ahrefsは技術意識の高い企業という狭い母集団の、上限値を示しています。
実務者が数字を引用する際は、8.7%の方が一般的なサイト全体の実態に近いと考えられます。28%は、Ahrefs自身が上限値と認めている数字だからです。
97%という数字についても、012で「AIボットから読まれていない」と紹介した表現には、補足が必要です。より正確には「人間のアクセスも含めたあらゆるリクエストが0件」という、さらに厳しい実態を指します。加えて、残り3%のリクエストも、大半はAIボット以外が占めています。
llms.txtは本来、「AIに読まれるために」設置するファイルです。この内訳は、Ahrefsの結論をさらに補強するものと言えます。
ここで注意したいのは、相関と因果の混同です。リクエストの有無は「アクセスされたか」を示すに過ぎず、「AI検索の回答に反映されたか」までは証明しません。Ahrefs自身も、ボットがファイルを取得したことと、実際の応答生成に使ったかは別問題だと留保しています。
05限界
- 両調査ともサンプルに偏りがあります: Rankabilityはトラフィック上位という「有名サイト」に偏ります。Ahrefsは「SEOツール導入企業」に偏ります。中小企業サイト全体の実態を代表するデータではありません
- 業界別内訳の母数が不明瞭です: Rankabilityの業界別データは、分類できたサイトの一部集計である可能性があります
- 仕様準拠までは検証していません: 両調査とも、ファイルの「存在」は確認していますが、llms.txtの記法が仕様どおりに書かれているかまでは確認していません
- 単月データです: いずれも特定月のスナップショットであり、季節性や導入トレンドの推移を追うには、継続的な観測が必要です
06実務への適用
自社サイトへの示唆として、2点を挙げます。採用率を判断材料にする場合は、28%ではなく8.7%を基準にすべきです。これは到達可能サイト基準に換算すると15.8%に相当します。Ahrefsの28%は、著者自身が上限値と認めている数字だからです。
また、被参照率のデータからは、過度な期待は禁物だとわかります。llms.txtを設置しても、「AIに読まれる」ことが保証されるわけではありません。設置の判断は、姉妹記事012の基準に立ち返ることをおすすめします。
基準は「作成コストと見合うか」です。第三者の数字を対外的に引用する際も、母集団の性質まで確認したうえで使うことが重要です。
07この分野を体系的に学ぶ
この記事は検証・データ記事です。llms.txtをはじめとするAI向けメタデータ設計を基礎から体系的に学びたい方は、AI検索最適化講座「テクニカル編: AIに読まれるサイトを作る(III-C: llms.txt・メタデータ標準)」をご覧ください。