「AI Overviews表示時のCTRが回復した」。そんな見出しを見て、少しほっとした方もいるのではないかと思います。「85%上昇」という数字まで添えられていれば、なおさらです。
ただ、この「85%」は、そのまま受け取ると実態より大きく見えます。もとの数字がどこからどこへ動いたのかを並べると、印象はかなり変わります。
この記事では、報道のもとになったレポートに戻って、回復の中身を分解します。数字を否定したいのではありません。同じ数字を、社内で誤解なく共有できる形にすることが目的です。数字の受け取り方に自信が持てない方に向けて書きました。
こんなふうに調べていませんか
- 「AI Overviews CTR 回復」で検索して、回復したと言っていいのか確かめたい
- 「85%上昇」という記事を読んで、社内へ共有していいか迷っている
- 上司から「AI Overviewsの影響はもう落ち着いたのか」と聞かれて、答えに困った
この記事を読み終えたときに手に入るもの
- 「85%上昇」という表現の読み方を、自分の言葉で説明できるようになります
- クリック数と表示回数の関係が図で分かり、CTRの上下に振り回されなくなります
- 他社の調査を自社に当てはめる前にやることが、3つに絞れます
結論30秒でわかる、この記事の結論
- CTRが1.3%から2.4%へ動いたのは事実です。ただし絶対値では1.1ポイントの回復で、「85%上昇」という表現ほど劇的な変化ではありません。
- 2026年2月の2.4%は、2025年1月の3.19%と比べるとまだ低い水準です。AIOが出ないクエリとの差も縮まっていません。
- 判断材料は2026年1月・2月の2か月分だけです。単月の数字で施策の是非を決めないでください。
この記事では、ある会社のマーケティング部の3人と、専門家の会話をはさみながら進めます。あなたに近い立場の人の質問から読んでいただいて構いません。
- 若葉さん(Web担当2年目)— 「そもそも、その数字って何ですか?」を聞く役
- 高梨課長(マーケ課長)— 「レポートにどう書けばいいんですか」を聞く役
- 大森部長(マーケ部長)— 「その数字は判断に使えるのか」を聞く役
- 鈴木さん(AIO/SEOの専門家・本誌監修)— 答える役
01AI OverviewsのCTR回復は、AI検索対策として喜んでいい話なんですか?
若葉さんCTRが85%も戻ったという記事を見ました。これって、もう心配しなくていいということですか?
鈴木さん「戻った」のは本当です。ただ、どこからどこへ戻ったのかを見ておくと、受け取り方が変わりますよ。
AI Overviews表示時のCTR回復とは、底値からの上昇を指す報道上の呼称です。
結論から言うと、CTRが2025年12月の1.3%から2026年2月の2.4%へ回復したという数字自体は事実です。出典は、Seer Interactiveが2026年4月に公開したレポート「AIO Impact on Google CTR: 2026 Update」です。
2025年12月の1.3%は、14か月ぶりの低い水準でした。そこからの上昇が「回復」と呼ばれています。底が深かったぶん、戻り幅が大きく見えるという構造になっています。
この章のまとめ
「回復した」は事実です。ただし、比べる相手をどこに置くかで、同じ数字の意味が変わります。
02「85%上昇」というCTRの数字は、AI検索の実感とずれていませんか?
大森部長85%上昇したのなら、影響はもう落ち着いたと見ていいんじゃないか。
鈴木さん計算式は正しいんです。ただ、元の数字が小さいと、割合はいくらでも大きく見えます。ここは分けて考えたほうがいいところです。
「1.3%から2.4%への回復」を相対値で計算すると、(2.4−1.3)÷1.3×100で約85%になります。この計算式そのものに誤りはありません。
ただし、絶対値で見ると1.1ポイントの動きです。低い数値を基準にした相対変化は、実態より大きく見える性質があります。
社内へ共有するときは、相対値と絶対値の両方を書くだけで、受け取り方のずれがかなり減ります。「85%上昇(1.3%→2.4%、1.1ポイント)」と並べれば、読む人がそれぞれの物差しで判断できます。
この章のまとめ
「85%」は計算として正しく、印象としては大きすぎます。相対値と絶対値を並べて書けば、誤解は起きにくくなります。
03AI OverviewsのCTRが回復しても、AI検索での取りこぼしは減っていないんですか?
回復後の位置を、AIOが表示されないクエリと並べて見ます。
| 時期 | AIO表示時の有機CTR | AIO非表示時の有機CTR |
|---|---|---|
| 2025年1月 | 3.19% | 2.8% |
| 2025年12月(14か月ぶりの低い水準) | 1.3% | 未公表 |
| 2026年2月 | 2.4% | 3.8% |
2026年2月の2.4%は、2025年1月時点の3.19%と比べるとまだ低い水準です。一方でAIO非表示クエリのCTRは、同じ期間に2.8%から3.8%へ伸びています。
つまり、両者の差は縮まっていません。むしろ、片方が下がって片方が上がった形です。「回復」という言葉から受ける印象と、実際の位置づけにはずれがあります。
この章のまとめ
回復しても、AIOが出るクエリと出ないクエリの差は縮まっていません。並べて初めて分かる話です。
04クリック数が減っていないのにCTRが下がるのは、AI検索で何が起きているからですか?
