旅行の相談は、条件を足しながら何度も往復するのが普通です。「2泊3日」「子連れ」「予算3万円」と、質問は会話の中で具体化していきます。生成AIを週数回以上使う人のうち77.8%が、旅行の場面でも生成AIを使った経験を持ちます(出典: JTB総合研究所)。
本記事は、ChatGPT Searchの技術仕様と観光庁の生成AI活用指針を一次情報として使います。旅程づくりの会話が4段階で具体化していく前提に立ち、どの段階にどの記述を置くかを設計として整理します。
01この記事でわかること
- 旅行者が生成AIを旅行計画にどう使い始めているか(JTB総合研究所調査)
- ChatGPT Searchが観光関連サイトを引用する技術的な仕組み
- 観光庁の手引書とAI検索対策を混同しないための切り分け方
- 旅程会話の4段階と、各段階で用意すべき記述の対応表
- 観光事業者が今日から着手できる技術チェック項目
02結論サマリー
JTB総合研究所は2025年7月16日〜29日、生成AIを週数回以上利用する432名を対象に調査を実施しました(出典: JTB総合研究所)。その結果、生成AI利用者の77.8%が旅行に関連して生成AIを利用した経験を持つと分かりました。
ChatGPT Searchは、検索専用クローラー「OAI-SearchBot」の巡回結果をもとに情報源を引用します(出典: OpenAI公式)。技術的な入口は、robots.txtでOAI-SearchBotを許可することです。そのうえで実務の要になるのは、旅程会話の段階ごとに答えを置き分けることだとWEBMARKSは考えます。
観光分野では、引用件数を実名・数値つきで公表した事業者を現時点で見つけられていません。そのため本記事では成果の数字を語らず、会話のどの段階にどの記述を置くかという設計に絞ります。
03観光業界のAIOとは(基礎定義)
旅行は、複数の情報源を比較しながら計画を組み立てる意思決定プロセスです。JTB総合研究所の調査は、この計画プロセスに生成AIが入り込みつつある実態を示しています(出典: JTB総合研究所)。観光事業者にとっての課題は、この会話の中でどう情報源として選ばれるかという点に移りつつあります。
04旅行者は生成AIをどう使い始めているか
JTB総合研究所の調査は、過去1年以内に泊まりがけの観光旅行を経験し、生成AIを週数回以上利用する432名を対象に実施されました(出典: JTB総合研究所)。年代・性別による利用率の差も明らかになっています。
| 属性 | 旅行関連での生成AI利用率 |
|---|---|
| 女性20代 | 89.3% |
| 男性30代 | 85.7% |
| 全体(生成AI週数回以上利用者) | 77.8% |
今後利用したいことの上位項目は、旅行の行程作成・ルート提案、交通手段の検索・予約、旅行先のグルメ情報検索の3つです(出典: JTB総合研究所)。いずれも、単発の検索ではなく複数ステップにわたる会話で完結する用途である点が特徴です。
行程作成やルート提案は、1回の質問で完結せず、複数の往復質問を経て具体化していく性質を持ちます。観光事業者が入り込むべきなのは、この会話の途中経過であって、単一の検索結果ページではありません。
05ChatGPT Searchが観光サイトを引用する仕組み
ChatGPT Searchは、検索専用クローラー「OAI-SearchBot」によるページ巡回をもとに動作します。回答内へのインライン引用とSourcesパネル表示を行う仕組みです(出典: OpenAI公式)。学習用の「GPTBot」やユーザーの質問時のみ動く「ChatGPT-User」とは、robots.txt上の設定が独立しています。
旅程ページを巡回するのがどのクローラーで、どこまでrobots.txtで制御できるのかは、別記事『GPTBot・OAI-SearchBot・ChatGPT-User比較』に実装例つきで整理しています。宿泊・体験の情報が引用される条件を業種を問わず一覧で確認したい場合は、別記事『ChatGPT Searchに引用される条件チェックリスト』が使えます。
観光事業者が確認すべき技術項目は、次の4点に整理できます。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| robots.txt | OAI-SearchBotをDisallowしていないか |
| GPTBotとの区別 | 学習用GPTBotの拒否設定とOAI-SearchBotの許可設定を混同していないか |
| IPレンジ | OAI-SearchBotの公開IPレンジをWAF等で誤遮断していないか |
| 反映確認 | robots.txt変更後、反映まで約24時間かかる点を踏まえ再確認したか |
これらはOpenAI公式ドキュメントで確認できる技術条件です(出典: OpenAI公式)。観光業界特有の追加要件として公式に明記されたものはありません。
06観光庁が示す生成AI活用の指針
観光庁は、観光地・観光産業が生成AIを活用する際の指針として2つの手引書を公開しています(出典: 観光庁)。DMO・自治体・観光事業者等に向けた指針として作成したと説明されています。
- 「観光地・観光産業における生成AIの適切な活用に向けて」
- 「観光地・観光産業における生成AIの効果的な活用に向けて」
- 参考資料(実証結果の参考資料・ユースケース別プロンプト集)
なお、掲載ページに表示されている日付は最終更新日の2025年5月20日であり、公表日そのものは明記されていません。