高梨課長現場からは「クリック数は減っていない」と報告が来ています。それなのにCTRが落ちているのは、どう説明すればいいでしょうか。
鈴木さんそれは、CTRという指標の作りのほうに理由があります。分子と分母を分けて見ると、すっきりしますよ。
同じレポートは、別の切り口の数字にも触れています。ブランドが引用された場合に限定したCTRは、2025年9月の2.52%から10月に1.21%まで急落しました。これは、ここまで見てきた「AIO表示クエリ全体」のCTRとは違う切り口の数値です。
同社の分析によると、この時期のクリック数はほぼ横ばい(39.8万件から40万件)でした。一方で表示回数は倍増しています(1,580万件から3,310万件)。分母となる表示回数が急に増えたためCTRが圧縮された、というのが同社の説明です。
CTRは、クリック数を表示回数で割った比率にすぎません。表示回数が急に増えれば、実際のクリック数が減らなくてもCTRは下がります。
この構造を知らないまま「CTRが◯%減った」という数字だけを見ると、実態を取り違えるおそれがあります。逆に、CTRが上がったときも同じです。表示回数が減っただけかもしれません。
この章のまとめ
CTRは比率です。分母が増えれば、クリックが減らなくても下がります。上下だけを見て判断しないでください。
05このCTR回復は本物ですか?AI検索最適化の判断材料にしていいんですか?
大森部長つまり、流れが変わったということなのか。それとも、まだそう言える段階ではないのか。
鈴木さん調査した本人が「まだ言えない」と書いています。そこは正直にお伝えするのが、いちばん安全だと思います。
回復そのものについて、Seer Interactiveは「AIO登場前の水準には戻っておらず、今後も戻ると見込んでいない」と述べています。
同社は、Google側のSERP仕様変更を経た後の動きだとしたうえで、下落ペースの鈍化を「頭打ち」または「新しい水準」への移行と表現しています。ただし、Googleが表示方法をどう調整したのかという具体的な内容までは、レポート内で特定されていません。
判断材料になる回復期間は、2026年1月・2月の2か月分だけです。直近の数値だけでは季節変動の可能性を排除できない、と同社も留保しています。「回復した」と「流れが変わった」は別の話として扱ってください。
この章のまとめ
言えるのは「底からは上がった」まで。「流れが変わった」は、調査した本人が言っていません。
06AIOが出ないクエリのCTRが伸びたのは、AI検索で何が変わったからですか?
変動が起きる背景として、同社は「選別効果」という仮説も示しています。AIOが即答型で関与度の低いクエリを吸収するほど、AIOが表示されないクエリ群には、もともとクリック意欲の高い利用者が相対的に多く残る、という考え方です。
この仮説が正しければ、AIO非表示CTRの上昇(2.8%から3.8%)は、利用者の行動が変わったというより、対象クエリの中身が変わったことを映している可能性があります。
言いかえると、同じ物差しで測っているつもりでも、測る対象のほうが入れ替わっているかもしれない、ということです。指標を追いかけるときに、いちばん見落としやすいところです。
ただし同社は、この見立ても仮説の域を出ないと明記しています。ここでも、仮説は仮説として区別したまま共有してください。
この章のまとめ
数字が動いたとき、動いたのは利用者の行動なのか、測っている対象のほうなのか。分けて考えると読み違いが減ります。
07調査そのものの限界は、AI対策としてどこまで気にすればいいですか?
この記事は、Seer Interactiveが公表したデータを検証したものです。WEBMARKS独自の一次データではありません。 そして同社自身が、レポート内で複数の限界を明記しています。
- AIOが表示されるかどうかとCTRの関係は相関であり、因果関係を示すものではない
- AIO表示の有無は最新のSERPスナップショットからの静的な分類であり、時点ごとの実際の表示を追跡したものではない
- 2026年3月の予測に用いた回帰モデルは、回復局面では実態を過小評価する傾向があると自認している
- 「回復」の判断材料は2026年1月・2月の2か月分のみであり、トレンド転換と断定するには時期尚早である
また同社は、SEO関連のツールとコンサルティングを提供する立場にあります。「AI Overviewsの影響が大きい」という結果は、自社サービスの必要性を裏づけやすい方向に働きます。この点も、留保として押さえておくのが妥当です。
この章のまとめ
限界を隠して共有すると、あとで信頼を失います。数字と一緒に、その数字の弱点も渡してください。
08自社のAI Overviews CTRは、LLMOの指標としてどう見ればいいですか?
高梨課長では、うちのレポートには何を書けばいいでしょうか。他社の調査の数字を、そのまま載せていいものか迷っています。
鈴木さん他社の調査は「背景」に置いて、判断は自社のデータでするのがいちばん安全です。順番だけ決めておきましょう。
他社の調査は、いま何が起きているかを知るための背景としては役に立ちます。ただし、業種もサイトの状態も違う数字を、そのまま自社の目標に置きかえることはできません。
自社のCTRは、Search Consoleの生成AIパフォーマンスレポートなどを使って、自社のデータで確認します。同じ切り口で、同じ間隔で見続けることが、単月の変動に振り回されないための条件になります。
さらに、LLMO(大規模言語モデルに向けた最適化)の視点では、クリック率だけを追っていると見落とすものがあります。AIの答えの中で自社が引用されたかどうかは、クリックが起きなくても価値になり得るためです。指標をクリックから引用へ広げる考え方は、別記事で扱っています。
この章のまとめ
他社の調査は背景、判断は自社のデータ。そのうえで、クリック以外の指標も並べて見ます。
09明日からのAI検索対策として、CTRの数字をどう扱えばいいですか?
ここまでを、そのまま使える形に落とします。
1. 相対値だけでなく、絶対値も確認する
「85%上昇」のような相対表現は、基準値が低いほど大きく見えます。ポイント差(1.1pt)も併記して受け取ることをおすすめします。
2. 単月の数字で、施策の是非を判断しない
調査した本人も、2か月分のデータでは季節変動を排除できないと留保しています。自社の数字も同じです。何回か並べてから判断してください。
3. 自社のCTRは、自社のデータで確認する
Search Consoleの生成AIパフォーマンスレポートなどを用い、他社調査の数値をそのまま自社に当てはめないことが大切です。
この章のまとめ
やることは3つ。絶対値も書く、単月で決めない、自社のデータで確かめる。これだけです。
10よくある質問
AI OverviewsのCTRは、結局回復したと言っていいんですか?
数字が上がったのは事実です。ただし、調査したSeer Interactive自身が「AIO登場前の水準には戻っておらず、今後も戻ると見込んでいない」と述べています。社内では「底からは上がったが、元の水準ではない」と共有するのが、実態に近い伝え方です。
「85%上昇」という表現は、間違っているんですか?
計算式そのものに誤りはありません。1.3%から2.4%への変化を相対値にすると、約85%になります。ただし絶対値では1.1ポイントです。基準が小さいほど相対値は大きく見えるため、両方を併記して伝えることをおすすめします。
自社のAI Overviews表示時のCTRは、どこで確認できますか?
Search Consoleの生成AIパフォーマンスレポートなどで確認できます。大切なのは、同じ切り口・同じ間隔で見続けることです。他社調査の数値を自社の目標にそのまま置きかえるのは避けてください。
この調査の数字を、そのまま自社の目標に使ってもいいですか?
おすすめしません。対象は特定のブランド群であり、業種もサイトの状態も自社とは違います。レポート自身も、AIO表示の有無は静的な分類であり、相関であって因果ではないと明記しています。背景の把握に使い、目標は自社のデータから引いてください。
CTRが下がっていたら、AI検索対策は失敗しているということですか?
そうとは限りません。CTRはクリック数を表示回数で割った比率なので、表示回数が増えただけでも下がります。まず分子と分母のどちらが動いたかを確かめ、そのうえでAIの答えの中で引用されているかどうかもあわせて見てください。
11まとめ|今日やる3つのこと
AI Overviews表示時のCTRが1.3%から2.4%へ動いたのは事実です。ただし絶対値では1.1ポイントで、「85%上昇」という表現ほど劇的な変化ではありません。2026年2月の2.4%は2025年1月の3.19%と比べればまだ低く、AIOが表示されないクエリとの差も縮まっていません。
判断材料になる期間も、2026年1月・2月の2か月分だけです。調査した本人が、トレンド転換と断定するには時期尚早だと書いています。だからこそ、数字の扱い方を先に決めておきます。
今日この順でやります
相対値の横に絶対値を書く
「85%上昇」なら「1.3%→2.4%、1.1ポイント」を並べます
判断の単位を決める
単月で決めず、何回か並べてから動きます
自社の数字を取りにいく
Search Consoleの生成AIパフォーマンスレポートなどで、自社のCTRを見ます
AI検索では、こう聞かれています
AI Overviewsで下がったCTRは、もう回復したんですか?
「AI OverviewsのCTR回復は、AI検索対策として喜んでいい話なんですか?」の章で、出典と数値の位置を示しています
「85%上昇」というのは、どれくらいすごい数字なんですか?
相対値と絶対値を並べた章で、計算式ごと説明しています
自社のAI Overviews表示時のCTRは、どこで確認できますか?
「まとめ|今日やる3つのこと」に手順があります
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