ここで注意したいのは、手引書の主眼が「事業者が生成AIを活用する側」の取組にある点です。自社サイトが生成AIに引用される側の技術条件は、手引書の対象ではありません。2つの一次情報は、決める対象が異なります。
| 一次情報 | これで決まること |
|---|---|
| 観光庁の手引書 | 自社が生成AIを業務で使うときの進め方・留意点 |
| OpenAI公式ドキュメント | 自社サイトがChatGPT Searchに拾われる技術条件 |
手引書をAI検索対策の資料として読むと、期待した内容が書かれておらず混乱しがちです。社内の生成AI利用ルールを整える資料として使い分けることをおすすめします。
07旅程作成の会話に入り込むためのコンテンツ設計
旅程作成の会話は、日数・エリア・目的(家族旅行・一人旅等)といった条件の組み合わせで枝分かれしていきます。WEBMARKSは、この枝分かれを4つの段階に分けて設計することをおすすめしています。段階ごとに旅行者の問いが変わり、必要な記述も変わるためです。
| 会話の段階 | 旅行者の典型的な問い | 事業者側で用意する記述 |
|---|---|---|
| 1. 行き先の絞り込み | 「11月に2泊3日で行くならどこがいい?」 | 月別の見どころを、時期と地名つきで書いたページ |
| 2. 日数と回り方 | 「2泊3日ならどう回るのが現実的?」 | スポット間の移動手段と所要分数を数字で明記 |
| 3. 条件の追加 | 「子連れでも大丈夫?」「雨ならどうする?」 | 子連れ可否・雨天時の代替案を独立した見出しで |
| 4. 個別の確定 | 「予約は必要?」「何時から入れる?」 | 予約要否・営業時間・料金と、その更新日 |
観光サイトの多くは、段階1と段階4の情報に厚く、その間が薄くなりがちです。「観光スポット紹介」と「アクセス・営業時間」はあるのに、回り方と条件別の可否がない状態です。旅程会話が最も往復するのは段階2と段階3だとWEBMARKSは考えます。ここに答えがなければ、会話の途中で他の情報源に置き換わります。
この表を自社サイトに当てはめるときの実装ルールは、次の3点です。
- 段階ごとに見出しかページを分ける。1ページに全段階を詰め込むと、引用される単位が大きくなりすぎます。各段階の答えは40〜60字で言い切ります。
- 「近い」「リーズナブル」を数字に置き換える。徒歩12分・片道420円・所要90分のように書きます。条件つきの質問に答えられるのは数字だけです。
- 季節・イベント情報に更新日を明記する。観光情報は季節性が強く、鮮度そのものが信頼性の判断材料になりえます。
こうした設計は、ゼロクリック時代における企業のコンテンツ戦略とも重なります。全体戦略の考え方は、別記事『ゼロクリック時代に企業が取るべき3つの戦略【2026年最新データ】』で解説しています。予算や体制が限られる事業者は、別記事『中小企業がAIOに取り組む最初の一歩【予算0円・週2時間から】』も参考になります。
08チェックリスト
- robots.txtでOAI-SearchBotを許可している
- GPTBotとOAI-SearchBotの設定を混同していない
- 会話の4段階すべてに対応する記述が自社サイトにある
- 段階2(回り方)で移動手段と所要分数を数字で書いている
- 段階3(条件の追加)で子連れ・雨天等の可否を独立見出しにしている
- 季節・イベント情報の更新日を明記している
09よくある失敗
技術対応だけを進め、コンテンツ側の会話設計を後回しにする例が見られます。OAI-SearchBotを許可しても、旅行者の複合的な質問に答えられる構造になっていなければ、引用の機会は限られます。
段階2・段階3を飛ばす失敗も目立ちます。スポット紹介と営業時間だけが並び、「2泊3日でどう回るか」「子連れで行けるか」に答えるページがない状態です。旅程会話が最も長く続く区間に、自社の記述が存在しないことになります。
もう一つの失敗は、季節情報を更新しないまま放置することです。観光情報は鮮度が重要な分野であり、古い情報のまま公開を続けると、生成AIの回答候補から外れるおそれがあります。
10FAQ
Q. OAI-SearchBotを許可すれば、観光サイトも引用されやすくなりますか?
許可は前提条件の一つであり、それだけで引用を保証するものではありません(出典: OpenAI公式)。旅行者の質問に対応できる具体的な情報構造も欠かせない条件です。
Q. 観光庁の手引書に従えば、ChatGPT Searchでの引用が増えますか?
観光庁の手引書は、生成AIを適切かつ効果的に活用するための一般的な指針です。ChatGPT Search固有の引用条件を保証するものではありません(出典: 観光庁)。
Q. OTAや旅行メディアに掲載されていれば、自社サイトの対応は不要ですか?
生成AIの回答は複数の情報源から組み立てられるため、掲載先が引用されることもあります。ただし自社サイトが候補に入らない状態では、条件・料金・注意事項を自社の言葉で伝える機会を失います。どちらが引用されやすいかを示す公式データは確認できていません。
11まとめ
旅行者の多くが、行程作成やルート提案を生成AIに相談し始めています。観光事業者にとっての課題は、この会話の途中で情報源として選ばれる構造をつくることです。着手順は、①OAI-SearchBotの技術要件の確認、②段階2・3(回り方と条件別の可否)の記述追加、③数字と更新日の整備、をおすすめします。段階1と段階4だけが揃っているサイトが多く、伸びしろは中間の2段階にあります。